公開日:2024-10-03
案件管理ツールをkintoneに一元化。年16,080時間の削減など効果多数。 プロと一緒にアプリをつくる「内製化支援」が成功の鍵。
司法書士法人NCP
業務推進企画室 室長 山下 菜摘 様
総務部 次長 酒井 裕一 様
業務推進企画室 西村 遥菜 様
業務推進企画室 佐藤 舞子 様
2024年7月に行われたkintone hive Tokyoに登壇されました!
その時のレポートが公開されていますので、こちらもご覧ください。
ASCII.jp:Zoomを使わず「全国行脚」 振り返ればこれがkintone浸透の鍵だった (1/2)
kintoneユーザーによる事例・ノウハウの共有イベント「kintone hive 2024 Tokyo」が開催された。本記事では、6番手として登壇した司法書士法人NCPのプレゼン、「kintoneで全国行脚の旅」をレポートする。
司法書士法人NCPは相続手続きにおいて累計8万9,000件の実績を持つ会社です。拠点は全国23ヶ所にあり100名以上の有資格者が在籍しています。同社では年間2万件ほどの相続手続きを受託進行しますが、その案件管理をスムーズに行うためのシステムをkintoneで構築されました。システム構築にあたってアールスリーによる内製化支援を利用され、狙い通りのアプリが完成するとともに大きな業務改善効果を得たといいます。今回は、本開発を推進された皆様に、開発の経緯と導入効果、アールスリーによる内製化支援への感想についてうかがいました。
もくじ
- 顧客管理と請求書作成ソフトがバラバラのため転記ミスが多発
- 以前構築を依頼した会社に「納品」してもらったkintoneアプリは業務にフィットせず使えなかった
- 会社で悩んでいることは全てkintoneが解決してくれそうだった
- アプリをプロと一緒に作る「開発と内製化支援」に、こころ踊る
- 案件管理の全工程がkintoneに一元化され、作業時間は年16,080時間も減少
- アールスリーは、困ったとき、助けが必要なときに必ず支えてくれる伴走者であり、社外相談役
- kintoneの開発を通じて、わずか1年で業務効率化のための最強チームが誕生
- kintoneの内製化が一気に進み、さらなる業務効率化が可能に
1.顧客管理と請求書作成ソフトがバラバラのため転記ミスが多発
Q:はじめに、kintone導入前の課題について教えてください。
業務推進企画室 山下様
業務推進企画室を立ち上げる前、私は司法書士のアシスタントとして案件進行や請求書の作成に携わっていました。当社では年間約2万件の相続手続きを受任します。この案件管理をExcelで行っていたころは、同時編集ができないのでファイルを開いている他拠点に電話をかけて閉じるよう依頼していました。その後、案件管理ソフトの楽楽販売が導入されましたが、業務内容にフィットしていませんでした。
また請求書の作成には司法書士業務向けのサムポローニアを使っていました。売上データを集計するためのCSVダウンロードには1回8時間も必要でした。そのため、夜に売上のダウンロード設定を行い、出勤直後にデータ取得が成功していることを確認してほっとしていました。これはストレスでした。この業界特化型のソフトは楽楽販売と連携できなかったので、請求書をおこす時に楽楽販売からの情報転記が必要になり、入力ミスが発生しました。入金確認処理についても、楽楽販売とサムポローニアの両方に結果の登録が必要なので二度手間でした。私は入力ミスを起こしやすいタイプだったこともあり「案件管理と請求書のシステムを連携させて、情報を一元化すればミスはしないのに!」と不満でした。
2.以前構築を依頼した会社に「納品」してもらったkintoneアプリは業務にフィットせず使えなかった
Q:2021年にkintoneを使い始めたそうですが、当時のアプリには課題があったそうですね。それについて詳しく教えてください。
総務部 酒井様
以前の総務では、人事・ソフトの導入・スリッパの購入など、何でも担当していたので、色々な仕事が「ながら仕事」になりがちでソフトについて熟考したり業者さんとしっかりとやり取りをする余裕はありませんでした。その中で2021年に総務部では「kintoneの顧客管理・勤怠アプリ」の構築をある開発業者さんに依頼しました。ところがアプリ納品のタイミングで前任者が退職することになり、仕様を詳しく聞けないままプロジェクトを引き継ぎました。そのkintoneアプリを使ってみたところ、業務にフィットしていないことが分かりました。開発業者さんに相談してみましたが納品後のため修正はサービス外とのことでした。当時の私たちにはアプリの仕様がわからないのでうまく修正できず、kintoneの内製スキルもなかったのでその顧客管理アプリは使われないままとなりました。費用をかけて開発したのに、もったいないことでした。
