相互電業株式会社様 事例紹介

ITアレルギーの社員たちにkintoneを使ってもらうために「入力のしやすさ」を追求

相互電業株式会社
管理部 部長 宮武 智志 様
管理部 今野 愛菜 様

 相互電業株式会社は北海道帯広市にある電気工事を行っている会社です。今年で創業65年目となり、現在の従業員は30人ほど。官庁工事から法人、個人の工事まで幅広く手がけています。

 工事会社のあるあるですが、各個人によるExcelの乱立が課題になっていました。また、システム化の波に乗ろうと、ワークフローシステムや営業支援サービスも高いコストをかけて導入していましたが、非効率な運用をしていたこともあり、社内運用が進まないという課題もありました。

 しっかりしたシステムを構築しないと、今後業務の効率化ができないと考え、利用しているサービスのリプレースを検討したそうです。そこで選んだのがkintone。そして、現場の入力の手間を減らし、管理業務を効率化するために「gusuku Customine」を導入しました。

 今回は、相互電業今野愛菜氏と宮武智志氏にITシステムを使うのに消極的な業界にkintoneを浸透させ、大きな業務効率改善を成功させた経緯についてお話を伺いました。

管理部 部長 宮武智志氏と今野愛菜氏

課題■システム導入に失敗して従業員が拒絶反応を示すようになった

 kintoneを導入したのは2018年の秋ごろ。それ以前も、業務を管理するシステムは使っていました。ワークフローや営業支援サービスを契約していたのですが、まともに運用できていなかったそうです。ワークフローでは同じ情報の二重入力が当たり前のように発生し、営業支援サービスにいたっては、社員たちがまったく使ってくれなかったそうです。

 結局、工事関係の帳票はほとんどExcelで管理していたのです。工事に関する書類もおのおのがExcelやWordで作っていました。案件管理は会議の時に口頭で話し、後で議事録にします。各業務が超属人化しており、顧客から問い合わせが来ても、本人でなければ対応できない状況でした。何とか情報を共有できていたのは、受注した顧客と金額などを管理するExcelだけだったそうです。

 情報が共有されず、業務が属人化しているので、工事はしたのに請求を出しておらず、お金をもらえなかったということまでも発生しました。これはいけません。宮武氏は社長に「業務効率化をするならしっかりしたシステムを作る必要がある」と説明し、今野氏と共に新しいシステムの検討を始めました。

大量の紙を使用していた従来の運用

「kintoneは誰でもシステムを作れ、業務改善ができます。見つけた時にはこれだ、とテンションが上がりました」と今野氏。

 早速導入し、よく使う精算請求業務をkintoneアプリ化しました。工事が終わると、請求書を出すのですが、その際に精算書も作成します。従来はこの書類を別々に作っていたので、kintoneアプリでまとめて管理できるようにしました。

 この際、ITシステムアレルギーの従業員に使ってもらうために、ラベル機能で入力する順番や項目名をわかりやすく表示しました。「わかりにくい」「使いにくい」という声が寄せられればすぐに改修したのですが、そのこと自体も「自分の意見が反映された」と喜んでもらえたそうです。

 今野氏はkintoneの操作説明会を何度も開き、特に苦手そうな人には丁寧に説明しました。それ以外でも、声をかけてくれた人には、教えに行っていたそうです。

今野氏が社員にkintoneの使い方をレクチャーしている様子

 次は、日報アプリに着手しました。元々Excelで運用していたもので、約10年間使い続けています。日報と言っても、一般的な「今日はこの業務をしました」というような日記的なものではありません。「A工事」に何時間、「B工事」に何時間、「事務作業」に何時間と個別の業務ごとに時間を細かく記録する必要があるのです。

 工事ごとに時間を集計するのですが、昔から受け継がれた秘伝のExcelには関数がてんこ盛りです。特に、IF関数は理解できないほど何重にも使っています。現場からは改善の要望が上がっていたのですが、手直しできない状況だったそうです。

 そこでkintoneアプリ化しました。特に、工事名の表記が揺れていて集計に苦労していた点をなんとかしたかったそうです。全角/半角カタカナや株式会社を(株)と書いたり、特殊記号を使ったりとバラバラでした。

 アプリは完成したのですが、現場からは多数の項目を入力するのが面倒臭い、と言われてしまいました。システムに不慣れな現場担当者にとっては、未知のツールを使用するだけでも心理的なハードルが高く、また必要な情報を蓄積しようと思うと入力項目が増えて煩雑となり使い勝手が悪かったのです。

