巴バルブ株式会社様 事例紹介

巴バルブ株式会社
最高戦略責任者 浜田 祐介 様
業務改革室
大坂 菜摘 様
桑木野 友香 様

巴バルブ株式会社はバタフライバルブが主力製品の老舗バルブメーカーです。2019年から業務改革を推し進めており、その一環としてkintoneを導入。営業アシスタント出身の担当者がアールスリーの内製化支援を得ながらkintoneアプリを構築され、案件管理の一元化や不適合部品4,000件の見える化に成功されました。今回は、最高戦略責任者の浜田様と業務改革室のお2人に、kintoneによる業務改善の経緯とアールスリーの内製化支援の効果についてうかがいました。

業務改革室を発足し、営業アシスタントを改革メンバーに抜擢

Q:最初に、業務改革室の発足の経緯を教えてください。

浜田様(シンガポールが拠点)

2019年、巴バルブに最高戦略責任者として入社し、昔ながらの業務フローを改革すべく業務改革室を発足させました。外部のIT人材を確保することは難しかったのですが、社内で業務フローに課題感を持つ営業アシスタントに出会ったのでプロジェクトに誘いました。それが今kintoneの開発を担っている大坂と桑木野です。

Q:業務改革室に参加したいと思った経緯をお聞かせください。

大坂様(東京勤務)

私は5年間の営業パートナーを経て業務改革室のメンバーになりました。転職組ということもあり、巴バルブならではの電話・メール・Excel・書類を使った案件管理の煩雑さに悩みながらも、解決策もなく毎日業務に追われていました。当時は1つの仕事を終えるために何個もの工数がかかったので、残業も多くしんどいな…と感じていていたタイミングに浜田と会う機会がありました。私にフラストレーションがたまっていることを見て取ったようで、その後に業務改革室に誘ってくださいました。願ってもないことだったので「是非やらせてください!」とプロジェクトに参加しました。

桑木野様(福岡勤務)

私も転職組です。配属先の福岡では業務が全て紙で行われていました。コロナ禍で在宅ワークに突入すると、紙なしでの仕事がすごく大変で「どうやってやればいいのだろう?」と試行錯誤しました。「マニュアルがあるといいな」「こうできたらいいな」と業務改善を思い浮かべる日々の中で、縁あって業務改革室に誘っていただきました。仕事が忙しすぎて1度断ってしまったのですが「このまま仕事がやりにくいのはいけない」「非効率な点を解決することが業務改善につながる」と思い直して、入室させてもらいました。

一から業務フローを整理して、それに沿うアプリを作りたい

Q:業務改革をするにあたり、色々なツールがある中でkintoneを選んだ経緯を教えてください。

浜田様

業務改革が必要だと思ったきっかけは、基幹システムやSalesforceによって前後の手間が余計に増えているように見えたことでした。基幹システムにデータを入れるためにExcel処理をする人がいて、ツールで楽になるのではなくツールのために仕事をしている状態です。Salesforceは見積書の採番や製品入力などの目的で利用していましたが、使いこなせておらず、その状態を正そうという動きもなく放置されていました。Salesforceでやりたいことがあったはずですが、使い方が難しすぎて目的に沿った活用を途中でやめてしまい、使うことができた機能だけが残っていたのです。

ならば、全てを1回フラットに捉えて、どのような業務オペレーションにすると良いかを考えた上で、自分たちでツールを作りたい。それをするには、ウォーターフォール型のように設計思想に無いものを後から変えにくい方法ではなく、自分たちでカスタムできる方がいい。kintoneの良さは PDCA とスクラップアンドビルドができることです。描いたものを粗々でいいのでまずは具現化する、思ったものと違うものができたら変更する、試行錯誤しながら目的に沿ったツールを完成させる。そんなニーズに合っていたので採用しました。

アールスリーは壁打ちとトライ&エラーをさせてくれそうだった

Q:kintone開発の伴走を依頼したいと思った理由と、アールスリーへのご依頼の決め手を教えてください。

浜田様

我々の目的は非効率な業務フローを素早く整理することなので、自分たちで全部開発をしようとは考えず、プロにアドバイスを受けたり、開発してもらう様子を横で見ながら吸収したいと思っていました。私はIT出身でシステムの大枠を考えることはできるので、我々のやりたいことや実行案に対してkintone的にできる・できない・代替案はこれ、のような形の壁打ちができる会社を探しました。これに対し製造業での実績があることと、当社に合うだろうということでサイボウズさんがイチ押ししてくれたのがアールスリーでした。アールスリーの井上さんと面談したところ、壁打ちをしながらkintoneアプリのスクラップアンドビルドに付き合ってもらえる相手だと感じたので依頼を決めました。

