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ベテラン社員が複写伝票で回していた手作業パートナーへの発注管理をkintone化し、多店舗展開を実現


株式会社手作業マーケット
専務取締役 東京営業所 所長 水島 巧 様
株式会社手作業マーケットは内職作業のアウトソーシングサービスを展開する会社で、主力商品は生地見本帳の作成です。同社は生地見本帳の作成を内職さん(手作業パートナー)にアウトソーシングしており、作業の発注・納品・請求などを行っています。多店舗展開を支える基盤をつくるために、内職の管理ができるkintoneアプリをアールスリーと開発。複数の店舗を軌道に乗せました。本インタビューでは、アプリ企画の経緯や導入効果についてうかがいました。
多店舗展開に向けて手作業パートナーへの発注管理ができるシステムを作りたい
Q:はじめに生地見本帳の作成について教えてください。
水島様
私たちは生地メーカーの営業ツールである「生地見本帳」を作成しています。生地1品番あたりの台紙の作成数は200〜300枚で、1日あたりの台紙の生産数は10,000〜15,000枚と大量です。細かく裁断された生地を台紙に貼る作業は機械ではどうしてもできないため、手作業パートナーに依頼して1枚1枚手作業で仕上げてもらっています。

Q:kintoneアプリを企画された背景についてお聞かせください。
事業が拡大する中で、私たちは手作業パートナーをいかに増やすかで頭を抱えていました。そこで2022年、本社以外のエリアでも手作業パートナーを募集するために多店舗展開を決めました。それまでは手作業パートナーへの発注管理を「伝票・ホワイトボード・ベテラン社員の裁量・本社から手作業パートナー宅まで商品を車で配達する方法」で行っていました。この方法では多店舗展開をした時に全店舗の発注状況を把握できません。そこで、何らかのクラウドサービスで発注管理を行いたいと思いました。
手作業パートナーへの発注管理方法はアナログ的だった
- 社員が手作業パートナーのお宅を車で訪問し商品を受け渡し
- 誰にどの品番を何枚渡したかは伝票で管理
- 急ぎ状況を確認するときは社員の記憶が頼り
- 急ぎの案件は手作業パートナーの家庭事情をもとに社員が采配
- ホワイトボードで品番ごとの進捗状況を把握
- 3枚複写の伝票に品番・依頼数・報酬額を記録
- 手作業パートナーが伝票の1ヶ月分の束を集計し請求
- 報酬は社員が現金を封筒に入れて手作業パートナーに渡す
アールスリーの決め手は1番丁寧に提案してくれたこと
Q:発注管理のためのクラウドツールはどのような経緯でkintoneに決めましたか?
最初はGoogleスプレッドシートでの管理にトライしましたが諦めました。1日あたり約30品番・15,000枚分の発注と50品番の完成品の回収を記録していくのですが、全体で300枚の仕事でも100枚づつ3回に分けて納品されたりするので、シートへの記入回数が膨大になり大変でした。また、シートの行数もあっという間に数万行に増えてしまいました。そのためスプレッドシートでの管理は厳しいという結論に至りました。
次に目をつけたのはCMで見かけたサイボウズのkintoneで、検索で作り方を調べながらkintoneアプリを作ってみました。簡単な機能のアプリは作れましたが、やりたいことを実装するのは難しく、これから勉強するにしてもその範囲が広かったので開発の依頼を決めました。
Q:kintoneアプリの開発をアールスリーにご依頼いただきましたが、その決め手をお聞かせください。
検索で目についた3社の開発会社に問い合わせをしたのですが、アールスリーに決めたのは提案が1番丁寧だったからです。手作業パートナーへの発注枚数はいつもアバウトです。例えば「規定数が300枚の仕事で、予備を含めて350枚の台紙をお渡しし、320枚が納品される」といったことがよくあります。規定数300枚との差分20枚をkintoneでどう処理すればよいか?ミスで台紙をはねた場合は?など自分で設計するのが難しい点をお伝えしてアプリへの反映方法を提案していただきました。
1社は見積もりをいただけず、もう1社の提案は紙ペラの1枚もので提案内容に不安を感じました。アールスリーは10枚ほどの提案書にアプリの設計案が丁寧に書かれており、私がやりたいことが実現できると感じたので依頼を決めました。

アナログ時代の良さを引き継ぐ、自由度の高い発注管理アプリが完成
Q:今回開発した「見本帳管理アプリ」について教えてください。
「見本帳管理」は4つのアプリが連携して動くアプリです。
- 内職さん管理(手作業パートナーの作業履歴の蓄積と支払い処理)
- 商品管理(発注主からの注文内容を登録)
- 内職さん割当(手作業パートナーへの商品の割当内容を登録)
- 商品回収(手作業パートナーから納品された商品内容を登録)
見本帳管理アプリのトップ画面

