東急リバブル株式会社様 アセット事業本部 事例紹介

Excelによる属人的な案件管理をkintoneアプリで脱し、「kintoneで情報を有効活用する」意識の社内拡大のきっかけに

東急リバブル株式会社 アセット事業本部
事業推進部 事業企画グループ 係長 中泉 圭介 様
主任 稲垣 洋祐 様
営業統括部 プロジェクト営業部 開発営業グループ 係長代理 林 翔一 様
開発統括部 ウェルスクエア事業部 事業開発グループ 係長代理
武田 創太 様 主任 庄司 真佑子 様

東急リバブル株式会社のアセット事業本部は、事業用地の仕入れとその開発を行う部門です。これまでは事業用地の情報が社内に点在していたため、情報を十分に活用できていないことが課題でした。この課題を解決するべく、事業用地情報の管理を行うためのアプリを、ノーコードツールkintoneとアールスリーの開発で構築されました。さらにこの開発プロジェクトを始めたことで、kintoneを使用した業務改善の意識が社内で拡大していったということで、同部門の皆様に開発の経緯と効果を詳しく伺いました。

アセット事業本部でのスモールスタートがkintone社内拡大のきっかけだった

Q:今回のアプリ開発がkintoneが東急リバブル様内で広がっていくに至った第一弾のプロジェクトとなったそうですが、kintone導入の経緯と、どのように業務改善の意識が社内に広がっていったのかを教えてください。 

中泉様

私たちアセット事業本部は、会社に集まってくる事業用地の情報を有効活用できるように加工開発するための本部です。加工開発をするために事業用地を買うのですが、集まってきた物件情報を、約20人の担当者がそれぞれ属人的にExcelで管理していました。しかし本部が情報を確認しづらいという問題点があり、本部が一元管理できるようにしたいと思いました。また、土地の取得や開発が上手くいった時やそうでない時の分析ができておらず、その先の戦略に活かしきれていないことに課題を感じていました。そのためこれらを解決するためにkintone、そしてアールスリーさんにご協力いただき、案件管理システムを導入することになりました。

最初は、案件管理の属人化に課題を感じていた事業開発の20人ぐらいでkintoneを使い始めました。その後蓋を開けてみると、社内でのkintone導入に対しての評判を聞いた社員などから、「kintoneを導入するなら私もやりたい」、「うちの部署でもやりたい」と続々と手が挙がっていきました。そのため社内でkintoneとアールスリーさんを紹介したところ、アセット事業本部内の他の部署にも利用が広がっていき、今では総勢50人が使うようになりました。また現在でもこの動きは全社に広がりをみせている状況です。

アールスリー開発者 井上

ありがたいことにアセット事業本部様の実績を起点に、東急リバブル様内で業務改善の課題が出た際には、IT企画課やDX推進課の皆様を通じて弊社にご相談をいただく機会が大変増えました。今では4つ以上の事業部様からアプリの開発をお任せいただいている状況です。

属人的な用地取得の案件管理をシステム化し、情報を有効活用したい

Q:kintone導入前の課題はどのようなものがありましたか?

中泉様

先述したように、集まってきた物件情報を約20人の担当者がそれぞれ属人的にExcelで管理していたため、本部が各物件情報を確認しづらく、本部が一元管理できるようにしたいと考えていました。さらに営業分析ができていなかったため、物件開発が上手くいった理由もそうでない理由も分からずじまいだったため、将来的な戦略に活かせていないことに課題を感じていました。そのためこれらを解決するために案件管理システムを導入することになりました。

