株式会社 東急パワーサプライ様 事例紹介

kintone×gusuku Customineがもたらすツールの革新で、営業活動の「在り方」を自ら切り開く

【課題】ビジネスの変化に追従できず使われなくなった高圧営業ツール

 2016年4月、一般家庭を含めた電力小売りが全面自由化されました。これに先立ち東急グループ傘下に設立されたのが、株式会社 東急パワーサプライです。当社は首都圏において家庭向け低圧電力だけではなく、先に自由化されていた高圧・特別高圧電力も供給、2018年からは家庭向けガスサービスもスタートしています。このうち家庭向けの低圧電力は、地元に密着した代理店などからも販売していますが、高圧・特別高圧電力に関してはすべて東急パワーサプライの営業部門が直接担当しており、事業開始以来右肩上がりにご契約数を増やし続けています。

増え続ける供給実績
法人企画営業グループ 高橋英明氏

この営業活動に関して、東急パワーサプライは課題を抱えていました。従来はSaaSで提供される大手CRMを使っていたのですが、「営業活動の実態にそぐわず、次第に担当者から使われなくなってしまった」と、法人企画営業グループでマネージャーを務める高橋 英明氏はその当時を振り返ります。本来業務ではない作業を効率化して営業活動に時間を使えるようにと思って導入したシステムは、ビジネス環境の変化や、それにともなう営業活動の変化に追随できませんでした。結果として営業活動の実態からかけ離れてしまい、使われなくなり、Excelやメールを使った手作業が多くなってきていました。

 このままではSaaSのコストも、営業担当者の時間も無駄になってしまいます。高橋氏は、「営業活動として意味のある活動に時間を割くため、本分ではない作業はできるだけ効率化したいという要望は引き続きもっていました」と語ります。そうして法人企画営業グループはIT推進グループとともにシステムの見直しに取りかかりました。

【選定のポイント】ツールに合わせるのではなく営業の実態に合わせたツールを作れるkintoneとgusuku

 高橋氏は、同じ東急グループで新規事業に携わる同僚に現状について相談しました。するとその同僚から、サイボウズ社の「kintone」と、アールスリーインスティテュート(以下、アールスリー)を勧められました。そこから、既存のSaaSとkintoneとの本格的な比較検討が行われました。

 「ランニングコストの安さもありましたが、一番の決め手となったのは営業姿勢でした。従来使っていたSaaSは人がツールに合わせるべきというスタンスが強かったです。一方、アールスリーの担当者からは、課題を正しく理解してくれた上で、それに対する解決策を示してくれました。ときには、私たちの間違いを指摘してくれることもあり、対話を重ねるうちに信頼感が増しました」と、IT推進グループ チーフの長谷川 悠氏はkintoneおよびアールスリーを選んだ理由について語りました。

「また、アールスリーからはkintoneアプリの開発を強力にサポートするプラットフォームサービス『gusuku(グスク)』も提案されました。中でもkintone基本機能では実現できないことまでもノーコードでカスタマイズできる『gusuku Customine(グスク カスタマイン)』は非常に魅力的に感じました。通常ならば、JavaScriptなどのプログラミングによるカスタマイズが行われるところ、gusuku Customineがあることにより、プログラミングの知識がない自分たちでもカスタマイズが実現できますし、プログラミングを書いてしまうとそこがブラックボックス化して、後々のメンテナンスが困るのは目に見えていたためです。」

 ツールに業務を合わせるのではなく、kintoneを使えば業務にそった形のアプリを作れます。さらに、細かく調整したい部分は、gusuku Customineを使えばプログラミング不要でアプリをカスタマイズし、機能を追加できます。この開発のスピード感は、従来使っていたSaaSでは得られないものでした。

gusuku Customine

【運用と効果】コミュニケーションコストを削減し、より良い提案を行う時間を確保

 kintoneとgusukuの組みあわせは、システム内製化の強い味方です。実際、約4ヵ月かけてシステム開発を進めるうちに長谷川氏はkintoneとgusuku Customineの使い方をマスター、終盤には内製化に向かっていました。本格運用に入った2019年9月移行も、現場からの要望に応えてアプリは進化を続け、取材時までの約3ヵ月でかなり変貌を遂げたとのこと。

IT推進グループ 長谷川悠氏

 高圧・特別高圧電力の営業では案件ごとにコスト試算を行うため、営業担当者、試算担当者等の緊密なコミュニケーションが必要です。以前はExcelやメールでやりとりしていたため、見積提案までに時間がかかっていました。「kintoneの画面に試算依頼ボタンを設置し、kintone上でコミュニケーションを取ることで、見積提案までの時間を短縮できた」と、高橋氏は言います。定型のやり取りの簡略化により、顧客を待たせることなく営業活動をスムーズに進められるようになりました。

 また会社の承認を受ける時間も、大きく削減されました。こちらもkintoneの画面に承認依頼ボタンや承認ボタンを設置。承認者がスマートデバイスでいつでも対応できるよう、承認ボタンを画面の上の方に表示するなど工夫もこらされています。どちらもレコードごとにコメントを残せるので、営業担当者が変わったとしてもひと目でこれまでのやりとりを把握できます。

 多くのExcelファイルやメールの中から営業活動に必要な情報を探すためにも時間がかかっていましたが、kintoneに一元化されたことでそうした作業も効率化されました。こうして生まれた時間も、営業活動に充てられています。営業活動にかけられる時間が増えただけではなく、無駄なコミュニケーションコストを削減できたことで、より高品質なサービスを低価格で提供することにもつながっています。

そしてこれらkintoneの複合的な効果により月次の提案件数が格段に増えた他、お客様の要望に応えた最適なスピードとタイミングで提案ができるようになって提案力が大幅に向上し、その結果が成約率の向上につながるという正の連鎖が生まれています。

【今後の展望】再生可能エネルギーの活用提案など高圧営業本来の活動に注力できる環境を

 すでに営業活動の一部として浸透しているkintoneですが、今後もビジネス環境の変化や営業活動の変化に合わせてアプリを開発、カスタマイズすることで、営業活動を支えていくことが期待されています。「営業活動の本分とは関係ない作業コストを削減すれば、時間にも気持ちにも余裕が生まれます。その余裕を使って、再生可能エネルギーの採用など、顧客により良い提案ができるようにしていきたいと考えています。余裕がなければアイディアは出ませんから」と高橋氏は言います。東急電鉄世田谷線を水力、地熱などの東北電力グループが供給する再生可能エネルギーだけで運行するなど、東急グループ全体で環境に配慮したエネルギー活用に積極的に取り組んでいます。環境負荷の低い生活を、kintoneが後押しできるようになる日も近いかもしれません。

 長谷川氏は、「営業グループと試算グループとのやりとりが効率化され、明確な効果を実感できたいま、他部署にもkintoneを展開したいと考えるようになった」と今後の展望について語ってくれました。社内にはExcelを添付したメールが飛び交っている部署がまだ多く存在するとのこと。kintoneとgusukuが活躍するシーンは、これからも増えていきそうです。

写真左から、高橋様、長谷川様、アールスリー林、和田