導入■徹底的に入力しやすいようにカスタマイズすることで業務効率をアップ

 宮武氏は2019年5月には「gusuku Customine」のフリープランを申し込んでいたのですが、当時は使いこなせませんでした。今野氏に「興味ある?これすごいよ?」と紹介したのですが、最初は設定画面を見ても理解できず、放置していたそうです。しかし、今野氏がkintone仲間から「gusuku Customine」はスゴイよ~と聞かされ、セミナーに参加したり、カスタマイズ集や事例を見たりして理解を深めました。そして、2021年2月に正式導入し、アプリを使いやすくするためのカスタマイズにチャレンジすることになりました。

 日報では、作業の種別ごとに異なるテーブルに時間を入力する必要があるのですが、その数が多くて入力に戸惑っていました。そこで、手がけた業務のチェックボックスをオンにすることで、その担当者にとって不要なテーブルを非表示にするようにしたのです。必要なテーブルだけが表示されるので、スムーズに入力できるようになりました。

 kintoneの標準画面ではどのレコードが未入力なのかがわからないと言うので、未入力やエラーが出ているレコードに色を付けて、一目で発見、対応できるようにしました。さらに、テーブルの詳細も原価集計時に確認したいというニーズがあったので、一覧画面で表示できるようにしました。

 日報の入力時間は大幅に減り、1人当たりの入力時間で年間約20時間、集計時間も合わせると全社で550時間もの削減となり、人件費の大幅削減を実現できたのです。さらに、集計作業も自動で行われるようになり、集計の手間もゼロになりました。

「入力する日報のレコードは、gusuku Customineの機能「Job Runner」でシフトアプリを参照して自動的に作成するようにし、現場の担当者は必要な項目だけを簡易に入力すれば良いようにしました。とにかく現場が入力する手間を少しでも省けるように工夫しています」(今野氏)

日報アプリ

 次に作ったのが工事の進捗を管理する「案件工事」アプリです。kintone化を進めた結果、工事に付随する「契約書」や「材料発注」「職人外注」「請求」「精算」といったアプリがたくさん作られることになりました。データをつなぐためにアクションボタンを設置したのですが、数が多く、操作に迷ってしまうようになったのです。

 工事情報が増えてくると、フィールドが増え、入力したい項目をスクロールして見つけるのが大変とか、一覧画面で見たいレコードが見つけられない、といった課題も出てきました。原価管理で100万円以上の工事は別の番号を振って管理したいのですが、kintoneの標準機能では対応できないのでExcelに転記して採番するという本末転倒な作業まで発生しました。

 そこで「gusuku Customine」で徹底的にカスタマイズしました。ステータスに合わせて必要なアクションボタンのみを表示し、条件付き自動採番によりExcelへの転記をなくしました。一覧画面に検索フィールドを設置し、欲しい情報をすぐに検索できます。タブも設置し、スクロールしなくてもフィールドも探しやすくなっています。

 誰でも使いやすくすることで、ITが苦手な年配の方でも自分で操作するようになりました。課題だった請求漏れもゼロになっています。また、従来は経営会議を開いても、ほとんどの時間を案件の報告に費やしていたそうです。しかし、「案件工事」アプリに案件が登録されることで、会議での報告時間は1時間から20分に削減、全参加者の時間を合わせると年間192時間もの削減なりました。その分、経営の話に時間を費やせるようになりました。

アクションボタンが乱立した案件工事アプリ

「gusuku Customine」を導入することで、ワークフローと営業支援システムは両方とも解約できたそうです。また、必要に応じてkintoneに追加してきた無料のプラグインも、可能な限り「gusuku Customine」に集約しました。

 今野氏にkintoneの活用で悩んでいる方に向けてアドバイスをいただきました。

「今では社内から出てきたアイデアに対し、「gusuku Customine」だったらもっとこんなこともできますよ! と、素敵なアイデアの選択肢を広げられるようになりました。以前の「使ってもらえない」という状態から、こんな風にすれば使いやすくなる、というポジティブな議論ができるようになって本当に嬉しいです。最初は抵抗があるかもしれませんが、事例集などを参考に実際に触ってみると意外と簡単です。是非、まずは1つカスタマイズしてみるといいと思います」(今野氏)

 最後に今後の展望を伺いました。

「日報アプリにはレコード編集ボタンから工事マスタへ新規登録できるようにしたいです。小さい工事だと1日10件入ることもあり、入力の手間を改善する予定です。案件工事アプリには、Googleマップを表示しようと目論んでいます」(今野氏)

「最終的に材料を発注するところからkintone化し、そこから紐付いて在庫に繋がる部分まで網羅できれば便利だと考えています。今後チャレンジしていくつもりですが、そこにも「gusuku Customine」が活躍してくれるのかな、と思っています」と宮武氏は締めてくれました。

 貴重なお話をありがとうございました。

取材 2021年9月