医療法人社団 恵生会グループ・いちご訪問看護ステーション24様 事例紹介

医療法人社団 恵生会グループ・いちご訪問看護ステーション24
医師 入江 恵一郎 様

恵生会・いちご訪問看護ステーション24は香川県の訪問看護ステーションです。同社では、患者様のカルテアプリや訪問看護の予定管理アプリなどを、サイボウズ社のkintone・ノーコードでkintoneをカスタマイズできるツールgusuku Customine・アールスリーの開発の併用で構築されました。今回は、システム開発を一手に担う医師の入江様に、gusuku Customineを採用した理由やアプリ導入効果についてうかがいました。

JavaScriptを書けなくても自由度の高い開発ができるとgusuku Customineを導入

Q:医療法人社団 恵生会グループについて教えてください

医療法人社団 恵生会グループでは、サービス付き高齢者向け住宅・訪問看護ステーションの2つの施設を運営しています。医師はサービス付き高齢者向け住宅への回診と、訪問看護ステーション利用者様の往診を行います。訪問看護ステーションには看護師さんのチームがいて患者様のお宅を訪問します。

Q:ノーコードでkintoneをカスタマイズできるツールgusuku Customineの導入理由について教えてください 

2019年に患者様のカルテを作りたいと思いkintoneを導入し、カルテを完成させました。その後、バイタルや血圧を記録するアプリを作り、それらのデータを関連レコードとして任意のアプリに転記できるようにしたいと思いました。この実装方法を調べる中で見つけたのがgusuku Customineでした。まずはフリープランで利用してみたところ、JavaScriptを自分で勉強することに比べて圧倒的に費用対効果が高いこと、拡張性が高いので今後も色々な開発に利用できそうなことが分かりました。他のプラグインも検討しましたが、機能が決まっているので必要な機能が足りなかったり、要らない部分があったりしました。プラグインの仕様に自分が合わせるのではなく、自由なカスタマイズがしたかったのでgusuku Customineを選びました。

Q:2020年の1月にアールスリーに開発の依頼もされていますが、その目的を教えてください

アールスリーに依頼したのは、患者様の訪問予定アプリに翌月の訪問予定を登録する機能の実装でした。患者様には決まった訪問パターンがあります。「Aさんの訪問は火曜日2時、水曜日4時」という具合で、このパターンは訪問看護スケジュール管理アプリに記載されています。そのアプリからパターンを拾い、全ての患者様の訪問予定を1つのカレンダーに一括で表示するという開発は私には難しそうに思われました。今後も自分で保守をすることを考えてgusuku Customineの販売元であるアールスリーに開発を依頼しようと思いました。

アールスリー技術者 井上より

入江先生からお問い合わせをいただいた時に、私が医療系システムに詳しいということで対応いたしました。まず、ご希望の内容はgusuku Customineと少しのプログラミングで実現できることをお伝えしました。入江先生は他にもやりたいことが色々あるご様子だったので、今後の展望を実現するためのgusuku Customineの活かし方についてもご説明しました。

アールスリー技術者 井上

看護師さんの入力の負荷をできるだけ減らしたい

Q:御社のアプリについて詳しく教えてください

kintoneのトップ画面は、フェイスシート(カルテ)などのkintoneアプリや、外部連携サービスへのリンクを掲載しています。人のマークのアイコンはフェイスシートにデータを追加したい時の入り口で、クリックすると入力画面に遷移します。

kintoneのトップ画面

gusuku Customineで自分でカスタマイズしたのは、タブ表示・吹き出し・新規登録ボタン・フィールドの入力制御などです。主に入力を担当する看護師さんや事務の方にとって「分かりやすく、使いやすいもの」にするためのカスタマイズでした。

タブ表示・吹き出し・新規登録ボタン
入力を制御している入力フォーム。入力制御により記入内容を間違えることなく入力できる。人による入力のムラも解消できた
gusuku Customineの設定画面

アールスリーに作ってもらったのはスケジュール作成の部分です。画面の左側が利用者様のリストで、カレンダー表示されているのが看護師さんの訪問予定です。訪問看護スケジュール管理アプリに記載されている元のデータは「毎週金曜日の14:00」のような形式でデータが入っています。それを「1ヶ月分の具体的な日付に変換して、データをカレンダーに登録(1レコードとして登録)する」処理をしています。レコードのデータをカレンダー表示するためのプラグインにはカレンダーPlusを利用しました。

色分けはケアの種類です。患者様の具合に応じて色分けがされています。具合が悪くなった患者様がいらした場合、画面左の患者様の名前をクリックするとカルテに飛ぶことができます。カルテを見るとその方のバイタルや発熱状況を時系列で把握できます。

また、kintoneアプリ内のデータをExcel形式で表示できるプラグインkrewSheetを利用して、カルテ・バイタルデータなどを一画面に表示させています。

画面の左上は患者様の一覧。左下はある患者様の医療データ。画面右は患者様のカルテの詳細

また用途に応じてkintone以外のツールも使っています。その1つがチャットワークです。患者様ごとにグループチャットを作っていて、訪問時の様子などを入れています。gusuku Customineのタブ表示機能で「Chatwork」タブを作り、その中にこのグループチャットへのリンクを登録して簡単に飛べるようにしました。診察時にはバイタルなどのデータとチャットワークでの会話を両方見て診断をしています。

タブ表示機能を使いチャットワークへのリンクを登録している

「みんなが入力する気になるユーザーインターフェース」を実現できる

Q:gusuku Customine導入時に使い方はどのように把握されましたか?

gusuku Customineの扱いはJavaScriptを書くことに比べたら格段に簡単です。基本はサポートサイトでやり方を把握しました。ノウハウが1つのところにまとまっているので開発する時にラクでした。

Q:gusuku Customineでのカスタマイズはどのような点に役立っていますか?

