日本海ガス絆ホールディングス株式会社様 事例紹介

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毎日3名の入力業務がゼロに、見積は3週間から数日へ。販売管理システムのリプレイスが生んだ、変革の連鎖

日本海ガス絆ホールディングス株式会社
取締役 DX推進部長 松井 義行 様
DX推進部 情報システムグループ 青木 恵子 様
DX推進部 DX推進グループ 主任 佐々木 俊明 様

日本海ガス絆ホールディングス株式会社は、2018年設立の持株会社です。富山県富山市を拠点に、傘下子会社の経営管理および附帯業務を担っています。グループ各社では、都市ガス・LPガスの供給販売をはじめ、空調設備、ガス器具販売、電気など幅広いエネルギー事業を展開。グループ14社、従業員約680名の企業グループとして、地域のくらしと産業を長年にわたって支えてきました。

事業の拡大とともにグループ全体の情報管理や業務効率化が課題となり、2023年にDX推進部を発足させました。以来、kintoneを軸にグループ内のIT整備と業務改善を推進してきました。
しかし、kintoneを導入しても、会社全体の業務の流れはなかなか変わりませんでした。そんな焦りと悔しさを背負いながら、DX推進部の松井義行氏は動き出しました。

転機となったのが、gusuku Customine(以下、カスタマイン)の導入です。「中途半端では意味がない」と覚悟を決めた判断は、販売管理システムの完成という成果を生みました。そしてそれ以上に、「自分たちにもできる」と高いところを目指すメンバーが育ち、その挑戦の連鎖が今、グループ全体に広がっています。

今回は、松井氏とともにkintoneとカスタマインの導入・運用を担う情報システムグループの青木恵子氏、DX推進グループの佐々木俊明氏の3名に、その歩みと思いを伺いました。

左から、松井氏・青木氏・佐々木氏

課題:マスタはバラバラ、集計もできない。システムとExcelを行き来する日々

グループ会社のひとつ、ガス器具の販売や各種サービスを手がける株式会社モット日本海ガスには、3つの店舗がありました。各店舗が独立した環境でシステムを運用していたため、商品マスタや価格情報は店舗ごとにバラバラ。キャンペーンの適用価格が店舗によって異なるケースもあり、営業成績の集計すらままならない状況でした。

さらに、販売管理の業務の流れも一本につながってはいませんでした。マスタ登録や発注書はシステムで管理する一方、見積書はExcelで作成し、担当者が1案件ずつFAXで送付していました。システムとExcelを何度も行き来しながら業務を進めることが当たり前になっており、手間がかかるだけでなく、情報の抜け漏れや転記ミスが起きやすい環境でもありました。

「このままでは、データを会社の資産として活かすことができない」と感じたDX推進部は、販売管理システムのkintone化を検討し始めました。しかし、本当に実現できるのかを見極めるだけで約3ヶ月を要し、通常業務の忙しさも重なってプロジェクトは一度ストップ。DX推進部は、アプローチを見直すことにしました。

導入:これ一つで実現できる。会社全体を変える覚悟を後押ししたカスタマイン

そこでDX推進部が選んだのが、方針の転換でした。大きな課題を一度脇に置き、「今すぐ現場が便利になること」から着手。2023年より、受託作業管理アプリや道案内アプリなど、細やかなアプリを作成していくことで現場の信頼を少しずつ獲得していきました。

しかし、DX推進部発足から1年近くが経過しても、小さな改善の積み重ねだけでは会社全体を動かすには至りませんでした。
「kintoneを導入していたし、一部のグループでは改善もできていた。でも、会社全体を変えるにはまだ届いていなかった。そこを変えるぞ、という気持ちで臨んだのが販売管理システムのプロジェクトでした」(松井氏)

