クオリカ株式会社様 事例紹介

小さくはじめたkintoneビジネスが全社の重要なビジネスへ成長

クオリカ株式会社
インダストリービジネス事業部
インダストリービジネス3部 主査 村越 晃一 様
インダストリービジネス営業部 主任 三田 稔久 様

クオリカ株式会社は、製造業を中心とした企業の課題をシステムで解決することを強みとした、TISインテックグループの中核を担う企業の1つです。産業系に強く、グループ内でハードウェアの製造を行っているのはクオリカ社のみということもあり、唯一無二の存在となっています。

世界的建設・鉱山機械メーカー、コマツ(株式会社 小松製作所)のIT部門から生まれ、1982年に独立しています。その後もコマツをはじめとした製造業を中心に企業をITで支援し、現場力・技術力を培ってきました。

以来、製造業だけでなく、小売業・外食業・サービス業など幅広い業種に対応する様々なサービス・ソリューションを扱っています。

自社導入から始まったkintoneビジネスの立ち上げから携わり、全社の課題を解決する重要なビジネスへと成長させていったインダストリービジネス事業部の村越晃一氏、三田稔久氏。お2人に、kintoneビジネスの成長とgusuku Customine(以下、カスタマイン)の効果について、お話を伺いました。

自社用SFAのためkintoneを導入、社内で高評価だった

2015年頃、グループで使用していた基幹システムの使用をやめることが決まりました。それだけでなく、同時期に営業力の向上が重要視されていたので、営業担当者の事務作業の負担軽減が必要でした。

当時本社(財務)での勤務でありながら、営業経験のあった三田氏は、

「基幹システムが使えなくなるだけでなく、営業の事務作業を減らさなければならないので、何か活用できるシステムはないかと様々なシステムを検討した結果、kintoneでできるのではないか?と考え、全社SFAとして挑戦することにしました」と当時を振り返ります。

エンジニア経験のない三田氏ですが、kintoneで作成したSFAはとても使いやすいと社内で高評価でした。自社でこんなに好評ならば、顧客の課題解決にもこういったニーズがあってkintoneが活用できるのではないか、とのことで再び営業に戻り、2017年よりたった1人でkintoneビジネスをスタートさせました。

当初は社内で懐疑的だったkintoneビジネス

三田氏1人でスタートしたkintoneビジネスですが、最初は上手くいきませんでした。ノウハウがないため販売に繋がらないだけでなく、社内からの反発もありました。kintoneでスピーディにシステムができ上がってしまうことで、工数が圧縮されてしまい利益が下がってしまうのではないか、と社内で懐疑的な声が多く挙がりました。

「kintoneは顧客の課題解決に活用できる」と信じていた三田氏は、社内に1人でkintoneの価値を熱心に伝え続けていました。そんな努力の甲斐あって、転機が訪れます。kintoneの開発元であるサイボウズ株式会社の協力もあり、大きな案件を受注しました。

同時期に、別の業務で長期の常駐プロジェクトにアサインされていた村越氏が戻ってきました。

「常駐から戻ってきて、プログラムをガッツリ書くことを希望していなかった私は、エンジニアがいなくて困っていた三田さんに声をかけて、kintoneをやることにしました。これが2018年後半のことでした」と村越氏は振り返ります。

エンジニアである村越氏が加わったことで、SI案件も受注できる体制となっていきました。

三田氏、村越氏の2人でサイボウズ社より紹介のあった案件を進めていったところ、提案から受注までスムーズに進み、案件は成功しました。当初は懐疑的だった社内でも、kintoneビジネスが成り立つということが理解されたことから、バックアップ体制も整いkintoneビジネスに携わる人数も増えていくことになります。

カスタマインの活用で、拡大していくkintoneビジネス

2人がカスタマインを知ったのは、2018年のリリース発表会でした。

「開発者向けのツールを提供するんだと思って行ったのですが、ユーザーに販売するサービスと知って意外に思いました。その時はこれを自分たちが使って、ビジネスをやっていくイメージが掴めませんでしたね」(三田氏)

「発表会後、カスタマインを触ってみて色々できることがすぐにわかりました。ですが、三田さんと同じくビジネスに使うこととは結びつきませんでした」(村越氏)

しばらくカスタマインを使う機会はなかったのですが、こちらもある案件が転機となりました。kintoneのカスタマイズの要望が多く、スピード感のある開発が求められる案件がありました。

「お客様から要件が出てきたら、すぐにプロトタイプを作って見せて、すぐにテスト運用ということを繰り返し、アジャイル開発で進める必要がありました。しかし、高い開発スピードが求められ、カスタマイズ部分のコードを書いていたら間に合いませんでした。また、コードを書けるメンバーも限られているので、リソースを確保できないという問題もありました。悩んでいた時に、色々できるカスタマインのことを思い出して、使ってみることにしました。これが想像以上に上手くいったんです」(村越氏)