アールスリー井上

巴バルブ様のメインの目的は業務改善で、最初に取り組みたいのが受注管理や案件管理ということでした。また自分たちでもkintoneの開発をしていきたいというご希望もお持ちでした。これに対して弊社からは、kintoneの内製化支援とgusuku Customine(JavaScript不要でkintoneをカスタマイズできるツール)を併用すれば、業務改善アプリを開発できることをお伝えしました。こちらが全て作るのではなく、役割分担を行い、開発を進めていきます。開発の一部をお客様にお任せすることもあります。結果として、改善を継続していくためにはお客様自身でkintoneを触ることが重要ですので、今回はそれがマッチすると思いました。

合わせてkintoneを初歩から学ぶ必要があるため、kintone研修制度のクラウドユニバーシティをご提案しました。

アールスリーの井上と鈴木

「ノーコードって何?」の状況から、kintoneと業務改善を学習

Q:kintoneが初めてだったとのことですが、最初はどのように学習されましたか?

大坂様

kintoneの仕組みを知らなかったので、まずはkintoneとgusuku Customineの講習を受けてゼロから勉強しました。次は業務整理をする方法を覚えました。どう業務全体を俯瞰して整理すればいいかを考えることに苦戦しましたが、浜田が背景・目的・ゴールという考え方の順序を叩き込んでくれて乗り越えました。その後、これらの知識をベースに膨大な数のkintoneアプリを作り会社のkintone担当になっていきました。

桑木野様

もともと営業事務だったので、最初はkintoneやデータベースなどの考えが頭に入らなくて、何度もアプリの作り方やカスタマインの考え方をアールスリーの鈴木さんに教えていただきながら学んでいきました。

初期のアプリはスクラップアンドビルドを経て何とか完成

Q:ゼロからkintoneや業務改善を学ばれたのですね!一番印象に残っているアプリ開発について教えてください。

大坂様

依頼管理アプリ(案件管理)です。営業パートナーは見積もりを作るために関係各所に技術検証、納期、金額などの問合せを行うのですが、そのコミュニケーションは電話やメールで行っており、収集したデータはすべて個人のパソコンに保存していました。そのため同僚の案件進捗や作成したファイル類が外からは見えません。誰かが休むと、受注したのかまだなのか分かりにくいですし、お客様からのお問合せにもスムーズに対応できないため大変でした。この問題の解決を目指したのが依頼管理アプリです。案件のステータスが分かるようにする、作成した資料をここに集約する、アプリ内の情報を皆で共有・閲覧できるようにする、そう話し合って作り始めました。

依頼管理アプリ

Q:依頼管理アプリはスムーズに作成できたのでしょうか?

桑木野様

2020年10月に「依頼管理」と「問合せ」の2つのアプリを作ることに決めて開発を始めました。私たちとアールスリーの井上さん・鈴木さんと一緒に進めていたのですが、リリース直前の2021年6月に「このままリリースしたら現場に混乱が生じる」と感じてやむなく作り直しを決めました。

Q:作り直しになった原因は何だったのですか?

大坂様

1つのアプリに見積もり作成・納期確認・技術問い合わせなどの要素を詰め込みすぎたことで、現場にとってとても使いにくいものになってしまったためです。仕切り直し後は、1アプリに詰め込んでいたこれらの機能を分割して、依頼管理・納期確認・受注管理のアプリを作ることにしました。

桑木野様

理想も詰め込みすぎていました。通常は受注になってから品目を特定させるのですが「見積もりの段階で品目を特定しておけば確定したらボタン1つで受注処理に進めるので便利」と考えました。それで見積もりの段階で30万個ある品目の中から商品を特定して見積もりを作る仕様のアプリを作っていました。しかし見積もりの時点で毎回 30万分の1まで品番を絞るのは大変すぎることに開発の途中で気づいてしまいました。新しく品目を作る必要のある見積もりの案件が失注すると、手間をかけて無駄な品目コードを量産することにもなります。こうして私たちは「理想だけで開発をしたらダメ」なことを学び、「受注前までの管理」というアプリの目的に立ち返って見積もり段階ではフリーテキストで品目を入力する仕様にすることに決めました。

アールスリー鈴木

作り直しになった時には、アプリはかなり作り込んだ状態だったので内心ショックでしたが、私もこの機能は削るべきなどしっかりと意見をお伝えすべきだったと思いました。大変でしたが最終的に良い方向に変更できたので、このやり直しは英断だったと思います。

Q:アプリが作り直しになったことについて浜田様はどう考えておられますか?