3.会社で悩んでいることは全てkintoneが解決してくれそうだった
Q:「納品」されたkintoneアプリの使用を断念した後に、再びkintoneアプリの開発にチャレンジすることになったきっかけを教えてください。
山下様
kintoneアプリへの再チャレンジは2022年開催のサイボウズのクラウドサービス総合イベントCybozu Daysに参加したことから始まりました。顧客管理と請求書作成を1つのツールにまとめるアイデアを探そうと、総務の酒井さんと2人で参加しました。セミナーを聞いたり色々なブースを回った結果、会社で悩んでいることは全てkintoneで解決できそうに思いました。
私は効率が悪いことが嫌いです。kintoneを活用すればもっと早く帰れたり、残業が減ったり、夜にCSVダウンロードをセットして帰る必要もなくなるはず。kintoneで皆の労働環境を良くしたい!そこで私はCybozu Daysでの情報収集の結果を踏まえて2点、代表に進言しました。
- 既に契約のあるkintoneをうまく活用できていないのはもったいない。
- 会社の業務効率化のためにkintoneの活用を促進する仕事がしたい。
この提案の結果、私は新設された業務推進企画室に配属されて、たった1人の室長として会社のDXを担当することになりました。kintoneと向き合う1年の始まりでした。
4.アプリをプロと一緒に作る「内製化支援」に、こころ踊る
Q:業務効率化を会社に提案されて、業務推進企画室に抜擢されたのですね。素晴らしいですね!そんな素敵なプロジェクトの開発パートナーとしてアールスリーを選んでくださった経緯を教えてください。
山下様
アールスリーとの出会いはCybozu Daysでした。当社には「委任状」や「請求書」など独自フォーマットの形で利用したい書類がいくつもあります。自社特有の帳票をkintoneから出力させる手段が無いかとCybozu Daysで情報収集をしていたところアールスリーの「ノーコードでkintoneをカスタマイズできるgusuku Customine」の帳票作成機能が目に止まりました。
私たちはアールスリーに、案件管理を複数のシステムを併用して行っているがいずれkintone1つにまとめたいこと、kintoneアプリの内製化を実現したいことを相談しました。するとアールスリーの和田さんは、私たちの希望は実現できること、アールスリーに依頼する場合は「納品」ではなく「プロと一緒にアプリを作るスタイル」での内製化支援になることを説明してくれました。それまで私たちはアプリやシステムは「完成品が納品されるもの」と考えていましたが、「プロと一緒にアプリを作る進め方」があると知りとてもワクワクしました。そしてこの方法なら内製化も目指せそうに思いました。
また打ち合わせではアールスリーは私たちの事情をしっかりと理解しようとしてくれました。アプリに関する説明も非常に分かりやすく、これまでに経験したどのシステムの打ち合わせよりも内容を理解できました。打ち合わせが楽しく実りある時間だったことはアールスリーに依頼をする決め手になりました。
5.案件管理の全工程がkintoneに一元化され、作業時間は年16,080時間も減少
Q:アールスリーと一緒に作った案件管理アプリの紹介と、それぞれの機能の導入効果を教えてください。
山下様
新アプリでは、案件管理に関する一連の流れ「面談予約〜案件内容の登録〜進捗登録〜請求書発行〜入金確認」がkintone1つで可能になりました。企画の狙い通り、登録されたお客様情報は後の工程でもずっと引用できるので、入力の手間は大幅に減り、アプリ間の転記ミスもなくなりました。アプリの各機能とそれぞれの効果は以下の通りです。
1 面談情報登録に要する作業量が半減
「面談チェックシート」という面談訪問時に必要となるお客様情報や面談日を入力します。相談内容(不動産の名義変更・株式・遺言など)をチェック項目から選んだり、マスタ情報から紹介企業を引用したりできるようになっており、手入力を減らせるよう工夫が施されています。またお客様と故人様との相関図を手書きで記入できる機能や、スケジュールツールにご相談内容を簡単に転記できる機能、お客様宅のGoogleマップを表示させる機能なども有しています。この効果で面談情報の登録に関する作業時間は半減しました。
2 独自のExcelフォーマットにお客様情報を自動で反映&出力可能に
アプリに登録されたお客様の情報は、色々なオリジナルの帳票(Excel)にボタン一つでアウトプットできます。例えば「承り書」はお客様の基本情報や遺産を手続きする金融機関名、不動産の場所などを記入する書類です。資格者はお客様情報が自動で記入されたExcelをダウンロードしてA3で印刷し訪問先に持っていきます。
