株式会社星野リゾート様 事例紹介

コロナ禍での緊急ミッション!情報処理費を短期間で削減するためにgusuku Customineとコラボフローを導入した

株式会社星野リゾート
情報システムグループ
グループディレクター 久本 英司 様
小竹 潤子 様

 星野リゾートは最初の旅館を開業して106年目の老舗であり、国内だけでなく海外にも展開する屈指のリゾートブランドです。国内外で45施設を展開しており、急成長していました。

 しかし、新型コロナウイルスの影響を受け、売り上げがダウン。危機感を持った星野リゾートの星野佳路代表は、コロナ禍が18ヶ月間続くと仮定し、生き残りのための号令をかけました。 

 今回は、その号令の元、情報処理費の削減にチャレンジした情報システムグループグループディレクターである久本英司氏と、小竹潤子氏にお話を伺いました。

コロナ禍のため取材はオンラインで行いました。左が久本氏、右が小竹氏です。

課題■コロナ禍の影響で急いでコストを削減しなければならなくなった

 星野リゾートがkintoneを導入したのは2014年です。星野リゾート全施設の業務改善をExcelで行うのは現実的ではありません。その時のIT担当者は久本氏をはじめ4名だったので、システムを開発するのも時間がかかってしまいます。そこで、当時盛り上がり始めたプログラミングなしでシステムを構築できるノーコードツールの導入を検討していました。

「業務を担う現場がシステムを作れるといいなと考えていたところ、kintoneを見つけました。当時、グループウェアを乗り換えるタイミングだったので、一緒に導入することにしました」(久本氏)

 久本氏の目論見通り、情報システム部はkintoneを活用し、現在では800個ものアプリが作成され、全社員が利用しています。

2014年からkintoneを本格的に活用し、800以上のアプリを業務で活用しています

 2019年、星野リゾートは事業を加速させていました。国内外で8施設を開業し、2020年には5施設の展開を予定していたのです。しかし、2020年に新型コロナウイルスが現れました。

 星野リゾートは大人気なので3月前半までは、影響は限定的でした。社内でも、ゴールデンウィーク明けには収まり、乗り越えられるだろうというムードが広がっていたそうです。しかし、緊急事態宣言が出てからは、過去に見たことがないくらいのキャンセルの嵐で、大きな赤字になってしまいました。

「代表から、収束するまで18ヶ月かかると仮定し、生き残るためのサバイバルモードに今日から入ります、と全社に号令が出ました。行動指針が示されたのですが、そのひとつが現金を大切にすると言うことです。そこで、私たちは毎月かかっている情報処理費を削減することにしました」(久本氏)

 たくさん動いていたシステム開発のプロジェクトは、すべて中断。AWS(Amazon Web Services)の契約も見直して、25%削減できたそうです。

 中でも優先度が高かったのが、ワークフローです。これまで、全国40施設で277種類ものワークフローが作成、運用されていました。このシステムをkintoneに集約できれば、大きなコストダウンになります。小竹氏や久本氏たち情報システム部は移行プロジェクトに乗り出しました。

導入■コラボフローとの連携のカスタマイズをノーコードで行いたい

 元々、ワークフローは2020年いっぱいかけて移行する予定でした。当初は、6月に動作検証をして、年内にワークフローの移行を完了するというスケジュールだったのです。kintone標準機能では対応できないカスタマイズは、小竹氏がJavaScriptを覚えて対応する予定だったそうです。

 しかし、急いで移行しなければならなくなりました。久本氏が設定した期限は6月末です。まずは、ワークフローの棚卸しをしました。不要なものは削除し、共通化できるものは共通化し、277個あったワークフローを102個にまとめたのです。

277個のワークフローを102個にまとめましたが、それでもすごい数のワークフローです。

 3ヶ月計画を立てた後に、会社の方針として出社日数も絞ることが発表され、さらに稼働日数が減ってしまいます。「それでも、コストダウン計画は予定通り実行するという、ミッションインポッシブルだったんです」と久本氏は笑いました。 

 ワークフローの構築には、kintoneの標準機能ではなく「コラボフロー」(株式会社コラボスタイル)を導入しました。星野リゾートのワークフローが複雑だったためです。 

「私たちの会社は組織が複雑です。処理するのがひとつの部署であれば簡単なのですが、ワークフローや申請者、所属する会社によって承認者が変わるのです。プロセスの中に、各施設の総支配人が承認して、その後に、エリアの担当者が処理をするというケースが結構あります。それをkintoneのプロセス管理で無理に作ると、メンテナンスが大変になるという課題がありました」(久本氏)

  当初は自社開発で対応しようとしたのですが、最適なツールがあるなら活用しよう、と考えてコラボフローを導入することにしました。柔軟なコラボフローのワークフローエンジンを、使い慣れたkintoneの画面だけで操作できるようにするには、kintoneの大幅なカスタマイズが必要となりました。しかし、外部の開発会社にお金をかけて依頼したり、自社のエンジニアにゼロから仕様を伝えて開発するには厳しい状況でした。

株式会社コラボスタイルが提供する「コラボフロー」


「そこで、存在は知っていたのですが使ったことがなかった「gusuku Customine」を試してみました。4月に試用したところ、格段に開発のスピードが上がったので、すぐに正式導入しました」(小竹氏)

gusuku Customineを導入した理由はもうひとつあると久本氏。ワークフローはずっと使っていくシステムなので、できるだけノーコードで開発したいという思いがあったようです。

