リモートワーク/ハイブリッド勤務時代のkintoneプロジェクト管理~PMが現場をつなぐ「見える化」と「自律性」のデザイン~

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どうもこんにちは。システム開発グループの井上(たーぼー)です。

9月から毎週出張で、各地を転々としてますが、冬の匂いがしてきてテンションが上がってきています。

はじめに:距離が生んだ“見えない摩擦”

コロナ禍を経て、働き方は大きく変わりました。
在宅勤務やオンライン会議が当たり前となり、出社とリモートを組み合わせた「ハイブリッド勤務」も一般化しています。

一方で、システム開発やkintone導入プロジェクトのように、人との対話や意思決定が多い仕事では、距離が思わぬ障害になります。
誰が何を進めているのか分からない。会話の温度感が伝わらない。ちょっとした相談が減り、ズレが大きくなる -そんな“見えない摩擦”を多くのPMが感じているのではないでしょうか。

私自身、kintone開発案件を複数リモートで進めてきました。
そのなかで痛感したのは、「距離を埋めるのはコミュニケーション量ではなく、情報設計の質」だということです。
この記事では、私がPMとして実際に構築しているkintoneアプリ構成を交えながら、リモート時代のプロジェクト管理について紹介します。


1. プロジェクト情報を“集約”するためのkintone構成

私のチームでは、プロジェクト管理のために次のようなアプリ構成を使っています。

  • プロジェクト管理アプリ:案件ごとの概要、体制、スケジュール、進行ステータスを記録
  • タスク管理アプリ:個別タスクの担当者、期限、進捗を登録し、一覧で見える化
  • 課題/リスク管理アプリ:リスクや問題点を登録し、対応策や期限を明記
  • 議事録アプリ:会議ごとの議題、決定事項、アクションアイテムを整理
  • ナレッジ共有アプリ:開発ノウハウ、運用Tips、定例で出た学びを蓄積

それぞれを関連レコードやルックアップで結び、ひとつのプロジェクトを複数アプリで立体的に管理できるようにしています。
これにより、プロジェクト詳細からタスクやリスクにスムーズにアクセスでき、現場メンバーが迷わず情報にたどり着けるようになりました。

お客様の担当者を巻き込んだスペース内に作成することで、同じPJを推進してっているということを感じてもらう意味もあります。


2. kintoneを「情報の中枢」に据える

リモート環境では、口頭での共有が減る分、記録の重要性が増します。
SlackやTeamsなどのチャットツールだけで完結してしまうと、後から経緯を追えなくなりがちです。

そこで私は、kintoneを単なる議事録置き場ではなく、「全ての情報が集約される中枢」として設計しています。

定例MTGでの決定事項は議事録アプリに記録し、そこから発生したアクションは自動的にタスク管理アプリへ転記する。
さらに、Slackで上がった課題をZapierで自動登録し、チャットからもkintoneに記録が流れるようにしています。

結果として、「何かあればまずkintoneを見れば分かる」というチーム文化が定着しました。
これは、リモート時代の安心感を生む非常に大きな要素です。


3. 「誰が・何を・いつまでに」を全員が把握できる

リモートでは、「今どこまで進んでる?」と気軽に聞けません。
その代わりに、全員が同じ情報を見ながら動けるよう、タスク管理アプリを中心に設計しています。

タスクには必ず担当者・期限・ステータスを紐づけ、ステータスは「未着手」「進行中」「レビュー待ち」「完了」の4段階に統一。
期限が近づくと自動で色が変わるようにし、直感的に状況が分かるようにしています。

定例ミーティングでは、kintoneの一覧ビューを画面共有して進捗を確認します。
資料を作る手間を省けるだけでなく、リアルタイムに更新できるため、会議が“報告会”ではなく“議論の場”になります。
結果として、「誰がどこで止まっているのか」が可視化され、自然と助け合いが生まれるようになりました。