浜田様

2人がしっくり来ない場合は、開発の序盤でも良くないから変えようという動きをします。最初のアプリが作り直しになったのは周囲の意見を聞きすぎたことや、鈴木さんの頑張りを知っているから変更したいと言いにくかったりしたことで、だんだん後戻りできなくなったからです。最後の最後で、使う人のことを考えた時に、2人が「やっぱりこれではダメだと思います」と言ってきたので「じゃあ、やめましょう」と許可しました。気持ちが乗り切らないものを作ると大変ですよね。何か違うと思ったら関係者がどれだけ苦労するとしてもその場でバシャっと変更したほうが良いものです。この経験から、中途半端に開発を進めたら意図とかけ離れたアプリができてしまうことや、最初から完璧なものなんて作れないことを学ぶことができました。そんな経験ができたことは2人にとってとても良いことだったと思います。

Q:開発には紆余曲折あったのですね!そんな依頼管理アプリのその後について教えてください。

桑木野様

リリース時は皆に受け入れてもらえるか心配で夜も眠れないほど緊張していましたが、今は受け入れてもらってkintoneが無いと困ると感じていただいているように思います。

大坂様

現場の人がアプリを当てにしてくれていることが伝わってきます。アプリ改善の相談を受けるたびにしっかりと使ってくれているのだなと嬉しくなります。

営業所一丸となってお客様に対応できる、残業が減るなど効果多数

Q:kintoneアプリでどんな効果を得ることができましたか?

桑木野様

営業所一丸となってお客様に対応できるようになりました。担当者が休みや外出で居なくてもアプリを見れば案件のステータスが分かりますし、見積もり済の場合はその内容も確認できます。社員が互いにサポートし合える体制が整えられたことは本当に大きな変化でした。

受注明細などの情報がアプリに集まっているので誰でもお客様に対応できる

不適合アプリで4,000件もの不良仕入れを見える化し、経営判断に活用

Q:経営面ではkintoneの導入でどんな効果を得ることができましたか?

浜田様

経営陣としては経営の数値化ができるようになり助かっています。例えば「不適合アプリ」では4,000件もの不適合部品を見える化できました。不適合品が多い仕入先を把握したりどんな性質の不適合が多いのかを把握できるので、品質向上のために具体的なアクションがとれます。このアプリはある「仕事が遅いと思われていた現場の社員」に話を聞きに行ったことで生まれました。その社員は買い付けた部品が発注したものと違った場合、早く出荷をしないといけないので自分で手直しをして次の工程に乗せていました。このことは記録に残っていないので責任者は取引先が欠けたものを納品したことや、手直しをしているメンバーの頑張りを知らなかったのです。

不適合アプリ。不適合部品、問題点、対応策を管理している

成功の秘訣は、正しい不満を持っている社員を抜擢すること

Q:kintone未経験のお2人が大活躍されてkintone導入に成功したわけですが、上手くいった要因は何だったとお考えですか?

浜田様

正しい不満を持っていて、自分で調べたり関係者に質問したりするスキルが高い社員を抜擢すること。彼らと業務フローの変更権限を持つ役職者をくっつけることです。不満な点を変えたいとなった時に、それを通せる役職者がいれば素早く改善できるからです。2人はかなり苦労したと思いますが、これらのスキルの高さを活かして試練を乗り越えてくれました。正しい不満、調べる力があればITスキルは後からついてくるのではないでしょうか。

このチームでアプリを開発できて本当に良かった

Q:アールスリーは御社のkintone開発においてどんなパートナーでしたか?

大坂様

アールスリーの井上さんと鈴木さんは良い意味で近い距離感で関わってくださるし、ちゃんと理解しようと歩み寄ってくれます。そのため今すぐ解決したいことや、エラーが出ていて困っていることなどを相談しやすくて心強かったです。またgusuku Customineの仕組みは、ただただ分かりやすいです!JavaScript を日本語にしていると分かった瞬間からは、パズルみたいに組み合わせを考えられるようになり扱いやすくなりました。これが無いとアプリは作れなかったと思います。

桑木野様

アールスリーの井上さんと鈴木さんは親身に相談にのってくれるので、最初の依頼管理アプリの時から非常に心強かったです。

浜田様

アールスリーの担当者が井上さんと鈴木さんで良かったと思います。私が最初に必要としていたのはシステム的な正しさではなく、アプリの構想を描ききれていない我々を壁打ちの中で導いてくれることでした。これに最後まで寄り添ってくれたのが井上さんと鈴木さんでした。開発を通じて当社の担当者がkintoneのスキルを吸収してくれればいいと考えていたので、壁打ちの相手が良かったことは幸いでした。本当にこのチームで良かったです。

Q:最後に、アールスリーのkintone内製化支援サービスを検討中の方にメッセージをお願いします。

浜田様

DXを進めるためには、経営者が現場に行って部下の困りごとを知ることが先決と考えています。私は大坂や桑木野がチームに入った時に、彼女たちが日頃何をやっているのか分からなかったので仕事を動画に撮って送ってもらい、何回も繰り返し見てその業務の目的や一つ一つの処理の意味を考えました。何度見ても無駄の多い業務フローでした。そして業務フローをkintoneで改善する段階では、アールスリーの担当者に壁打ちをしてもらい、アプリをチームメンバーで試行錯誤しながら完成させました。今では約40個のアプリが現場で活用されています。まずは経営者が現場に行って自分で部下の仕事をやってみることから始めてはいかがでしょうか。

貴重なお話しをありがとうございました。

取材2023年10月末