川口市役所様 事例紹介

属人化によるメンバーの異動リスクをkintone&gusuku Customineで解消

川口市 情報政策課 主任 早坂 俊平 様
川口市 情報政策課 主事 会田 裕貴 様

 川口市は埼玉県南東部に位置している人口60万人規模の自治体です。この多くの住民の生活を支えているのが、川口市役所。とは言え、役所あるあるで基幹システム以外はExcelやAccessをマクロやVBAで力業運用している状態でした。

 2020年にコロナ禍が始まり、5月には市が独自に「川口市小規模事業者等事業継続緊急支援金」を給付することになりました。しかし、川口市には給付の対象となる中小企業が1万6000社もあり、Excelで管理するのは無理があります。そこで川口市役所でサーバーやネットワークなどを管理している情報政策課はkintoneを導入することにしました。

 今回は、kintone導入前の課題と導入の経緯、そしてgusuku Customineの活用方法について、情報政策課 主任の早坂俊平氏と主事の会田裕貴氏に伺いました。

川口市 情報政策課 主任の早坂俊平氏と主事の会田裕貴氏

課題■マクロやVBAを駆使したExcelやAccessで業務を行っていた

 自治体では住民基本台帳関係や税金関係などの業務はパッケージ化された基幹系システムで業務を行いますが、その他の業務ではパッケージシステムがありません。そのため、以前からExcelやAccessを利用していました。高度な入力管理や計算を行う場合は、マクロやVBAに詳しい職員がお手製で作っていたのです。

 しかし、マクロやVBAを書ける人材は限られており、そのような人材を育成する仕組みもありません。自治体では5年くらいで異動するサイクルがありますが、そのたびに動作しなくなったExcelやAccessの扱いに困り、情報政策課に相談が寄せられていたそうです。

 情報政策課のメンバーはITに詳しいものの、現場の業務に深く絡んだExcelやAccessを解析するのには時間がかかります。その業務に関わる法制度や運用などがわからないと、情報政策課とはいえ、簡単には解決できません。そこで、マクロやVBAを書かなくても、業務アプリを構築できるシステムの導入を考えていたそうです。

詳しい人が昔作ったAccessのシステムです。すでに現在のメンバーでは改修ができなくなっていたそうです。

 そんな中、コロナ禍が発生しました。川口市には多くの中小企業があるのですが、その多くが前年比で大きく売上を落としました。そこで、市として法人向けの給付金を給付することになったのです。すると、担当する産業労働政策課から、1万6000もの企業をExcelで管理するとデータが重くなるし、複数ユーザーが同時入力できないという問題があり、どうすればいいかと相談が寄せられました。

「普段からネットの記事を見て情報収集しているのですが、千葉県市川市がkintoneを導入した事例を見て、自分たちの業務にも活用できるのではないかと考えました」(早坂氏)

 利用したい機能の部品をドラッグ&ドロップで配置して、簡単にアプリを作れるところに感動したそうです。kintoneであれば、情報政策課のメンバーでなくてもシステムを作れると考え、導入計画を進めることになりました。

 とは言え、最初は産業労働政策課と情報政策課のメンバーが一緒にアプリを作ったそうです。給付金の申請を処理するアプリで、同規模のシステムをAccessで作ろうと考えたら2週間くらいかかるものでした。しかし、担当者とチャレンジしたところ、3日で完成したそうです。

「この瞬間、kintoneを選択して良かったなと思いました」と早坂氏は振り返ります。1週間ほどテストをして、翌週には本格稼働させたそうです。

 なお、自治体が主に利用する総合行政ネットワーク(LGWAN)はセキュリティの観点からインターネットから分離されています。当初、kintoneが動作するインターネットには、仮想化技術を利用した仮想デスクトップを利用してアクセスしていました。しかし、使ってみるとkintoneに接続するまでに1分30秒もかかってしまい、操作が重いとか、これでは運用が崩壊してしまう、という声が寄せられたそうです。

「仮想ブラウザであれば20秒くらいで接続できることがわかりました。そこで、仮想ブラウザを展開したところ、色々な部署でkintoneを使ってもらえるようになりました」(早坂氏)

導入■39個のアプリを使いやすく徹底的にカスタマイズ

 給付金の申請は電子と紙を選べ、電子申請は県と共同利用のシステムがすでにあるのでそれを利用。電子申請分はCSVファイルでkintoneに取り込みます。紙の申請書類はAI-OCRでテキスト化してCSVファイルにして、kintoneに取り込んだそうです。