4. チームを動かす「コミュニケーション設計」

リモートでの報連相は、情報の量よりも「粒度」が大切です。
私は、情報の種類によって共有手段を明確に分けています。

緊急連絡はSlackで即時共有。
課題や相談ごとはkintoneのコメントで議論し、経緯を残します。
定例会での判断事項は議事録アプリに明文化。
雑談やアイデア出しはオンライン雑談会やチームチャンネルで気軽に発言できるようにしています。

このようにルール化することで、「どの情報をどこに残すか」が明確になります。
特に雑談や軽い相談の場を意図的に作ることは、信頼関係を保つうえで欠かせません。
形式ばかりのチームは冷たくなりがちです。だからこそ、PMが“温度感を取り戻す仕組み”を設計することが重要です。


5. 自律的に動けるチームを育てる

リモートワークでは、PMが全てを直接管理することはできません。
そのため、メンバーが自律的に動ける環境を設計することが求められます。

まず、ゴールを明確に伝えること。
成果物の定義、判断基準、優先順位を明示し、「なぜやるのか」を共有します。

次に、任せる範囲を明確にすること。
kintone上に責任範囲フィールドを設け、それぞれの判断領域を見える化します。

最後に、レビューより“伴走”を意識すること。
進捗確認は詰問ではなく、「困っていない?」「情報は足りてる?」といったスタンスで行います。

この3つを意識することで、PMがすべてを管理しなくても、チームが自発的に動くようになります。
実際、kintone上で自分から課題を登録・解決策を共有してくれるメンバーが増えました。


6. チーム文化をkintoneに残す

ハイブリッド勤務では、チームの「文化」が希薄になりがちです。
だからこそ、kintoneの中に文化を刻む工夫をしています。

たとえば、メンバー同士で称賛を送り合うアプリを作成。
また、「振り返りアプリ」で毎月の学びや失敗談を記録し、ナレッジとして蓄積しています。
コメント欄にスタンプや軽いリアクションを残すだけでも、チームの雰囲気は大きく変わります。

kintoneは業務を効率化するだけでなく、チームの文化を記録するプラットフォームにもなります。
過去のやり取りを見返すと、そのときの熱量や空気感まで思い出せる。
これは、離れていても一体感を保つ力になります。


まとめ:距離があっても、チームは動かせる

リモートワークは「距離がある=冷たい」ではありません。
ツールを正しく設計し、コミュニケーションを意識的にデザインすれば、
むしろ対面よりも効率的で信頼のあるチーム運営が可能です。

kintoneは、そのための柔軟で拡張性の高いプラットフォームです。
PMの仕事は、ツールを導入することではなく、
「チームがつながり、動き続ける仕組み」を設計すること。

ハイブリッド勤務の時代こそ、PMの腕の見せどころです。
距離があっても、チームの熱量は必ず伝えられます。

ただ、これだけでもやはりうまく行かないことも多くでてきますので、リアルで会って話すということは最も重要視しています

キミノマホロ for kintone

アールスリーでは業務改善・システム開発を行うサービスを「キミノマホロ for kintone」として提供しています。

キミノマホロ for kintone」は業務改善のプロセスをイロハで3つのフェーズに分け、フェーズごとに作業をメニュー化しています。

  【イ】業務改善の始まり:業務改善の方向性を決める

  【ロ】業務改善に必要なkintoneアプリ作成:業務改善を実現するための仕組み(kintoneアプリ)を作る

  【ハ】業務改善の実行サポート:業務改善を進める

今回の記事のようなお話は、実際にPJを推進していく中で弊社が取り組んでいる内容になります。また、システム開発グループではkintoneに関するお悩み相談をお受けする「kintone駆け込み相談室」を随時開催しています。kintoneのシステム開発でお悩みの方がいらっしゃいましたらぜひお申し込みください!

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いのうえ
いのうえ
さすらいの、kintoneエンジニア