以前は、面談予約を行う1番最初の工程で紙にお客様情報を記入していました。電話予約の内容をメモしたPDFを担当者のスケジュールに貼り付け、さらに同じ内容を案件管理システムにも入力していました。最初にkintoneにお客様情報を入力し、そのデータが「承り書」に反映されるようにしたのです。これで転記の手間や入力ミスもなくなりました。
3 鮮度の高い情報を外出先からも登録可能に
資格者はお客様訪問後に、受任の有無・受任内容・報酬額などを登録します。入力した情報をボタン一つで見積書に引用できるので、見積書を求められてから提出するまでの時間が短縮されました。また戸籍・課税明細書など紙ベースの資料はスマートフォンで撮影してkintoneに登録します。以前はこれらを全て登録するためには帰社する必要がありましたが、今は外出先からも登録しやすくなったため鮮度の高い情報が集まりやすく、入力漏れも激減しました。
4 リマインド機能で作業漏れが減少
以前は案件の進捗は担当者のみが管理していたので、作業のヌケモレが発生した場合に誰も気づくことができませんでした。kintoneでは受任業務(案件ごとの決まった作業)に関する報告が期日内にアプリに登録されない場合は自動でリマインドメールが飛ぶようにしたので作業のヌケモレの防止につながりました。
5 売上額や業務量が自動集計できるようになり、数字に対する意識も向上
以前は売上の集計業務をExcelでピボットテーブルを組むなどして計算し、毎月掲示していました。集計データは司法書士専門ソフトのサムポローニアから落とすのですが、先述の通り数万件のデータを扱えるソフトではないのでダウンロードだけで8時間もかかりました。この大変な作業がkintoneの集計機能で自動化されました。最新の売上をいつでも誰でもアプリから確認できるので、資格者の売上に対する意識も高まりました。また事務方が抱える業務量を把握するための集計も自動化され、業務配分の最適化がリアルタイムでできるようになりました。この機能は管理職にとても評判がいいです。
6 請求書作成業務が1案件60分から20分に短縮され、年間で16,080時間も削減
請求書もkintoneで作成できるようになりました。これまでは楽楽販売からサムポローニアにお客様情報をコピー&ペーストして請求書を作成していたので転記ミスが起こっていましたが、kintoneではアプリ内のお客様情報や報酬情報をそのまま流用できるのでミスはなくなりました。また入金用の口座は地方拠点や地域ごとに多数あるので、入金口座を請求書に記載する際に不適切な口座を記入してしまうなどのミスが起こっていました。これをkintoneでは拠点に紐づいている口座を絞り込んでラジオボタンで表示し、その中から選択するだけで良い形にしました。請求書に携わる社員からは数多くの「ラクになった!」の声が寄せられています。このように請求書作成の作業効率は大幅に高まり、作成時間は1案件約60分から20分に短縮されました。全社では1日あたり約100件の請求書が作成されているので、年間では16,080時間も削減できたことになります。
ビフォー:1日あたり100時間、1年間で24,000時間
アフター:1日あたり33時間、1年間で7,920時間
7 入金の管理が効率化された
入金管理もkintone1つで可能になりました。これまでは請求書を作成するサムポローニアと案件管理を行う楽楽販売の2ツールに入金登録が必要でしたが、今は請求書の作成も入金確認もkintoneだけで完結します。
8 伝言を案件と紐づけて担当者に伝達できる「電話の取り次ぎメモアプリ」
アシスタントはお客様からの電話内容を担当の資格者に伝えます。以前は顧客管理ツールを開き、顧客番号やお客様の電話番号で検索し、伝言に関する部分を電話メモツールにコピー&ペーストすることで伝言していました。地味な作業ですが結構な手間がかかるので皆ストレスを感じていました。今はkintoneの案件アプリから該当のレコードを検索して「事務担当者に連絡」ボタンを押すだけで電話の内容を伝言できます。また記述内容は案件レコードに紐づくので、案件情報としても保存されます。この機能は関係者にすこぶる評判が良いです。
酒井様
総務では請求書をダブルチェックしています。以前は請求書を作成するには顧客情報・請求額・振込口座などを手入力していたため、アプリ間の転記ミスや銀行の選択ミスなどがよく見つかっており、人によっては差し戻し率が50%もありました。kintoneアプリにしてからは差し戻しは少なくなりました。
6.アールスリーは、困ったとき、助けが必要なときに必ず支えてくれる伴走者であり、社外相談役
Q:アールスリーは山下様と開発メンバーの皆様にとってどんな存在でしたか?