買取見込みの用地情報をExcelで管理していた。物件住所・情報元・最寄り駅・買取見積額などが事細かに手入力されている

Q:色々なシステムがある中でkintoneに決めた理由とアールスリーに開発をご依頼いただいた決め手を教えてください。

中泉様

kintoneと大手SIerさんのツールの2つを検討し、DX推進課 課長の推薦があることや価格面が決め手となりkintoneの導入を決めました。アールスリーには、kintoneのサプライヤーであるサイボウズ社から推奨パートナーとして紹介されたことで出会いました。依頼の決め手は主に3つ:今後必要となる可能性がある外部システムのOBIC7やMicrosoft Dynamics 365との連携の実績があること・独自の開発システムgusuku Customineによって柔軟かつスピーディーな開発が行えること・東急グループ複数社への導入実績があることでした。

中央画面内が中泉様。左は庄司様、右は稲垣様

物件の案件情報を部署全体で共有できるアプリが完成

Q:開発したアプリについて教えてください。

稲垣様

物件アプリと活動アプリの2つが開発した主なアプリです。同じ内容のアプリを、用地仕入れを行う部署のプロジェクト営業部と事業開発部が利用しています。

Q:まずは物件アプリについて教えてください。

物件アプリは事業用地の案件を管理するアプリです。土地を買うセクションの社員は一人あたり1日に10〜20件ほど事業用地を仲介会社から紹介されるので、その物件情報を一次取得情報として物件アプリに登録します。アプリにたまった情報は以下のような用途で活用されます。

  • 営業先での素早い返答や判断の材料として利用
  • 他の人と案件が重複していないか確認
  • 重複案件に対する検討状況の確認
  • 情報元による購入条件に関する差異の確認
  • 重複している場合の担当者決め(情報取得順で決める)

案件情報の共有ができるようになったことで、気づかずに同じ物件を複数人が検討していたり、用地を買うとなった時に情報の取得順がわからずに揉めたりすることがなくなった点が、このシステムの良いところです。

物件アプリのレコード一覧画面。数万件の物件情報が登録されている

また、アプリ内の物件情報は「カンタンマップ」機能で地図表示できます。視覚的にどこに物件があるのかわかるだけでなく、物件データ・紹介年月日・検討状況・購入の可否理由・売買情報をポップアップで閲覧できます。これにより商談の現場で検討すべき案件かそうでないのかを見分けたり、取り扱いの可否を素早くお返事したりできます。一度買取金額を決めたことがある物件なら、すぐに確認できるので金額の即答も可能になりました。商談中に以前よりも実りある会話ができる点が魅力的で、私が仕入れを担当していた際はよく地図表示機能を活用させてもらっていました。

稲垣様
他社様のプラグインであり、今回使用した「カンタンマップ」。ピンクの点が物件情報で、クリックすると物件概要や検討状況がポップアップ表示される

Q:次に活動アプリについて教えてください。

稲垣様

活動アプリは、物件の検討状況進捗管理、営業活動の登録、営業戦略を立てるための分析などを行うアプリです。営業は、いつ・どこで・誰と・どんな商談をしたのかをアプリに記録します。当社の営業や取引先はマスタアプリに登録しているので、営業の行動内容を分析したり、取引先からの有効情報の紹介実績を把握したりできます。また半期や年度でこうした分析を行い、営業行動の見直しや営業戦略の立案を行なっています。スタッフ部門では、営業担当の皆さんが登録してくれた情報を分析して、毎月の部門全体の物件購入の歩留まりや物件購入数などを検証します。

活動アプリのレコード一覧画面。活動アプリにおいても検索が容易になっている

アールスリーは親身に話を聞いて、一緒になってアプリを作り上げてくれた

Q:アールスリーとの開発の感想を教えてください。

中泉様

アールスリーさんの素晴らしいところは、とても話しやすくて肩肘を張らずに会話ができるところです。開発ではまず私たちの実情をお伝えするわけですが、アールスリーさんは、「そうなのですね」と丁寧に聞いてくれ、この悩みをkintoneでどのように解決できるかをアドバイスしてくれました。そして約5ヶ月の開発期間で、一緒になってアプリを作り上げてくれました。また、何事もはっきりと伝えてくれる点も助かりました。我々はkintone開発のことがよくわからないため、「こうしたい・ああしたい」と無邪気に希望を伝えます。するとその希望は実現可能か、また開発費用がどれくらいかかるのかなどを明確に伝えてくれたので、こちらも判断がしやすかったです。

