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自社物件300棟のデータを一元管理するkintoneアプリを開発。地図上で自在に動かせるデータボックスを表示する機能を実装し、開発物件のデータ活用が大幅増加


東急リバブル株式会社
経営管理本部 マーケティング推進部 稲垣 様
(開発当時の所属はアセット事業本部 事業推進部)
アセット事業本部 事業推進部 内山 様
東急リバブル株式会社のアセット事業本部は、不動産開発、販売、運営を総合的に手掛ける部門です。同部門はこのたび、自社開発物件の実績とその開発中のデータを一元管理するためのアプリをサイボウズ社のkintoneで構築されました。同アプリには、データを管理する仕組みのほか、地図に複数の物件データをボックス表示させ、そのデータを地図上で自由自在に動かすことができる機能をアールスリーの開発により実現しています。本インタビューではアプリ企画の立ち上げの経緯や導入による効果について、本案件を担当された稲垣様と内山様にうかがいました。
自社開発物件の各種情報を一元管理できるシステムをつくりたい
Q:まずはじめにアプリ企画の背景を教えてください。
稲垣様
アセット事業本部が手掛ける自社開発物件は毎年30棟程度。これまでの開発物件は累計で300棟を超える規模となりました。これら300棟を超える開発物件の実績データは会社の財産といっても過言ではありません。そのため、これらの実績データをシステムによって適切に管理する必要があると、以前より課題感を持っていました。

また、当本部は事業拡大に伴い社員も増えています。新入社員や当本部への異動者はまず自社物件を知るところから始めますが、一元化されたデータベースが整備されておらず、スムーズな知見導入ができていませんでした。
他にも、新しく自社物件を開発するために過去データを参照したり、会議資料を作成したりする際にも、実績データの活用が頻繁に行われていますが、各物件の実績データが任意の場所に点在しており、データ収集に手間がかかっていました。
私たちは用地買収やマンション企画における生産性を上げてスピーディに対応していく必要があります。そのために個人的にExcelで物件情報をまとめたり、必要とする方にその資料を共有して対応していました。この作業にかかる時間を削減することと、すべての担当者が瞬時に情報を共有できるようにすることが課題となっていました。
これらの課題を解決するために、約300棟の自社開発物件の一元管理、および場所と概要を地図上で閲覧できるシステムをつくることにしました。
| 【自社開発物件データの従来の保管方法】 所轄部署ごとにGoogle Driveにて物件データ管理 【困りごと】 ・約300棟ある自社開発物件の全体像がわかりにくい ・年間30棟ほど物件が増えるので年を追うごとに管理が困難になる ・データの取りまとめや分析が属人的かつ工数が多い -属人的にそれぞれが必要な情報だけまとめて分析を行っている -自社開発物件の各種データが点在しているため、一括分析ができない 【解決案】 300棟の自社開発物件の場所と概要を一元管理できるシステムをつくる |
Q:システムの基盤にkintoneを選んだ理由を教えてください。
当部門では、2020年よりkintoneを活用しており、複数システムが乱立するよりは、使いなじみのある同システム内で拡張できた方がよいと思い、kintone内で別アプリを追加開発することとなりました。
地図上に表示させた物件データボックスを自在に動かせるアプリが完成
Q:完成したアプリについて教えてください。
稲垣様
今回開発したのは「物件データベースアプリ」です。ステータス毎に、当社の事業物件データを管理することができます。


「物件データベースアプリ」の開発物件情報には5段階のステータスがあり、ステータスごとに値を保存しています。進行中の物件の状況や、物件の企画内容の変化など、知りたい値を瞬時に把握できます。

社内でアプリを浸透させるために最も重要なのは、やはり“使いやすさ”です。操作に少しでもストレスを感じると、ユーザーはすぐに利用をやめてしまいます。どれだけ優れた機能を備えていても、直感的に使えなければ継続的な活用は期待できません。そこで今回のkintoneアプリでは何よりも使いやすさを重視し、物件を地図上にマッピングすることで直感的にどの物件がどの場所にあるのかを把握できるようにしました。
具体的には、地図上で開発物件の住所に赤いピンが立ち、ピンをクリックすると物件概要がデータボックスに表示されるので、物件の現在のステータス、購入金額、工事費用など重要な情報がひと目でわかります。特に新入社員、当本部への異動者は、まず自社物件を把握していきますが、この地図を開きながら歩けばすぐに目的の場所がわかりますし、現地で物件の詳細も閲覧できます。近くにある他の物件を効率よく確認することも容易になりました。