 給付金を給付する場合、申請した人たちは振り込み日を確認したい人が大勢います。実際に問い合わせの電話が殺到したそうです。そうすると、一番大事な申請処理ができなくなってしまいます。

 そこで、外部サービスを利用し、kintoneに記録されている申請の進捗情報をWEBページで確認できるようにしました。このページは多い日で300アクセスあったそうで、その分電話を減らせたことになります。1日300件の電話を受けていたら職員が疲弊してしまうので、導入は大成功と言っていいでしょう。

 kintoneを使いこなしていくうちに、基本機能では対応できない要望が出てきたそうです。ここで情報政策課がJavaScriptを書いて対応してしまっては元の木阿弥です。

「kintoneアプリは150個を超え、63課、120人から要望が寄せられます。それぞれの機能を実現するプラグインは個別にあると思いますが、いろいろなカスタマイズができる「gusuku Customine」に興味を持ち、2020年9月から使い始めました」(早坂氏)

 現在、39個のアプリを「gusuku Customine」でカスタマイズしているそうです。もっともヘビーユースされているのがタブ機能です。項目数が多いアプリだとスクロールする必要がありますが、操作が多く見づらいと言われてしまうそう。そこで、タブで項目を分けて、スクロールしなくても見えるようにしています。

タブ表示のカスタマイズ

タブ機能を含め、39個のアプリで様々なカスタマイズをされているため、特徴的なカスタマイズとその効果をいくつか取り上げて紹介していただきました。

■公用車の管理アプリ

公用車の管理アプリでは、「『車検の有効期限満了日』が1月1日から3月末まで」といった期間の検索をスピーディにできるようにしました。標準機能でも期間の検索は可能ですが、検索したい期間が変わるとその都度絞り込みの設定が必要となり、手間と時間がかかります。gusuku Customine の検索機能では一覧画面に表示された検索窓で期間の検索ができるため、検索条件が変わったときにもすぐに欲しい情報に辿りつけるようになりました。

■金券処理簿アプリ

「市民課で使っている市民税と固定資産税、軽自動車税の証明書の申請を管理するアプリでは、「gusuku Customine」で3つのカスタマイズを行っています。まずは、タブ機能で、2つ目が郵便番号を入力すると自動的に住所を出しています。3つ目が、税区分のラジオボタンを選択した後に取得ボタンを押すと、その税区分で使う帳票一覧が表示されます。すべて表示すると多すぎるので、「gusuku Customine」で絞り込んでいるのです」(早坂氏)

グラフィカル ユーザー インターフェイス自動的に生成された説明

■慰労金申請アプリ

保育所や幼稚園などの職員が慰労金を申請するアプリでも「gusuku Customine」を活用しています。申請時には施設名を入力してもらうのですが、自動的にその施設の担当課がフィールドに入るようにしました。このおかげで、kintoneアプリから課名で検索できます。この課名は検索に利用するのでkintone上では編集を禁止するという工夫も凝らされています。

■データパンチ依頼アプリ

この他にも、Excel やメールでの手作業を大幅に削減することにも kintone と gusuku Customine は一役買っています。

市役所の12部署では紙の申請書などを業者に委託して、データ化してもらうという業務があります。情報政策課で依頼をとりまとめていたのですが、以前はExcelとメールを使っていました。会田氏は2020年7月に情報政策課に異動してきたのですが、この業務がとても煩雑でなんとかしたいと感じたそうです。

「そこでkintoneアプリ化しました。各担当者に予定を入力してもらうのですが、なるべく簡単に入力できるようにするため、「gusuku Customine」を活用しました」(会田氏)

 日付を指定して予定を抽出し、レコードを再利用する際にルックアップを自動取得するようにしました。同じ内容の依頼を行うことが多いので、テーブルの行をコピーするボタンも設置しています。


これにより、従来と比べて大幅に作業効率が向上し、情報政策課の担当者は効率化によって確保できた時間で他の業務改善や現場担当者のサポートに時間を割けるようになったのです。

「gusuku Customine」は、複雑なアプリを作る時になくてはならないものになっています。レコードを引っ張ってきて、その中の対象を絞って加工して、もう一回元のレコードに返すというような処理もできます。入力を簡単にするとかタブ表示するといった表側と、アプリ同士のデータ連係や複雑な計算処理といった裏側の両方に対応できるサービスだと思います」と会田氏。

 最後に今後の展望について伺いました。

「現状はまだまだExcelで管理している部分が多いので、その辺をgusuku Customineを活用して、kintoneで管理したいと思っています」と早坂氏は締めてくれました。

貴重なお話をありがとうございました。

取材 2021年9月