東急リバブル株式会社様 事業開発部 事例紹介

東急リバブル株式会社
事業開発部 事業推進課 課長 井上 貴雄 様
主任 斉藤 康 様
デジタル推進課 藤間 日向代 様

東急リバブル株式会社の事業開発部は、首都圏・地方支店を合わせた売買仲介ネットワーク170店舗(2023年9月末現在)からの不動産の買取と再販の相談に乗り、買取額の目安を提示したり、買取後の事務手続きを進めたりする部門です。これまでは買取額の算出を複雑なExcelで行っていましたが、計算式のブラックボックス化の解消などを目的に「買取額をスピード算出できるアプリ」をノーコードツールkintoneとアールスリーの開発で構築されました。同部署の皆様に開発の経緯と効果を詳しく伺いました。

Excelでの買取金額算出をアプリ化し査定額のスピード回答を実現したい

Q:kintone導入前の課題について教えてください。

井上様

商談で不動産を買い取る流れになると、概算の買取額の提示→好反応→正式な買取額の提示の流れで商談が進みます。金額提示までが早いほど当社で買い取れる機会が増えるので、買取額の提示スピードを上げようという声が挙がりました。これまでは買取額の概算を一度事務所に戻ってからパソコンのExcelで出していたので、これをアプリのようなもので算出できるようにすればスマホなどでお客様先で概算を回答できるようになり、金額提示のスピードが格段に上がると思いました。

斉藤様

買取額の算出は複雑な式の入ったExcelで行っていたので、営業が使う時に式を壊してしまうこともありました。セットされている式が複雑すぎるため、自分でも管理しきれないと感じることがあるほどで、Excelのブラックボックス化を解消する必要もありました。

また、不動産の買取は「概算買取額の提示→正式な買取額の提示→買取決定→買取の事務手続き」の流れで進みます。概算額の算出時に利用した不動産データは、次の工程である「適用審査書」(事業収支を組んだりする重要書類)にも使われます。この適用審査書に書かれたデータは経理のOBIC・物件管理のセールスフォース・稟議のeValueなどのシステムにも流用するのですが、Excelだと各システムに自動でデータ連携できないので一連の事務手続きを含めたデータ連携が煩雑でした。これらの問題が重なっていたので、概算金額の算出アプリをつくるなら、適用審査書やその先の外部システムと連携させることを想定して作り、皆の仕事を楽にしたいと思いました。

従来使用していたExcel。とても複雑な計算式やマクロが組み込まれている

Q:色々なシステムがある中でkintoneに決めた理由とアールスリーに開発を依頼いただいた理由を教えてください。

デジタル推進課 藤間様

2022年の4月に事業推進課の方々から今回の課題について相談を受けました。当社井上と斉藤が申し上げたような構想を見据えつつ、最初のステップとして買取額の概算を出すアプリを開発する方法をIT企画課やサイボウズさんに相談しました。するとkintoneとアールスリーの開発で実現できることが分かったので、kintoneの導入とアールスリーへの開発依頼を決めました。

恐ろしいほど複雑なExcelを読み解き、スピードアンサーアプリが完成

Q:開発したアプリについて教えてください。

井上様

スピードアンサーアプリは、買取のステップに進むまでのスピードを上げることが目的の、マンションの買取額の概算を算出するアプリです。想定再販額や平米数を入力すると概算の買取額が瞬時に算出されます。タブレットでも利用できるので、お客様と商談中にその場で概算の買取額をお答えできます。首都圏・地方支店合わせて170拠点で活用されており、稼働から6ヶ月後には累計2,300件の査定が行われました。

kintoneアプリ「スピードアンサー」
想定再販額・平米数・築年数を入力するだけで買取額の目安を計算できる
算出金額が概算であることを営業に伝えるためのポップアップ表示

アールスリーの開発者けいんさんが、複雑なExcelを紐解いてくれた

Q:今回の開発の肝は「複雑なExcelの解明」だったそうですが、開発の様子について教えてください。

斉藤様

マンションの買取額を算出するためには、税金・リフォーム工事費用等の費用や、税務等の理解が必要です。例えば税金なら「このレンジはこの税率」ということを式で表しますし、建物の固定資産税評価額は築年数や構造をもとに計算されます。こうした事情から今回扱うExcelは非常に複雑であり、私は触るに触れませんでした。これを紐解いてくれたのがアールスリーの開発者けいんさんでした。