見本帳管理は主力の4アプリの連携で機能する設計
内職さん管理アプリ

商品管理アプリ

内職さん割当アプリ

商品回収アプリ

商品回収アプリには独特な事情をうまく反映
特に「商品回収」は当社の独特な事情がうまくアプリに反映されています。例えば1つの仕事では台紙は数回に分けて分納されるので。過去の同一の依頼分がアプリの中で自動で足し算されてレコードに反映されるようになっています。例えばアプリのレコード一覧を見れば「仕事Aは規定数150枚に対し、納品回数は2回で、累計104部納品済み」という具合に現状を一目で把握できます。おかげで発注者さまから「急いで納品してほしい」とお問い合わせが入った時にはすぐに現状を報告したり急ぎの対応をしたりできます。
また「300部渡して290部で終わるケース」や「定数300部で予備を含めて350部渡し320部納品されるケース」など、システム的にはあり得ない状況が起こるのですが、その仕事を終了できるように「完了ボタン」がついています。

「内職さん管理」は支払関連の処理が総合的にできる
内職さん管理は「月の支払額の集計」や「支払明細書の生成」「銀行振込用のCSVファイルのダウンロード」も可能です。アプリ上部にある「月度分の納品を集計する」などのボタンを押すだけで集計とダウンロード用ファイルの生成が行われます。ダウンロードした支払明細書は印刷して手作業パートナーに渡します。報酬の支払時には銀行振込用のCSVファイルを使って効率的に支払い処理を行えます。

ボタン②全員分の支払明細書をダウンロード
ボタン③銀行振込登録用CSVファイルのダウンロード
アプリが多店舗展開の基盤となり、手作業パートナーが70人から200人に増加
Q:見本帳管理アプリの導入効果をお聞かせください。
多店舗展開をするための基盤ができました。これまで本社のベテラン社員が行っていた発注管理を店舗のスタッフができるようになり、本社から全店舗の仕事の進行状況を逐一把握できるようになりました。導入時は伝票などアナログな方法からの切り替えだったのでアプリの社内浸透に苦労しましたが、今では店舗での業務がスムーズに運んでいます。
約70人だった手作業パートナーを多店舗展開により200人まで増やすことができました。商品の受け渡し方法を社員による配達から、手作業パートナーに店舗に来店いただく方法に変えたことで、作業枚数が少ない方にも頼めるようになり、生産能力も劇的に上がりました。こうして人が足りない問題は解消されました。
手作業パートナーへの支払いはkintone導入時に現金から銀行振込に変更いただくように依頼し、7割の支払いが銀行振込になりました。以前は約100人分の現金を5時間かけて封筒につめていましたが、今ではこの作業は1時間以下で終わります。
週次の納品数を確認する会議では、1週間分の伝票を電卓で計算し、生産数を報告していました。この作業は3人がかりで1時間かかっていましたが、今ではkintoneの集計機能で一瞬で終わります。
品番などで検索できる点も便利です。緊急の納品依頼はけっこうあるのですが、検索でどの品番が誰に渡っているのかすぐに分かります。これまでは手作業パートナーごとにまとめた伝票の束から目的の品番を探していたので大きな変化です。
他にも社内の人に情報共有がしやすくなりました。例えば検品担当者は納期を管理していますが、足りない品番があれば検品担当から手作業パートナーに直接連絡をして催促するなど素早い対応が可能になりました。

アールスリーとの開発で「できない」と思っていたことも実現できた
Q:多店舗展開がうまくいったとのこと、本当におめでとうございます!今回のアールスリーとの開発の感想をお聞かせください。
アールスリーとの開発では「できないんだな」と思っていたことが実現できました。例えば品番で検索をする時に「部分一致検索」がkintoneの基本機能ではできませんが、カスタマイズでできるようにしてくれました。
また、社内でアプリ導入の合意形成を取る際に、伝票やホワイトボードなど慣れ親しんだ方法の特徴である「メモができる」「数字が曖昧なままでも通る」などの柔軟性が求められました。この要望に対して「納品数が規定数と違っていても登録できる」など自由度の高いアプリを設計してくれました。これはありがたかったです。今後は、台紙の製造工程もkintoneで管理できるようにしていきたいですね。
アールスリー渡邊
今回の開発では「数字の曖昧さを許容できるアプリ」がご要望ということで、ガチガチにシステムで縛らない設計を心がけました。また商品の現状把握が重要とのことでしたので、手作業パートナーや品番などの切り口から、誰に仕事を依頼したかを素早く見つけることができるように工夫しました。発注額の集計機能の部分には裏側に多数のプログラムも実装しました。発注管理者様や店舗の皆様に便利に利用いただけているとのことでとても嬉しいです。

要望を達成できるよう筋道を立ててくれる開発パートナー
Q:最後に、アールスリーのkintone開発サービスを検討中の方にメッセージをお願いします。
システム開発について分からないことが多い中で「こういうことを実現したい!」と曖昧な依頼をしたのですが、渡邊さんは「こうすればできる」とアプリ実現への工程を描いてくださいました。まさか複数のアプリを組み合わせることで私たちの要望が実現できるとは思いもよらず、プロにお任せして良かったと思いました。アールスリーは、要望を実現できるように筋道を立ててくれる開発パートナーです。

貴重なお話しをありがとうございました。
取材2025年10月
アールスリーでは、本案件のようなkintoneアプリの開発や内製化に繋がる構築支援サービスをメニュー化し、2024年4月に「キミノマホロ for kintone」としてリリースいたしました。作業内容やメニューごとの価格体系を載せていますのでぜひホームページでご覧ください。