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〜業務改善の自由と、ガバナンスの設計思想〜
こんにちは、井上(たーぼー)です。
今日はkintoneの「ガバナンス」について、少し踏み込んだ視点からお話ししたいと思います。
私はこれまで100社を超える企業のkintone活用を支援してきました。そこで一貫して感じてきたのは、「使えば使うほど自由になる」はずのkintoneが、運用次第で“制御不能な混沌”を招くリスクを孕んでいるということです。
kintoneは業務改善を民主化する素晴らしいツールです。しかし、それを企業全体の武器として機能させるには、「統制」の設計が不可欠です。
■ ガバナンスなきkintoneは、やがて重荷になる
現場発の改善が推進され、業務が自走し始める。これは理想的な姿です。
ところが、数年後には以下のような“負の副産物”に直面するケースも珍しくありません。
- 同じようなアプリが複数存在し、どれが最新かわからない
- 誰が何の目的で作ったのか不明な“迷子アプリ”が散乱
- セキュリティポリシーがバラバラで、リスクの温床に
- アプリ管理者が退職して、引き継ぎ不能の「孤児化アプリ」が発生
- 複数の部門がバラバラに契約、ドメインをまたいで連携できない状態
これは決してレアケースではなく、“成長痛”のように多くの企業が通る道です。
ですが、その痛みはあらかじめ防ぐことができると、私たちは知っています。
■ ガバナンスとは、自由を制限するものではない
「ルールを作ると現場の自由が奪われるのでは?」とご相談を受けることがあります。
しかし私たちは、ガバナンスとは「自由の否定」ではなく、「自由を持続可能にする設計」だと考えています。
では、kintoneにおけるガバナンスとは具体的に何でしょうか?
ガバナンスの3本柱:
- 可視化(アプリとユーザーの棚卸し)
- 誰が、どのアプリを、どう使っているのかを常に見える状態に。
- 誰が、どのアプリを、どう使っているのかを常に見える状態に。
- 標準化(共通ルールの整備)
- 命名規則、アクセス権限、アプリ作成の申請フローなどを組織共通のルールに。
- 命名規則、アクセス権限、アプリ作成の申請フローなどを組織共通のルールに。
- 責任の明確化(管理者設計)
- アプリごとの責任者を明確にし、異動・退職時も管理不能に陥らない体制を構築。
- アプリごとの責任者を明確にし、異動・退職時も管理不能に陥らない体制を構築。
■ R3が向き合ってきた“リアルな現場”
私たちは、「ユーザーに寄り添う」ことを大切にしています。
ですが、決して迎合はしません。
表面的なニーズにそのまま応えるのではなく、背後にある課題を見極めて提案する。これが私たちの流儀です。
▼ 実際にあった支援事例より
ケース1:部門ごとにバラバラに導入されたkintone
「営業部門と人事部門が別々の契約で、IDもポリシーもバラバラ」という状態。利便性は高かった反面、連携や管理が不可能に。
→ 契約を統合し、統一ポータルと共通アカウント管理へ移行。
ケース2:アプリが200以上。だが使われていないものが半数以上
導入初期から自由にアプリを作っていた結果、現場で不要になったアプリも野放しに。
→ 使用頻度と更新履歴をもとに整理・統廃合を支援。命名ルールと利用申請フローも策定。
ケース3:管理者退職で“誰も触れない”アプリ群
技術的な属人化により、アプリのメンテナンスが不可能に。
→ 管理者交代ガイドと引継ぎテンプレートを導入。定期的な棚卸しサイクルも設計。
■ 現場の創造性と、組織の統制は両立できる
私たちは「kintone=現場主導のツール」として最大限尊重しています。
だからこそ、その自由が“企業にとって持続可能な資産”となるように支援することが、私たちの責任だと考えています。
R3のガバナンス支援では、「押し付けのルール」ではなく、現場が理解・納得し、自走できるための“仕組みと設計思想”を共に作ります。
■ 何から始めればよいか:プロが勧める3ステップ
ガバナンス強化は段階的に進めることが可能です。まずは以下のステップを推奨します。
- 現状把握(棚卸し)
- アプリ・ユーザー・アクセス権限の状況を可視化。
- アプリ・ユーザー・アクセス権限の状況を可視化。
- ルール策定(最小限のガイドライン)
- 命名・アクセス権・作成フローのベースラインを定義。
- 命名・アクセス権・作成フローのベースラインを定義。
- 運用体制の設計(責任者と見直しフロー)
- 担当者が変わっても引き継ぎが回る仕組みを確立。
- 担当者が変わっても引き継ぎが回る仕組みを確立。
■ 最後に:ツールに振り回されないために
kintoneは柔軟で強力なツールです。ですが、仕組みがなければその柔軟性が裏目に出ることもある。
自由には責任が伴う。これは、ツール活用でも同じです。
そして、R3の役割は「言われたことを実装するだけ」ではありません。
時に問い返し、時に軌道修正を提案することで、ユーザーと伴走しながら“持続可能な業務改善”を共創していくこと。
それが、私たちプロフェッショナルの矜持です。
キミノマホロ for kintone
アールスリーでは業務改善・システム開発を行うサービスを「キミノマホロ for kintone」として提供しています。
「キミノマホロ for kintone」は業務改善のプロセスをイロハで3つのフェーズに分け、フェーズごとに作業をメニュー化しています。
【イ】業務改善の始まり:業務改善の方向性を決める
【ロ】業務改善に必要なkintoneアプリ作成:業務改善を実現するための仕組み(kintoneアプリ)を作る
【ハ】業務改善の実行サポート:業務改善を進める
今回の記事のようなお話は、「ハ-7 ガバナンスルール作成」に当たります。
また、システム開発グループではkintoneに関するお悩み相談をお受けする「kintone駆け込み相談室」を随時開催しています。kintoneのシステム開発でお悩みの方がいらっしゃいましたらぜひお申し込みください!
投稿者プロフィール

- さすらいの、kintoneエンジニア
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