甲西陸運株式会社様 事例紹介

新規事業タイヤストックサービスのシステムをkintoneで開発。わずか2ヶ月で完成し、予定通りスタートを切れました

甲西陸運株式会社取締役 甲斐切 亮 様

甲西陸運株式会社は新規事業「タイヤストックサービス」の立上げにあたり、サイボウズ社のkintoneを用いて専用システムの開発を行いました。本インタビューでは、システムの概要、新規事業におけるシステムの効果、アールスリーとの対面開発の様子についてうかがいました。

新規事業「タイヤストックサービス」が始動

Q:「タイヤストックサービス」について教えてください

冬用タイヤとノーマルタイヤの履き替えの時に、オフシーズンのタイヤを当社の倉庫で保管、交換時期にお客様の希望日に合わせて配送するサービスです。2017年11月に始めました。主な顧客はカーディーラー様です。ディーラー様から保管サービスの注文が入ると、当社のトラックでタイヤを集荷します。その逆に、配達の指示が入ると、当社の倉庫に保管していたタイヤを配達します。当サービスは1年契約のサービスです。年間2回の集荷と配送・倉庫での保管がセットになっています。 立上げ直後の2017年の冬と2018年の春のタイヤ履き替えでは、約1,500件の申込がありました。注文が殺到する時期も含め、集配と事務を2〜3名のスタッフで運営しています。

Q:今回開発した「タイヤストックサービス」専用のシステムについて教えてください

カーディーラー側の使い方

契約いただいたカーディーラー様にはkintoneのIDとパスワードをお渡しし、パソコンやタブレットからサービスの申込み(お客様情報の入力・タイヤ情報の入力)や集荷・配送の依頼をしていただきます。申込みの際にはタイヤの写真も添付可能です。日ごろ書類で事務処理をされている会社も多く、導入当初はカーディーラー様に使い方の説明が必要でしたし、クラウドシステムへの懸念の声もありました。しかし、やってみると「kintoneの方が処理が早くできますね!」と言っていただけるようになりほっとしています。

社内管理側の使い方

【通常業務において】 毎日kintoneでタイヤ保管のお申込みや集荷配送依頼を確認し、配車計画を立てています。タイヤを集荷したら倉庫に保管します。配送依頼が入ると倉庫からタイヤを取り出しディーラー様の店舗まで配送します。カーディーラー様から特定の注文に対して問合せがあるとkintoneを閲覧して回答しています。

【業務改善において】 何か改善したい点が出るたびに機能を自分で追加できるのもkintoneの良いところです。例えばデータのクロス集計機能を追加することにより先の予定が見えるので、トラックの配車計画を立てる業務がとても効率的になりました。他にも、保管期限が迫っている申込みがある場合に、カーディーラー様に「そろそろ配送依頼をお願いします」というメールを自動で送る機能も追加しました。

なぜ「kintoneによるシステム」が必要だったのか?

Q:書類で事業を運用する方法もあると思います。新規事業の立ち上げにあたり、あえて「システム」を作ることに決めた理由を教えてください

同事業では「注文書をFaxする」といった紙のやり取りをしたくありませんでした。書類を介すとミスが起こりやすくなるためです。繁忙期には1日に40件前後も申込や集荷配送依頼が入ります。Faxが殺到して処理に追われたり、伝達ミスなども起こるでしょう。申込情報に何か変更があった時の情報の更新も非常に大変です。新規事業なのでミスが起こるとサービスの信用にも関わります。これらのリスクをシステムなら回避できると思いました。サービズ開始後は、狙い通り目立ったミスは起こっていません。

kintoneのようなクラウドシステムを利用した開発は、自社史上初

Q:システムにも色々あるなかでkintoneに決めた理由を教えてください

一からシステムを構築するスクラッチ開発やサーバーの自社管理は大変なだけでなく費用もかさみます。色々な端末からアクセスできるようにするのも一苦労です。それに比べてクラウドサービスのkintoneは大掛かりな開発もサーバー管理も不要です。インターネットブラウザからクラウドにデータを読みに行く方式なので、自社とお客様が「1つの正しいデータ」をリアルタイムに共有できます。また、事業を運営していると「この機能はもっとこうしたい」と希望が出てくるものです。初期開発を終えた後でも「システムの調整」や「機能追加」が自分たちでできる点も魅力的でした。さらに、普段使っているパソコンとプリンターだけでシステムを使える点も重要でした。カーディーラー様と契約する際に先方の導入ハードルが低いためです。

アールスリーを開発パートナーに選んだ理由

Q:アールスリー社にご依頼いただいた経緯を教えてください

2016年のkintoneセミナーでアールスリーを知りました。アールスリーからは当社の希望するシステムを十分に開発する力があると感じました。また、納期が2ヶ月と非常に短いことに対して「間に合わせるための工夫と提案」もいただきました。例えば、必要な機能を全て盛り込んだものを一度に開発すると、2017年11月1日からの事業開始に間に合わない見込みだったので、開発を2回に分ける提案がありました。これは有効でした。

