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こんにちは。システム開発グループの大澤です。
キミノマホロの打ち合わせをしていると、時々こんな言葉を耳にします。
「kintoneで賄える程度のシンプルな形にしたいんですよ」
この言葉自体には私も異論はありません。複雑で使いこなせないシステムより、必要な機能に絞ってスッキリまとめた方が、ユーザーにとっても開発側にとっても幸せになれる可能性が高いです。
しかし、問題は「シンプルにする」=「すぐ作れる」ではないということです。
打ち合わせの場では、こうした言葉に続けて、こんなリクエストが出てくることがあります。
「そんな大げさな機能は考えていないので、再来月には運用を開始したいです」
この瞬間、私の頭の中で小さなアラートが鳴ります。
ちょっと待ってください。私はまだ、その「シンプル」な姿がどういうものなのか、何もわかっていません。
「シンプル」の意味
ここでいう「シンプル」とは、ただ機能が少ない、画面がスッキリしている、という意味ではありません。
シンプルとは、「業務を行うにあたって過不足がない姿」のことを指しているはずです。
- 必要な情報がきちんと揃っている
- 余計な手間や無駄な機能はない
- 現場が混乱せず、ストレスなく業務を回せる
この「過不足のない姿」に近づけるためには、単純な引き算ではなく、現場の実態と制約を理解した上での設計が必要です。
そして、この見極めこそが時間と労力のかかる部分なのです。
「シンプル」を形にするまでの道のり
私たちが新しいシステムを作る際には、次のようなプロセスを踏みます。
- 現状の業務をヒアリングする
まずは徹底的に現場の声を聞きます。どんな作業があり、誰がどのタイミングでどの情報を扱っているのか。紙の書類やExcelが混在していないか。部門ごとに手順が異なっていないか。
この段階で、「思っていたより複雑ですね」とお客様自身が気付くことも多いです。
→イ-2 現状の業務整理 - 今の課題を整理する
不便さやミスの原因、作業が滞るポイントを洗い出します。
ここで課題を正確に把握できないと、せっかく機能を絞っても現場が混乱する危険があります。 - kintoneの制限と照らし合わせる
kintoneは柔軟ですが、万能ではありません。基本機能でできること・できないこと、プラグインやgusuku Customineカスタマイズが必要な部分を見極めます。場合によっては「この機能は諦めて、運用フローを少し変えて対応する」という判断も行います。 - 業務が回る「最小構成」を考える
機能を削ぎ落としても業務に支障が出ない形を模索します。
ここで初めて、「これならシンプルで、なおかつ現場で使える」という姿が見えてきます。
→イ-3 作るもの・作らないもの検討 - 検証と調整
お客様と認識のすり合わせを行い、実際に動かしてみて、想定外の不便や不足を洗い出し、修正します。
こうしたフィードバックの積み重ねで、完成度が高まります。
成果物は少なくても、作業量は少なくない
こうして形になったシステムは、見た目も機能もシンプルかもしれません。
しかし、その裏にはヒアリング、仕様の調整、検証の積み重ねがあります。
たとえば、入力項目が10個しかないフォームでも、
- どの項目を必須にするか
- 入力の順番はどうするか
- 誰がどのタイミングで入力するか
- 入力ミスをどう防ぐか
こうしたことを一つひとつ詰めていく必要があります。
なぜ時間がかかるのか
システム開発において、時間と費用の多くは「要件を固めるプロセス」にかかります。
もし要件が曖昧なまま作り始めれば、後から「あれも必要」「やっぱりこれは使いにくい」となり、結局やり直しが発生します。
kintoneのようなノーコード/ローコードツールは、動く画面を早い段階で作れるため、スクラッチ開発に比べて使い勝手のイメージはしやすいです。実際、「すぐに動くものを見せてもらえて、その場で意見を言えるので早いですよね」と言われることもあります。
しかし、それでも業務の流れを踏まえた設計、細かな仕様の調整、そして繰り返しの検証は欠かせません。なぜなら、最初に見える画面はあくまで“試作品”に過ぎず、そこから業務との整合性を取るための調整が始まるからです。
画面が動くことでゴールが近く感じられる一方、実はその後の「調整フェーズ」にこそ多くの時間と手間がかかります。例えば、業務での入力順に合わせてフィールドの並びを変えるだけで現場の混乱が減る場合もありますし、ボタンの配置ひとつで作業効率が変わることもあります。こうした改善点は、実際にさわってみないとわからないことも多いため、検証と修正の繰り返しが必要になるのです。
「シンプル」と「簡単」は似て非なるもの
「簡単なシステム」というと、作るのも早く、使うのも容易なイメージがあります。
一方で「シンプルなシステム」は、使う人から見ればわかりやすく、無駄がない状態ですが、作り手にとっては設計段階で非常に頭を使います。
つまり、「簡単」=作る手間が少ない、「シンプル」=使う手間が少ないとも言えます。そして、使う手間を減らすためには、作る側が多くの時間をかける必要があるのです。
まとめ
今回は、私の経験から「シンプル」なシステムを作るためにどういった作業が必要かについてご紹介しました。
アールスリーが目指すのは、ムダがなく、現場の流れに合った「シンプル」なシステムです。お客様にもその価値をしっかりお伝えし、ご理解・共感いただいたうえで、最適な形を一緒に追求していきたいと考えています。
キミノマホロ for kintone
アールスリーでは業務改善・システム開発を行うサービスを「キミノマホロ for kintone」として提供しています。
「キミノマホロ for kintone」は業務改善のプロセスをイロハで3つのフェーズに分け、フェーズごとに作業をメニュー化しています。
【イ】業務改善の始まり:業務改善の方向性を決める
【ロ】業務改善に必要なkintoneアプリ作成:業務改善を実現するための仕組み(kintoneアプリ)を作る
【ハ】業務改善の実行サポート:業務改善を進める
システム開発グループではkintoneに関するお悩み相談をお受けする「kintone駆け込み相談室」を随時開催しています。kintoneのシステム開発でお悩みの方がいらっしゃいましたらぜひお申し込みください!

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- システム開発グループ マネージャー
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