kintoneを入れるデメリットはあるのか?

「kintoneを入れて業務改善に成功した!」とか「kintoneを入れてシステム開発が早くなった!」のような事例はたくさん世の中に公開されていますが、kintoneを入れるデメリットに関する情報はあまり見かけません。

弊社のようなパートナーも含めてkintoneを販売している立場としてはデメリットを伝えることはあまりしたくないと考えるものですので、そういう情報はあまり出てこないことはどなたでも想像できると思います。

この「kintone活用コラム」は、kintoneを活用するためのコラムですので、いいことだけでなく、良くないことも理解した上でkintoneを活用していただきたいと考えています。

この記事では、kintoneの導入に伴って起こりうるデメリットを考えてみましょう。

kintone単体のデメリット

まずは、kintone単体の特徴から言えるデメリットを考えてみましょう。kintoneの導入においては、現場でアプリ作成をできるようにして、現場は自分たちでアプリを作って継続的に業務改善をできるようにするスタイルがよく取られます。この場合に起こるデメリットについて考えてみましょう。

未熟な設計による破綻したデータ構造を作るリスク

kintoneは、ドラッグ&ドロップでフォームを作成すると、フォームだけではなくデータベースまで作成してくれるサービスです。見た目はデータベースに見えないですが、データを管理する以上データベースと呼べます。

また、そのデータベースとしての特性は、慣れている方が多いリレーショナルデータベースとも異なるため正しく理解しておく必要があります。これについては別のコラム「データベースとしてのkintone(キントーン)」に書いていますので、こちらもご覧ください。

このkintoneの特徴はメリットではありますが、デメリットにもなり得ます。 誰でもアプリが作成できるということは、データベース設計の知識のない方でもアプリが作成できるということなのです。

そうすると、次のようなリスクがあります。

  • 適切なマスターデータの切り出しを行わず、重複データがkintone内に発生する
  • アプリとして管理すべきデータをテーブルとして作成してしまい、集計や連携ができなくなる
  • 各データにキーとなる情報が存在せず、将来連携や参照しようとするときに破綻してしまう
  • 数値であるべきデータを文字列にしてしまい、後の計算処理で困ってしまう

このデメリットを回避するには、現場でアプリを作る人にも基礎的なデータベース設計に関する学習をしていただく必要があります。

過度かつ適切ではない作り込みにより負の技術資産を抱えるリスクがある

kintoneの基本機能ではできることに限界があるため、kintoneではプラグイン等での機能拡張が多くなります。このこと自体には問題はないのですが、このときに、次のようなことをすると将来的に困ってしまうことがあります。

  • 保証のない無料プラグインなどを多用したためにある時点で突然動かなくなる
  • よくわからないJavaScriptのサンプルプログラムをコピペして使ったことにより、将来誰にも保守できない状態になる
  • しっかり考慮せずRPAを導入することによってkintoneアプリが変更できなくなる

このようなものは負の技術資産と呼ばれ、将来システムを発展させる時の足枷になる可能性があります。

kintoneのカスタマイズについては別のコラム記事の「kintone(キントーン)をカスタマイズする4つの方法」や「kintone(キントーン)素人のJavaScriptカスタマイズは危険?」に詳しく書いていますのでご覧ください。

RPA(とくに画面の操作を自動化するタイプのもの)は導入を慎重に検討してください。kintoneは容易に画面の項目を増やすことができますので、kintoneアプリを変更するとRPAで組んだ処理が動かなくなるということも容易に起こり得ます。

統制とのとれていないアプリが乱立するリスクがある

kintoneアプリを作成できる人が社内に増えてくると、各メンバーが自由にアプリを作成します。この時、適切に統制を取っておかないと次のようなことが起こり得ます。

  • 同じ情報を管理するアプリが乱立する(とくにマスター情報)
  • 同じ意味を示す項目が数値だったり文字列だったりして連携ができなくなる
  • cybozu.com環境の組織やグループが乱立しアクセス権の管理がぐちゃぐちゃになる

これを回避するには、全体の方針やルールを決めることが必要です。全体で共通化できるマスターデータなどはこのルールの中で使うアプリを決める、などと決めていくイメージです。

企業の情報システム全体でみた時のデメリット

次にkintone単体ではなく、企業の情報システム全体でみたときにkintoneをその一角に加えることで起こりうるデメリットについて考えてみましょう。

システム連携の負担が重くなる可能性がある

kintoneですべてが完結するということは少なく、多くの企業では別の会計システムなどが存在します。kintoneで入力されたデータをこのようなシステムに連携したくなってきますが、連携処理は上のRPAの話と同じでkintoneアプリの変更により連携がエラーになるということが起こり得ます。

また、多数のシステムと連携させることによって、kintoneの自由度はどんどん奪われていきます。逆に連携開発をしている方から見ると、現場の人がどんどんアプリを変えて、そのたびに連携動作で問題がないかを確認する必要が出てくるため大きな負担がかかります。

さらに、kintoneを中心に業務を構築した場合、kintoneと連携しづらい他のツールの導入が困難になる可能性があります。たとえば、データ構造がkintoneアプリと合わないであるとか、連携したいタイミングで連携できそうにないなどのケースが考えられます。

管理対象データ量がボトルネックとなる可能性

kintoneは多くのデータを管理するのが得意ではありません。一般的には1アプリにつき100万レコードくらいまでにしておかないと、色々な不都合が生じることもあります。

kintoneとその他システムでデータ連携させて運用する場合、このkintoneのデータ上限がボトルネックになる可能性があります。

こういう場合は、kintoneはあくまでも業務を回すプラットフォームとして最低限必要なデータだけを蓄積し、分析などに用いる大量データは別のデータベースに保持することが望ましいと言えます。

kintoneの限界がシステムの限界だと誤解する可能性

kintoneはなんでもできるわけではありません。kintoneを中心に業務を作ると、kintoneでできないことはシステムではできないと考える人が出てきます。

1つのツールですべてを賄おうとするのではなく、適材適所でツールを使っていく必要があるのですが、ツールが増えると上に書いた連携問題も発生するので、この辺りをバランスよく選択していくことが大切です。

そのためには、会社のシステムの全体像を描き続ける人が必要です。自社では難しいという場合は、プロの力を借りてでも全体像を整理することをオススメします。

まとめ

ここまでさまざまなkintone導入に伴うデメリットをみてきましたが、実はkintoneだけに限らずどんなシステム・ツールでも正しく運用しないとさまざまなデメリットを産んでしまいます。

これをみてkintoneダメだと思うのではなく「うまく使う」ということを意識していただけると幸いです。

弊社では、この「kintoneをうまく使う」を伴走してサポートするgusuku Boostoneというサービスを提供しておりますので、自社だけでやるのは自信がないという場合は、ぜひgusuku Boostoneをご利用ください。

全体像を描くところからのお手伝いを希望される場合は、ぜひHighspeedSIにご相談ください。