「タイヤストックの申込み=集荷申込み」機能だけがあればひとまずサービスをスタートできます。9月・10月で申込み機能を構築し、11月のサービスリリース後に「配達の申込み」など残りの機能を追加することで、スケジュールどおりに新規事業を起ち上げることができました。さらに、アールスリーは「gusuku Deploit」というkintone連携サービスを提供しています。このおかげでkintoneの基本機能にはない帳票出力機能、バックアップ機能、アプリの開発環境から本番環境に移す配布機能を利用することができます。その中でも特にExcel帳票出力機能を使うことで、帳票側のレイアウト調整は自分たちで行うことができ、スピーディな開発に寄与したと思います。その他の機能も含めて、「gusuku Deploit」が無ければシステムの構築は大変だったと思います。

また、アールスリーはkintoneを基礎から修得するための研修プログラム「kintone university」を開催しています。kintone導入後に自社で必要な機能を追加したいと思い受講しました。この結果として自社でも触れるようになりましたし、さらにはkintoneのAPI経由でデータを取得してきて、Accessの自社システムに入れ、経理部がタイヤストックサービスの請求書を処理できるようにもしました。

2ヶ月のスピード開発で予定どおり事業がスタート

Q:システム開発の様子を教えてください

システムの全体像は世間一般のタイヤストックサービスの注文書を参考にしました。また、カーディーラー様の意見を聞いて「帳票印刷」など必要な機能や要件を洗い出しました。

ポイント(1) 申込みごとにステータス管理ができる

最重要の要件は「ステータス管理」機能でした。ある注文がどの工程にあるのかをリアルタイムに把握して、お問い合わせ対応がスムーズにできる、作業漏れがないかチェックできる、集配の行動計画を立てやすくするなどを実現したかったからです。▶ステータスの例(申込み前、受付完了、完了、保管中など)

ポイント(2) 日々の集配のキャパをお客様に伝えられる

繁忙期にはタイヤ集荷配送の依頼が殺到することが予想されました。そのため、日々の集配のキャパをお客様にお知らせする機能が必要でした。最初は厳密に1日何個までとか管理しようとしていましたが、アールスリーの提案で厳密な管理はやめることにしました。▶集荷キャパ表示の例(カレンダー上に、◯・△・✕でキャパが表示される。✕の場合は注文できない仕様になっている)

ポイント(3) 事業拡大に対応していること

事業の成長にともない倉庫を増やすケースを想定して、保管拠点を追加できるようにしました。

途中での仕様変更

本サービスでは、1年間に集荷と配送が2回ずつ行われます、つまり計4回の申込があります。最初の計画では、タイヤ履き替えのタイミングでは「1つの申込み画面で集荷と配送と両方の申込を行う仕様」を予定していました。しかし、実際に使いながらいろいろ考えていく中で「シンプルなシステム構成」の方が後々自分たちで改善しやすいと思い、途中で「集荷と配送の申込みは別々の申込みに分けて処理する仕様」に変更してもらいました。かなり最終段階での仕様変更にもかかわらず、スピード感ある対応をしていただけてとても助かりました。

アールスリー田邊より

時間が無い中の初期開発や、様々なイレギュラーケースの集配を想定した仕組みの設計や開発は難易度が高いものでした。さらに開発途中での大きな方針変更もあり、カスタマイズ部分を大幅に修正しましたが、きちんと納品でき運用まで見届けることが出来て良かったです。

もしkintone無しで新規事業を立ち上げていたら?

Q:もしも、kintoneが無かったらこのサービスはどうなっていたでしょうか?

繁忙期には事務処理がパンクしていたかもしれません。書類をFaxでやりとりしていると正しい情報がどれなのか分からなくなりがちです。影響が大きいのは「お問合せへの返答」です。現状の何倍も時間と手間がかかると思います。kintoneを見れば「ある注文のタイヤの所在」が一瞬でわかりますが、もし無いと書類をめくったり、倉庫に確認に行かないと正しいお返事が出来ないからです。作業ミスも起こって、品質の低いサービスになっていた可能性もあります。確実に言えるのは、労働時間も残業も今より多くなっていたということです。

システムを必要としている方へメッセージ

Q:これから新規事業の立ち上げなどでシステムを必要としている方にメッセージをお願いします

アールスリーとの対面開発では熱量の高いやり取りが行われました。意見がスムーズに交わされて、希望がどんどん形になり、とても早いスピードで開発が進みました。開発会議で要望を出すと、その場で形になっていき、すぐに現場に見てもらうことが出来るので、現場の声が形になりやすい開発手法だと思いました。おかげで使いやすいシステムになりました。kintoneをベースにしたシステムは、一から作るスクラッチ開発と違い、費用も少なく開発期間も短いです。パソコンや既存のプリンターがあれば使える点も導入ハードルが低くて取り組みやすいです。物流業界はまだまだアナログが主流ですが、カーディーラー様に書類よりもkintoneの方が業務が早いと言って頂くなど導入効果を感じています。新規事業を起ち上げる方や業務を効率化させたい方にはおすすめです。

貴重なお話しをありがとうございました。

取材2018年5月