株式会社エスプランニング様 事例紹介

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相次ぐ業界ルールの変化にも揺るがない。お客様と向き合う時間を支える保険代理店の業務基盤

株式会社エスプランニング
業務部長/システム管理者 谷口 敬彦 様

株式会社エスプランニングは、岡山県岡山市を拠点に法人向けの損害保険を中心とした保険代理店事業を展開しています。法人顧客の経営リスクに寄り添った提案を強みとし、生命保険や個人向け保険なども含め、幅広い保険商品を扱っています。

2019年に同社に入社した谷口敬彦氏は、当時の業務のあり方に課題意識を持ったといいます。営業担当者がそれぞれ手帳や個人管理で情報を抱え、会社として顧客対応の履歴を把握できていない状態でした。このままでは組織としての対応力が高まらない。そう感じたことが、業務の見直しへとつながりました。

2021年、業務の属人化を解消し、情報を会社の資産として蓄積するために、kintoneとgusuku Customine(以下、カスタマイン)を導入しました。その後、保険業界を取り巻く環境は大きく変化し、金融庁や保険会社から求められるガイドラインやルールは年々細分化しています。しかし同社では、あらかじめ業務基盤を整えていたことで、こうした業界の変化にも慌てることなく対応できています。
今回はその取り組みについて、株式会社エスプランニング 業務部長 兼 システム管理者の谷口敬彦氏にお話を伺いました。

課題:個人の手帳に閉じた顧客情報、紙を探す営業現場

谷口氏が入社した当時、営業活動や顧客対応に関する情報は、個々の営業担当者の手帳や紙の書類によって管理されていました。「営業が外出先から戻ると、ファイルから必要な書類を数枚取り出し、またすぐに外出していく。正直、衝撃を受けましたね」と谷口氏は当時を振り返ります。

顧客情報や対応履歴は紙で保管され、必要な情報を探すにも時間がかかる状況でした。こうした管理体制のもとでは、顧客から問い合わせがあった際に、誰がいつ訪問予定なのか、どのような話をしていたのかをすぐに確認できない場面もあります。営業担当者が不在の場合には対応が滞り、顧客を待たせてしまうことも少なくありませんでした。

一方で、保険業界向けの専用システムも導入されていましたが、現場ではほとんど活用されていませんでした。業界特有の業務に対応した機能は備えていたものの、実際の業務フローとは合わない部分も多く、入力や運用の負担が大きかったといいます。その結果、情報管理は引き続き紙や個人管理に頼る状態が続いていました。

こうした状況を目の当たりにした谷口氏は、情報が担当者個人にひもづいたまま管理されていることが、組織としての顧客対応力を高めるうえでの大きな壁だと考えました。前職でデジタルを前提とした業務環境を経験していたこともあり、紙中心の業務との間にはギャップがありました。手間がかかるだけでなく、今後の事業運営を考えれば、このままではいずれ限界が訪れると感じていました。

導入:危機感から始まった、自分たちで変えられる仕組みづくり

こうした課題を前に谷口氏の中で強まっていったのが、「このままでは会社として立ち行かなくなるのではないか」という危機感でした。営業担当者それぞれの能力や経験に頼った状態では、顧客対応の質を安定させることも、組織として成長していくことも難しいと感じていました。

この状況を踏まえて谷口氏は、完成された仕組みをそのまま当てはめるだけでは活用されないと判断。そこで重視したのが、営業活動や顧客対応に関する情報を一元管理できることに加え、自社の業務に合わせて柔軟に変えられる仕組みでした。個人にひもづいた情報管理を改め、誰が見ても状況を把握できる状態を、無理なくつくれることが欠かせないと考えました。
その選択肢として思い浮かんだのが、前職で知ったkintoneでした。

入社から数か月後、コロナ禍により外出を伴う営業活動が制限されました。谷口氏はこの時間を活用してkintoneを試用し、自社の業務で「何を実現したいのか」を整理していきました。試行錯誤を重ねる中で、kintoneの基本機能だけでは実現が難しい場面も見えてきました。

そこで、プラグインや拡張ツールを含めて検討を進める中で、カスタマインの存在を知りました。特定の機能に縛られず、さまざまな要件に柔軟に対応できる点に魅力を感じたといいます。