庄司様

アールスリーさんは頻繁にコミュニケーションを取ってくださり、私たちの要望をしっかりと汲んだ良いシステムを作ってくださっていることが本当にありがたいと思います。

武田様

アセット事業本部は用地を取得・開発するので、社外からの情報だけでなく社内からの物件情報も貴重です。そのため物件をアプリに登録する際に、他社さんからの情報だけでなく、社内のどの部署の誰からの情報であるかも紐づけできるようにして、有益な情報を提供してくれる部署や担当者を把握したいと考えました。そのための開発が大変だったと記憶しています。

開発を担当された武田様

アールスリー開発者 井上

そうですね、確かに社内・社外両方からの情報を登録するケースは珍しいです。今回の開発では社外だけでなく、社内からの案件も登録するために社員マスタアプリを作成しました。そして情報元が社内なのか、社外なのかを切り分ける機能を入力画面に用意しました。

社内の担当者、社外の担当者を状況に応じて簡単に入力できるように、検索機能を開発した

不動産業ならではのご要望の実現が開発のハイライトだった

Q:アールスリー開発者として今回の開発で印象的だった点はありますか?

アールスリー開発者 井上

「カンタンマップ」を用いた地図表示機能の開発が印象的でした。「アプリ開始時に自動でマップを表示させたい」というご要望をいただいたのですが、利用するマップ表示プラグインでは実現できませんでした。独自にマップを開発することもできますが、どうしても開発費が高くなりすぎてしまいます。結論としては、最も使い勝手が良いであろう場所に「マップを表示する」ボタンを設置することで了承をいただきました。ご要望に近づけるための調整が私にとっての今回のプロジェクトのハイライトでした。

アールスリー開発者 井上

アールスリー開発者 渡邊

住所の表示速度を改善するシーンが印象的でした。アプリを活用される中で、住所の表示速度が遅いとご指摘をいただきました。物件アプリと住所マスタアプリに登録されている住所は全部で60万件ほどあります。それを住所選択の画面から引っ張ろうとすると、件数が多すぎてパソコンが負荷に耐えられず、表示速度が遅くなることが原因でした。

アールスリー開発者 渡邊

アールスリー開発者 日茂

この問題を解決するために、1つだった住所マスタアプリを都道府県・市区町村・町名などの単位で作り、毎回60万件のデータを取り扱わなくてもいいような仕組みにして表示速度を改善しました。

アールスリー開発者 日茂

活動が見える化され、部署として戦略的に動けるようになる

Q:アプリの導入で得られた効果について教えてください。

林様

アプリが本領を発揮するのはこれからです。システムは情報が蓄積されることで有効的に利用できるようになります。今は蓄積の段階であり、将来に向けてこれまでやっていなかった入力を全員でやろうとしています。今後は活動が見える化されるので、部署としてより戦略的に動けるようになるでしょう。そんな将来を理解して、そこに向けて皆が動こうとしていることが現段階の効果です。案件の重複を簡単に確認できることで、これまで起こっていた色々な無駄が減っている点もありがたいですね。

林様

中泉様

人事異動で担当者が変わったり、引き継ぎが発生した時に効果を感じると思っています。例えば5〜6年もかけて仕事をいただく案件では、成立までに担当者が何人も交代します。その長い間には、引き継ぎが曖昧になり仕事を取りこぼしてしまうことがあります。まだ導入1年ですが、今後開発していただいたアプリによってこうしたケースがなくなっていった時に、アプリを作って良かったと改めて思うでしょうね。

アールスリー開発者 井上

今後も業務内容に合致するアプリの開発だけでなく、業務改善に関する様々なことを支援させてください。

今回はありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

貴重なお話しをありがとうございました。

取材2023年9月

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