新ツールの導入は従業員のファーストインプレッションが大事なので、皆が使いやすい状態にすることにこだわりました。入力画面が複雑で長い入力項目が「バーン!」と表示されると担当者の入力する気が削がれてしまいます。これが同じ量の入力でも「あるタブをクリックしたら該当する部分だけが表示される」状態なら入力する気が起こるものです。そのようなやる気につながるユーザーインターフェースの部分をgusuku Customineが支えてくれています。

開発を依頼した部分では、思い通りの機能を素早く実装できた

Q:アールスリー開発者の対応はいかがでしたか?

開発スピードは2ヶ月以下と完成まで早かったです。レスポンスは早いですし、キャプチャーを共有すると目の前の問題をすぐに理解してくれて、分かりやすいお返事をいただけた点も気持ちよかったです。思い通りのものができて、不満は一切ありません。

また、kintone稼働開始から3年が経過し、kintoneの中にデータが膨大にたまってきました。こうなるとデータが壊れるかもしれない不安からアプリを触るのが怖いです。そういう時に、ここを触ってもシステムもちゃんと動くかどうかをプロに相談できて助かっていますし、安心して開発ができています。

アールスリー技術者 大澤

今回の開発では、基本的な部分をgusuku Customineで構築し、gusuku Customineではできない「繰り返しの設定」についてはJavaScriptを書きました。gusuku Customineをベースにする開発をすることで、入江先生が今後もご自身で開発しやすい状態を保っていただけることや、短期間で開発が終わることがgusuku Customineを主軸とする開発のメリットです。

アールスリー技術者 大澤

膨大なスケジュール登録作業が1/2以下になり、より良いケアも実現

Q:kintoneの導入効果について教えてください

膨大なスケジュール登録作業が1/2以下

繰り返しのスケジュール登録ができるようになったことで、Excelでのスケジュール管理時代に発生していた膨大な予定登録業務が無くなりました。信じられないほどの登録作業量だったので、それに比べると作業量は1/2以下です。またExcelでは紙に予定を印刷する必要がありましたが、kintoneではオンラインでどんなデータも把握できるので、看護師さんのその日の仕事量も把握できるし、空き状況に応じて別の訪問を入れることも可能です。全体を見て看護師さんの仕事が偏らないように、バランス良くスケジュールを組み替えることが簡単にできて良いですね。

看護師さんの行動ログの統計やその日の都合を鑑みて、訪問予定をカレンダーから自由自在に変更できる点が便利と感じている

カルテの入力スピードが3倍速になり、患者様と向き合う時間が増えた

私は週に1回、サービス付き高齢者向け住宅に回診に行くのですが、その時にカルテを書くスピードが約3倍早くなりました。以前は施設に行ってから「◯◯さん、今週どうだった?」と1週間の調子を聞くところから始まり、30人分繰り返していました。これには1時間以上かかりましたが今は20分程度です。kintoneになってからは、回診に行く前に1週間分のデータを見ておいて「◯◯さん、最近大丈夫だよね」と始めることができるので、症状について聞く時間が減り、そのぶん患者様と沢山のお話ができています。ログを予め確認できるようになったことで、正確な診断やより良いケアにもつながりました。例えば、患者様が「大丈夫です」とだけ言った場合、実際には大丈夫じゃないことは沢山あるので体調ログが役に立っています。また今日だけ血圧が高いのか、最近ずっと血圧が高いのかがなども分かるので、お薬を出す時の判断もしやすいです。

gusuku CustomineはJavaScriptの大海に放り出される時の「浮き輪」

Q:今後の展望についてお聞かせください

gusuku Customineは自分でJavaScriptを書かなくてもやりたいことがほぼできます。何も分からずJavaScriptの大海に放り込まれると大変ですが、gusuku Customineがあると浮き輪があるような感覚で、頑張って泳げるよ!何とかなるよ!と感じることができました。今ではgusuku Customineの設定を見れば「以前にどのような開発をしたのか」が分かります。似たようなアプリを作ろうと思った時に過去の設定を参照することで自分で新しくアプリを作ることもできます。このように、今後もgusuku Customineを利用したりアールスリーに相談したりしながら、院内の様々なデータをkintoneの中で連携し、連携の網の目を大きくすることで、より良い医療・より良いサービス・より良い労働環境・人事評価をできるようにしていきたいです。

貴重なお話しをありがとうございました。

取材2022年8月