戦略的分析を行うための基盤が完成し、データ分析も一瞬に
Q:物件データベースアプリの導入効果について教えてください。
戦略的分析を行うための基盤ができた
今回のアプリ開発の1番の成果は、1つ1つの物件データ閲覧だけでなく、全体分析にも役立つところです。期間毎やスキーム毎等、様々な観点での分析が可能なので今はアプリのおかげで多角的な分析がボタン1つで行えるようになり、業務の効率化に大きく役立っています。

物件情報の把握が断然わかりやすく!
アプリを開くだけで物件の詳細やステータスが直感的にわかるようになりました。不動産関連業務について判断を行うためには、場所の情報が重要となります。地図上でデータボックスを動かし、近隣の物件の情報と同時に表示して比較をすることは、社内で物件やマーケットについて説明する時にもとても有効です。
また社員1人1人の持っている情報レベルがタイムリーにアップデートされるので、日々の営業活動に活かすことができています。

Google Maps JavaScript API標準範囲外の機能実装のため地図をフルカスタマイズ
Q:開発の様子についても教えてください。kintoneアプリ上で地図に物件をマッピングできるだけでなく、レコード内のデータを地図上に表示させたり、そのボックスの移動までできるのですね。どのように実現したのでしょうか?
アールスリー 井上
ご要望の地図機能をkintoneに実装するには難度が高めのプログラムを書く必要がありました。私がお客様との窓口として本件を前向きにお引き受けできたのは、アールスリーの開発陣が高い技術力を持っているという信頼があったからです。
というのも、kintoneでGoogleマップを使う場合、一般的にはGoogle Maps JavaScript APIを使用してJavaScriptを使ってプログラミングをして表示をします。Google Maps JavaScript APIの標準機能の中でできることを実装するのは比較的簡単ですが、標準外のことをしようとすると途端に難度が上がります。今回のご希望である「地図を全画面表示し、その上に物件データを複数同時に表示させる」ことや「ボックスを移動させること」は標準機能の対象外で、アールスリーの製品「kintoneのカスタマイズをコードを書かずに実現できるgusuku Customine」のカバー範囲も超えていました。
そこで私は開発チームに「難しい開発だが、我々の技術力ならできると思う」と伝えて開発方法を考え始め、最終的に地図プログラム全体の設計を渡邊に、地図機能のプログラム作成を與那城に任せる形でお仕事をお受けしました。

アールスリー 渡邊
プログラミングは開発者ごとにクセがあるものです。Google Maps JavaScript APIの仕様と與那城が書いたデータボックス追従機能(ボックスから伸びる赤い矢印が住所地点を指しながら追従させること)のコードを読み解いて、kintoneでうまく動くように実装する方法を考えるところが今回の開発の肝でした。

アールスリー 與那城
地図プログラムの作成では、複数の物件情報を同時に表示させる実装やデータボックス追従機能をどう実装していくかについて頭を捻りました。
東急リバブル様に実際に便利にご活用いただいている様子をうかがうことができ、開発者としてこれ以上嬉しいことはありません。

システムを開発したい時に真っ先に相談を持ちかけるパートナー
Q:最後に、アールスリーのkintone開発サービスを検討中の方にメッセージをお願いします。
内山様
地図機能はkintoneを本部内で幅広い部門、役職の社員が気軽に使えるようになるための重要なシステムとして、チームで気合を入れて取り組んだ案件でした。地図機能は難しい開発ということで、開発会社さんによっては断る案件かもしれません。そんな中でアールスリーは、難しい開発であっても何とか要望に応じようと前向きに受け止めて、たのもしい開発陣が実現をしてくれました。
稲垣様
アールスリーとは2025年の時点で3年のお付き合いになるのですが、私はシステム化したい案件がある時は真っ先にアールスリーに相談をします。私自身技術的なことは詳しくないですが、絶対に「出来ない」とは言わず、どうにか実現できるよう前向きに検討していただいています。アールスリーは私にとって気軽に相談できて、やりたいことを前向きに検討し、実現してくれる、そんな開発パートナーです。

貴重なお話しをありがとうございました。
取材2025年10月
アールスリーでは、本案件のようなkintoneアプリの開発や内製化に繋がる構築支援サービスをメニュー化し、2024年4月に「キミノマホロ for kintone」としてリリースいたしました。作業内容やメニューごとの価格体系を載せていますのでぜひホームページでご覧ください。