実際にkintoneとカスタマインをあわせた費用を試算すると、業界向け専用システムと比べてコストを抑えられることもわかりました。やりたいことと費用感、その両方が現実的なラインで重なりました。
「当時、どんな機能が必要になるか、完全には見えていなかったんです。プラグインを追加するたびに社長に説明して稟議を通すのは現実的じゃないですし、それなら、いろいろな機能を実現できる選択肢のほうがいいと思って、カスタマインにしたんです」

こうしてkintoneとカスタマインを同時に導入。業務に合わせたアプリの作成・活用が、少しずつ動き出しました。

活用:顧客マスタを起点に全体を見渡す業務基盤で、業界ルールを漏れなく支える

全体を見渡せる「顧客マスタアプリ」と、業界ルールに対応した「対応記録アプリ」

kintoneとカスタマインを活用した業務の中核となっているのが、顧客マスタアプリです。契約情報や対応履歴、案件一覧、高齢者対応や解約記録などは別アプリで管理しつつ、顧客マスタを起点に、顧客単位ですべてを確認できる形にしています。画面はタブで分け、関連レコードをまとめて表示することで、必要な情報をすぐに把握できるようにしています。

顧客マスタの画面には「対応履歴を残す」ボタンを配置しており、そこから対応記録アプリへ遷移し入力できるようにしています。顧客情報は引き継がれるように設定しているため、担当者は対応履歴の記録に集中できます。入力の手間をできるだけ減らすための工夫です。

対応記録では、保険業界ならではのルールにも対応しています。たとえば高齢者対応では、同じ説明を複数回行ったか、家族への説明を行ったかといった内容を記録する必要があります。解約時には、解約によって生じる不利益について十分に説明したかを残さなければなりません。こうした項目も、対応記録の中で漏れなく入力できるように設計されています。

また、選択内容に応じて次の選択肢が切り替わるカスタマイズを実装しています。目的に「アフターフォロー」を選択すると、「事故対応」「入金管理」の選択肢が表示されます。一方で、「商談」を選択すると、「更改」「変更」「新規」などが表示される仕組みです。入力しやすさを重視した設計になっています。

テキスト入力が必要な「対応記録」については、テンプレートを使用できるようにしています。保険更改や事故対応など、対応内容によって記録すべき項目が異なり、自由入力形式では記録漏れや内容のばらつきが生じやすいためです。
テンプレートはカスタマインの「レコードの一覧をポップアップで表示する」機能を使って呼び出す仕組みとしており、基本となる項目や説明内容をあらかじめ用意しています。
担当者が「テンプレートを使う」ボタンを押すとテンプレートの一覧がポップアップで表示され、対応内容にあったものを選択すると対応記録に内容が自動で入力されます。
また、基本テンプレートに加えて、担当者ごとのテンプレートも作成できるようにしています。対応シーンや担当者に応じてテンプレートを使い分けられるため、それぞれの業務スタイルに合わせて記録できます。

加えて、対応記録には「下書き」チェックを設けており、下書きの状態では高齢者対応や案件管理といった他のアプリに連携されないようにしています。一定期間下書きのままの場合はユーザーに通知が届く仕組みで、記録漏れを防いでいます

確定した対応記録は、Job Runnerの定期実行で自動的に必要な各アプリへと反映されます。顧客マスタ、高齢者対応の管理アプリ、契約管理アプリ、そして新規案件が発生している場合には案件管理アプリと連携されます。入力は一度で済ませつつ、必要な情報が各アプリに整理される運用を実現しています。

更新状況がひと目でわかり、対応漏れを防ぐ「契約管理アプリ」

顧客対応の記録に加えて、契約の更新状況を管理するための「契約管理アプリ」でもカスタマインが活躍しています。すでに契約している内容を一覧で管理し、更新状況や対応の有無がひと目でわかるようにしています。

一覧画面で、期限を過ぎている契約は赤字で表示、対応済みの契約については背景色が青色で表示されるなど、状況を直感的に把握できる工夫を行いました。また、更新状況に関する対応記録がない契約については、担当者に通知が飛ぶ仕組みにすることで対応漏れを防いでいます。