このように、カスタマインを活用することで、コードを書いていたら間に合わないという問題が解決でき、案件は大成功となりました。

この案件から、kintoneだけでなくカスタマインも一緒に活用した案件が成立すると感じ、新しいビジネスモデルが誕生しました。

カスタマインの課題を解決し、メリットを最大限活用していく

カスタマインを活用するメリットは、コードを書くより早く顧客の要望に応えられるという開発フェーズにおけるメリットだけではありませんでした。

提案フェーズでもカスタマインは大活躍します。顧客から要件をヒアリングしたら、すぐ目の前で作って見せることができます。提案の段階で要望を叶えて見せることができるのは、受注の確率を高められるという点で大きなアドバンテージになります。

また、提案から開発までスピード感を持って進められるので、顧客の満足度も高くなります。顧客との長く良好な関係を築く大きなキッカケになっています。

さらに、kintoneのカスタマイズをほとんどノーコードで実現できるため、経験の浅いエンジニアでもカスタマイズに携わることができ、エンジニアリソースを確保しやすくなっていることも大きなメリットといえます。

カスタマインを使い始めてからここに至るまで、いくつか課題もありました。

ひとつは顧客に提出する設計書の問題です。カスタマインを使い始めた当初は、設定内容を全てExcelに転記するなどして対応していましたが、時間も手間もかかりました。今はカスタマインの機能で「カスタマイズの設定をドキュメントとして書き出す」ことができるようになり、設定内容を全て含んだExcelをボタン1つで出力できるため、この課題は解決しています。

また、社内ガイドラインへの対応の課題もありました。同社では、コード〇行につき△回テストをする必要がある、といった品質保持のための社内ガイドラインがあります。このガイドラインは、コードを書いた開発を前提としていたため、ノーコードでカスタマイズした場合にテストをどうするか、定められていませんでした。しかし、村越氏が社内に働きかけ、現在はカスタマインの利用も考慮した新たなルールを設けることで解決しています。

このように課題を解決しながら、三田氏と村越氏を中心にkintoneとカスタマインの活用は現在も拡大していっています。kintoneビジネスに携わる人数も増え、2人体制だったところから現在は三田氏を筆頭に営業は5名、村越氏をはじめとした開発チームは10名程になりました。

今後の展望

同社では現在、kintoneビジネスが1つの柱となりつつあります。特に全社で課題となっていた顧客の新規開拓にkintoneが有用だ、という点は経営層にまで浸透しています。

ここまでビジネスを成長させてきた三田氏、村越氏にそれぞれ今後の展望を伺いました。

「クオリカのkintoneといえばコレだよね、というモノを確立できればと考えています。そして、kintoneをクオリカの収益の中核を担うビジネスに、より一層成長させていきたいですね。また、グループ内でもkintoneといえばクオリカ、と認知されるようにしていきたいです。kintoneのみならず他のソリューションも含めて、多くのお客様の課題解決に繋がる提案をし続けたいですね」(三田氏)

「技術面でいうと、kintoneと連携できるシステムの幅を広げていきたいです。データを繋いで他のシステムと連携する技術を高めていくことで、より多くの業種・企業をITで支援できるのではないかと考えています。お客様に寄り添いながら、要件定義から立ち上げ、運用までトータルサービスで支援していきます。開発のみの支援、伴走支援など、お客様の希望に沿っていきたいです」(村越氏)

ノーコードで変化していく人材育成

同社では、kintoneのカスタマイズはカスタマインを活用して、ほとんどノーコードで行っています。

しかし、村越氏が今後の展望に挙げているように、外部システムにデータ連携する際にはコードを書いて対応しています。

また、複数アプリで共通処理がある場合のカスタマイズもコードを書いて対応しています。過去にはカスタマインでやっていたこともあったのですが、1つ設定を変えると全てのカスタマイズを修正する必要があり手間がかかるためです。

このように一部コードを書く場合もありますが、コードを書く部分が減っていくことで、人材育成の面にも変化が出てきています。

以前はコードを書く技術を習得することに時間をとられてしまっていたのですが、kintoneとカスタマインでノーコードでできる範囲が広がることで、コードを習得する必要がなくなり、他の面を伸ばすことに注力できています。

新卒を含めた若手社員も多くいる同社では、お客様への提案の仕方やユーザーとのコミュニケーション能力を伸ばしていくことを重視しています。

このような人間力を伸ばしていくことで、この先の数十年間といった未来を活躍できる人材になっていくと考えています。

技術と人間力をバランス良く向上させていくことで、今後も顧客に寄り添い、多くの企業の課題をITを使って解決していくことを提案し続けます。

取材日2024年1月