 これまでに作成した数百のアプリには、社内エンジニアが様々なカスタマイズを行っています。しかし、仕様もソースも残っておらず、トラブルになるケースも発生してきました。久本氏曰く「軽くやったカスタマイズあるある」が発生していたのです。

 gusuku Customineなら、コードを書かなくて済みますし、担当が異動や退職をしても、別の人が問題なく触ることができます。トラブルがあれば修正も簡単です。 

 小竹氏を中心に、情報システム部はすべてのワークフローを kintone x コラボフロー x gusuku Customine の環境に移行する作業を進めました。

効果■短期間でのシステム移行が完了! さらに大きなコスト削減も実現した

 結果的に、102個のワークフローすべてでgusuku Customineによるカスタマイズが適用されています。例えば、「身上異動届」アプリの例では、なんと20ページに渡り123個もの設定が行われていました。

ユーザーが使いやすいように徹底的なカスタマイズを行っています。

 詳細画面を開くと、人事データベースから自分の社員IDを持ってきて、同時に名前や所属、事業所などが自動で入るようにカスタマイズしました。標準では手動でルックアップする必要がありますが、gusuku Customineを使うことで画面を開いたときに自動でルックアップするとともに、取得した情報を元にもう1回自動でルックアップしているのです。

 さらに複雑な承認者の設定にもgusuku Customineで対応しました。申請ボタンをクリックすると、gusuku Customineがコラボフローにデータを渡します。そして、その時点でコラボフロー側にあるワークフローの情報を、kintone側で担当者や承認の状態を関連レコードのように表示します。

gusuku Customineを駆使した「身上異動届」のワークフローアプリの画面です。

 承認者が承認ボタンを押すとコラボフロー側に承認したということが伝わり、kintoneに承認したという情報が戻ってきます。同時に、画面をリロードする必要がありますが、これもgusuku Customineで自動化しています。

「6月末の切り替えのタイミングでは、7割くらいの完成度だったのですが、切り替えを断行しました」(久本氏)

 そのためリリース後にいくつか問題も発生しました。例えば、最初はリロード機能がなく、申請したらF5キーを押して更新してください、と言っていたそうです。しかし、使っている人から不満の声が上がったので、gusuku Customineで自動的に更新するようにしました。

 他には、権限を持っている情報システム部がリリースをしたときには問題なかったのに、権限が制限されている一般ユーザーが利用すると「却下」の操作が正常に動作しないというトラブルも発生しました。調べたところ、JavaScriptで開発で対応すると2~3ヶ月はかかりそうだったのですが、結局はgusuku Customineで、編集権限を一般ユーザーに渡した上で編集ボタンを隠し、一見すると編集権限がないように見せかけるという方法で乗り切りました。 

「今までの開発はエンジニアに通訳してもらっていたのですが、gusuku Customineを使えば、私の想いを日本語でkintoneに伝えられることに驚きました」と小竹氏は満足げです。

 導入効果もとても大きいものになりました。代表の号令からたった3ヶ月、稼働日が減ったので正味1ヶ月半くらいで、全社で利用しているワークフローをkintoneに移行できました。元のワークフローシステムを閉じることができ、コストダウンにも成功したのです。

 さらに、このシステムをJavaScriptの開発会社に発注していたら、200~300万円はかかっていたので、そのコストも削減できました。社内のエンジニアに頼むにせよ、多大な人件費が発生するのは同じことです。

 しかも、今回は仕様が完璧に決まってから作ったのではなく、短期間の移行を目標に走り出したプロジェクトでした。

「もやもやした状態でエンジニアに伝えても、なかなか開発は進みません。やってみないと分からない状態で、かっちり内容を決めてしまうと、結局やり直しが発生してしまいます。とりあえず作って改善していくという試行錯誤をgusuku Customineでできたのは大きかったなと思います」(久本氏)

自分の思いを日本語でkintoneに伝えられるのに驚いたと小竹氏

 現在はワークフローだけでなく、他のアプリにもgusuku Customineを導入し始めています。星野リゾートでは以前からアプリをJavaScriptでごりごりカスタマイズして活用していたのですが、そのうちのいくつかはgusuku Customineで対応できるようになりました。

「gusuku Customineを入れれば、どんなカスタマイズもできてしまいます。私たちは年間に1000万円くらいかけてカスタマイズしていたのですが、そのうちの7~8割はgusuku Customineに置き換えられそうです」(久本氏)

 ワークフローの置き換えがきっかけですが、gusuku Customineを導入したコスト削減効果はとても大きなものになりました。

「コストを削減するためには、gusuku Customineにコストをかけるしかありません」と久本氏。実際、全社的に予算が絞られている状況だったのですが、そのように稟議を通し、gusuku Customineの導入を実現しました。

 最後に、今後の展望をお伺いしました。

「今まで使っていたアプリも時間が経ったので使い勝手が悪くなってきています。そういうアプリはgusuku Customineを使ったカスタマイズに置き換えていきたいです。今までは諦めていた機能を自分たちで実現できるようになり、gusuku Customineでよりリッチなkintoneにできそうです」(小竹氏)

「コロナ禍を18ヶ月間生き残ると言っても、まだ4ヶ月しか経っていません。本当にkintoneやgusuku Customineという武器を持っていてよかったです。kintoneがなかったら、情報システム部はこの期間に何もできませんでした。ITでできることって多いな、と実感しています。今後も、何が起きるか分からないので、常に気を引き締めて、やるべきことをやり、コロナ禍を乗り切っていきたいと思っています」と久本氏は締めてくれました。

貴重なお話をありがとうございました。

取材 2020年9月