アールスリー開発者 けいん

開発ではExcelの数式とにらめっこが続きました。埋め込まれたどの数式も、いくつものシートのどこかを経由してから終着点にたどり着きます。開発の最初は数式をひたすら追いかけて、どのような式から買取額が算出されているのかを紐解きました。途中で進め方が複数ある場合などで判断が必要になると、井上さんに質問をして判断していただきながら進めました。利益の計算の仕方が本当に複雑で、買取額が出るまでを解明するのはとても大変で時間がかかりました。また、開発には不動産の知識も必要でした。数式の意味を理解するためにGoogle検索をする中で、関連する不動産の知識を得ていきました。振り返ると不動産を理解するための自分にとっての最初の先生はExcelの数式だったように思います。こうした苦労の甲斐があり、その後に担当した同じような計算方法の土地と戸建てバージョンの開発はあっという間に完成しました。

アールスリー開発者 けいん

買取価格の即答が可能になり、複雑な計算式のメンテナンスも容易になった

Q:アプリの導入で得られた効果について教えてください。

井上様

Excelのスピードアンサーを2020年に導入し、お客様先で概算の買取額を伝えることができるようになると、現場では色々やりやすくなりました。それがkintoneアプリを導入することでさらに使いやすくなりました。これが現状得られた効果で1番ですね。

アールスリー開発者 井上

ツールをちゃんとメンテナンスできるようになったこともメリットですね。数式がブラックボックス化していたので、触るに触れないケースがあったと思いますが、今回の開発を通じて計算式が明確になったので変更時に手を加えやすい状態になっています。またアプリで情報を共有できるようになりました。自分で動ける営業さんは、もともと役立つ数字や情報を自分で拾って動くものなので、アプリがあることで優秀な方がさらにデータを活用されると思います。そしてアプリにたまったデータの活用法を全員に教えれば、今まで情報活用が上手くできなかった方も活用できるようになるのではないでしょうか。

プロジェクトリーダー アールスリー井上

斉藤様

そうですね。Excelに何かの計算式を追加するとどこかが壊れることがありましたが、それが無くなりました。またメンテナンスしやすくなったのは間違いありません。さらにアールスリーさんは色々なアイデアを出して頂けるので「なるほど!」となることが多く、その点も本当に良かったです。

さらなる業務効率化への第一歩を踏み出せた

Q:kintone活用における今後の展望をお聞かせください。

斉藤様

今回のkintoneアプリ構築の真の目的は、先述した「適用審査書のシステム化」です。適用審査書は会社としての正式決定を記す要となる書類で、様々な目的で利用されます。今回のスピードアンサーシステムの開発はそんな適用審査書システム化の序章でした。次の開発フェーズで適用審査書アプリができたら、スピードアンサーシステムやその他関連書類の作成システムと連携させ、同じような書類を複数作る必要性を大幅になくそうと考えています。そうすれば全国の営業は事務手続きに手間をとられることが減り、より営業に専念できるようになるでしょう。

Q:最後にアールスリーの開発者にメッセージをお願いします。

井上様

開発にあたり、本当にありがとうございました。不動産業界はITに心を閉ざしがちのため、現状kintoneアプリの浸透が課題です。ITに抵抗がある人たちにもkintoneアプリを活用してもらえるように、彼らにレクチャーする方法などの相談にもぜひ乗ってください。

斉藤様

複雑怪奇な計算式を読み解いていただいてありがとうございます。けいんさんのおかげで数式の無駄もそぎ落とせました。現在も次のフェーズに向けて開発中で、拡張性のあるkintoneを紹介していただけて本当によかったです。今後とも保守や改良の相談をしますのでよろしくお願いします。

デジタル推進課 藤間様

デジタル推進課ではちょうど色々な課からkintoneについて相談を受けているところです。引き続きよろしくお願いします。

貴重なお話しをありがとうございました。

取材2023年9月

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