対応記録と契約管理を連携させることで、顧客対応の履歴と契約の進捗をセットで確認できるようになり、日々の業務がよりスムーズに回るようになっています。

さらに同社では、契約管理に関連する日々の事務作業にも自動化を広げています。
保険契約に関する業務では、契約を保険会社側のシステムに登録する計上処理を行うことで手続きが完了します。営業が書類を持ち帰り、その後、クラークと呼ばれる事務担当者が計上処理を行う流れです。
計上後は、契約管理アプリの計上状況を「計上済み」に変更します。自動化する前は、その日に計上した契約を一件ずつ確認し、手作業でステータスを更新していました。この作業は一日の終わりに行うことが多く、件数が多い日には時間に追われながら対応することも多いため、更新漏れへの不安もあって心理的な負担になりやすい業務でした。

そこで同社では、Job Runnerを活用しました。保険会社側のシステムから計上済みの契約リストをCSVで出力し、kintoneに取り込みます。そのデータを契約管理アプリと突き合わせる仕組みを構築しました。計上が確認できた契約は、ステータスが自動で「計上済み」へ更新されます。

忙しいタイミングほどミスが起きやすい業務だからこそ、自動化できる部分は自動化する。こうした積み重ねが、現場の負担軽減につながっています。

効果:業界の変化に追われない体制が生む、お客様と向き合う時間

こうした仕組みを整えたことで、同社では顧客対応の情報を「残すこと」「共有すること」が当たり前の業務になりました。対応記録がきちんと残り、誰でも確認できる状態へと変わっています。谷口氏が当初から思い描いていた姿が、現実のものになりつつあります。

実際、金融庁や保険会社から求められる内容は、谷口氏が「こうしたほうがいいだろう」と考えてきた内容と一致していきました。対応履歴の管理や説明記録の整備など、業界全体で求められる水準が高まっています。
「自分では効率が上がると思って取り組んできたことでしたが、気がつけば金融庁や保険会社が求める内容とも重なるようになってきて。このやり方でよかったんだなと感じました」

結果として、新たなルールが発表されるたびに慌てることはなくなりました。kintoneとカスタマインによって、自分たちで業務の仕組みを調整できるため、必要な項目の追加や運用変更もスピーディに行えます。ルール改定に振り回されることなく、落ち着いて顧客対応にリソースを割けるようになりました。

こうした取り組みは、社内だけでなく、同業他社からも評価されるようになりました。保険会社が行う業務体制の確認の場で関心を持たれたり、他の代理店から「どうやって管理しているのか」と興味を持たれたりすることもありました。体制が整ったことで、保険会社とのやり取りもよりスムーズになり、信頼関係の強化にもつながっています。

「もし当時、業務改善に着手していなければ、仕事は回っていたかもしれませんが、大きな苦労を抱えながら変化に追われていたはずです。これから体制を整えなければならない代理店も多く、安心して事業を続けていくためには、早めに基盤をつくっておくことの大切さを実感しています」
変化の多い業界だからこそ、柔軟に対応できる体制を持っていることが、事業を長く続けていく力になります。制度やルール変更に伴う対応業務に振り回されるのではなく、目の前のお客様に向き合う時間を守れる。その状態こそが、同社にとっての大きな価値になっています。

今後の展望:整えた仕組みで、同業の代理店が気軽に扉を叩ける存在へ

今後について谷口氏は、社内の業務改善にとどまらず、同業の代理店との関わりにも目を向けています。保険代理店業界では、独立して事業を続けていくことに難しさを感じている代理店も少なくありません。そうした代理店にとって気軽に相談できる存在でありたい。それが、業界全体の信頼性を高めることにもつながると考えています。
「kintoneとカスタマインによる業務の基盤は、まだシステム対応が進んでいない代理店にとっても、参考にしてもらえる部分があると思っています。問い合わせを受けた際には、自社の取り組みを共有しながら、少しでも力になれたらと」

社内に目を向けると、すでにkintoneは日々の業務に欠かせない存在となっています。今後はその活用範囲をさらに広げ、顧客向けのマイページ構想や、人事評価など営業以外の領域にも展開していく考えです。

kintoneとカスタマインがあるからこそ、業界の変化に振り回されることなく、目の前のお客様に向き合う余裕が生まれました。
自分たちのやり方を少しずつ磨き、その積み重ねが業界全体の信頼を高めていく。そんな未来を描きながら、エスプランニングの挑戦はこれからも続いていきます。

取材2026年1月