山下様
アールスリーは私たちにとっては社外相談役です。特に和田さんは必ず支えてくれる伴走者でした。システムについて大きな方針を固める時、社内には相談できる相手がいないので和田さんに相談できたことが私の心の支えでした。この1年で痛感したのは、システムを作るということはこれまで明確化されていなかった業務フローを洗い出して揉まないといけなかったり、改めてルールを作り直したりする必要があるということでした。システムで実現したいことをアールスリーに相談するたびに「では、こういう事を決めないといけないですね」とアドバイスをいただき、私は社内でルールをつくるために動きました。ルール作りはシステム開発パートよりもずっとしんどい仕事でした。だからアールスリーは、私たちにとってkintoneの開発パートナーを超えた「業務改革を目線を合わせて一緒にやってくれる社外相談役」なのです。
アールスリー和田
ありがとうございます。私たちが携わるのは主にkintoneの開発に関してですが、業務改善を同じ目線で一緒に進めるためには、業務の背景や目的、その時々の状況や企業文化といったものをきちんと理解する必要があります。そのうえで、寄り添う事を心掛けた結果、業務改善に寄与できたことをとても嬉しく思っています。
アールスリー與那城
私は案件管理に関するアプリの作成支援と複雑なカスタマイズが必要な部分を担当しました。
複雑なアプリ間連携が必要なアプリ作成時に配慮すべきポイントの対応を実施し、お客様主導で進められた部分との相乗効果で業務改善が進んだこと、とても嬉しく思っています。
アールスリー青木
私はプロジェクトの開始初期に、見込み客の登録に関するアプリの開発を担当しました。以前の半分の時間で仕事ができるようになったとのことで、とても嬉しいです!
7.kintoneの開発を通じて、わずか1年で業務効率化のための最強チームが誕生
Q:今回のkintoneアプリの開発では、業務推進企画室のメンバーがそれぞれ大活躍されたそうですが、ご尽力内容について、ぜひお聞かせください。
Excelの達人を他部署から引き抜いて、楽楽販売からの4万件ものデータをミスなく移行
西村様
私は山下さんの部下第一号です。Excelスキルを見込んで山下さんが企画室に誘ってくださいました。私がkintoneの開発で1番頑張ったことは楽楽販売からkintoneにデータを移行する作業です。2つのツールでは保持するデータ性質が全く違うのでkintoneに合う形にデータを変換する作業を4万件超分頑張りました。
山下様
西村さんは4万件超もの複雑なデータをミスなく移行してくれました。素晴らしい仕事でした!入社時は他部署の所属でしたが、仕事のお手伝いをしていただいた時にExcelの達人だと感じたため、西村さんの上司にかけあって引き抜きました。業務推進企画室に来ていただいて本当に良かったです。
「解説動画」が功を奏しkintoneの浸透に大成功!
佐藤様
私はkintoneのキーワードで求人情報を検索していてNCPと出会い、動画編集スキルやkintoneのカスタマイズ経験を評価いただき、kintoneのプロジェクト進行途中で入社しました。kintoneを社内に浸透させるための説明動画を大量に作ることが私の最初の仕事でした。
山下様
社員は説明書を読まない傾向があるので、kintone導入にあたり全国の拠点で説明会をすることや、動画で何度でも説明を見返すことができるようにすることを考えました。しかし当時は動画を編集できる人がいなかったので、「kintoneに興味があり動画が編集できる人」という欲張りな条件で人材を募集しました。これに応募してくれたのが佐藤さんでした。入社直後から地獄のような制作の日々でしたが、おかげで社内からの色々な問い合わせに対して適切な解説動画を案内できる体制ができました。例えば、領収書の発行方法を教えてほしいという内容に対して「この動画の10分あたりを参照ください」のような形でお返事ができます。これらの質問はFAQアプリに集約し、全社にFAQを徹底的に周知して誰かにkintoneの問い合わせが集中しないようにもできました。動画は、導入時には何百回も再生されてkintoneの社内浸透にとても貢献してくれました。導入が大成功したのは佐藤さんの動画のおかげです!
8.kintoneの内製化が一気に進み、さらなる業務効率化が可能に
Q:すばらしいですね、業務推進企画室は最強のチームですね!
山下様
業務推進企画室は、最強のチーム、本当にそう思います!今では、kintoneの保守やアプリ修正は西村さんが、新アプリの開発は佐藤さんが担当していて、それぞれのチームに新メンバーも入り5人体制になりました。kintoneの内製化も進んでいて、1年で大きく成長しました。アールスリーには本当に感謝しかありません。現在も継続的な支援をしてもらっていて、関係部署と一緒に要件定義から頑張っています。引き続きよろしくおねがいします。
貴重なお話をありがとうございました!
取材2024年5月
アールスリーでは、本案件やこれまでの案件実績での知見をもとに、kintoneを活用した業務改善サービスをメニュー化し、2024年4月に「キミノマホロ for kintone」としてリリースいたしました。作業内容やメニューごとの価格体系を載せていますのでぜひホームページでご覧ください。