販売管理システムをkintoneへリプレイスするにあたり、DX推進部はパッケージ導入・個別プラグインの組み合わせ・カスタマインの3つの選択肢を比較検討しました。
パッケージは自社業務に合わせた仕様調整にコストがかかる上、案件管理も一緒に実現したいという要件には対応しきれませんでした。検討を重ねる中で、完成品をそのまま入れても現場に合わせるために無理をしたり紙で補ったりすることになる、と松井氏は懸念していました。
個別プラグインの組み合わせも検討しましたが、管理の煩雑さや将来的なメンテナンスへの不安が残りました。自分たちの業務に合わせて柔軟に作れる仕組みを求め続けてきたDX推進部の思いが、カスタマイン導入の決断を後押ししました。
「カスタマインは帳票出力や夜間のバッチ処理など、販売管理に必要な機能をひとつのサービスでカバーできる点が大きかったんです。市場にあるプラグインの約8割の機能をカスタマインで実現できると知り、これしかないと感じました」(青木氏)

一方で、カスタマインの導入は当初の予算を超えるものでした。それでも松井氏は、費用面での懸念を自ら引き受ける覚悟で、こう決断しました。
「販売管理という難しい業務を、自分たちの手で変えるには、中途半端な選択肢では意味がない。これだけの人数が日々苦労していることを解決できるなら、やるべきだと思いました」(松井氏)

2024年4月、カスタマインの正式導入を決定。会社全体を変えるという覚悟が、ひとつの選択へたどり着いた瞬間でした。

活用1:営業・事務・経営層、それぞれの仕事が変わる。一気通貫でつながる販売管理システム

小さなアプリで現場の信頼を積み重ねながら、DX推進部がずっと見据えていたのが販売管理システムのリプレイスでした。一度はストップしたプロジェクト。カスタマインという選択肢を手に入れたことで、いよいよその本丸に挑む準備が整いました。

販売業務はお客さまとの商談から始まり、見積・受注・発注・工事・売上・入金消込まで、多くの工程が連なります。お客さまと商談し、見積を作成して受注へとつなげる。受注後は発注・仕入れを経て工事が完了し、売上・入金へと続く。こうした一連の流れに、営業・事務・経営層それぞれが関わっています。

以前はこの流れが一本につながっておらず、各工程でシステムとExcelを行き来しながら手作業で対応していました。複数の店舗でマスタもバラバラで、営業成績の集計も難しい状態です。

カスタマインを活用して構築したのは、この一連の業務をkintone上で一気通貫につなぐシステムです。複数の店舗のマスタはひとつに統一され、各工程のデータが自動で次のアプリへと引き継がれます。データが一元化されたことで、これまで集計できなかった営業成績や販売状況を経営判断に活かせる環境も整いました。それぞれが自分の役割に集中できるよう、カスタマインを活用した仕組みが随所に組み込まれています。

起点となる商談アプリでは、営業担当者ごとに自分の案件だけが一覧画面に表示されます。他の担当者の案件に埋もれることなく、自分が対応すべき案件をすぐに把握できます。詳細画面では、「商談中」「見積済」「受注(工事待ち)」「完了」「連絡待ち(長期)」「失注」のステータスに応じてタブの色が自動的に変化するため、現在どの段階にいるかが一目でわかります。これは、案件の進捗状況をもっと把握しやすくしてほしいという現場の声を受けて取り入れた工夫です。関連レコードで案件に紐づく見積・発注・工事・売上までをひとつの画面で確認できるため、担当者が複数のアプリを開いて情報を探し回る必要もなくなりました。

商談アプリ:タブで現在のステータスを管理している

顧客情報の参照には、基幹システムから連携した顧客マスタをキーワードで検索・選択できる仕組みをカスタマインで構築。基本機能の検索では、10万件を超える顧客データを条件で絞り込んでいく操作が複雑で、目的の顧客になかなかたどり着けないケースがありました。カスタマインで部分一致検索にも対応したことで、名前や住所の一部を入力するだけで候補が絞り込まれ、すばやく顧客を見つけられるようになりました。
「カスタマイン導入前は顧客検索が課題のひとつでした。この仕組みで使いやすいUIになり、今では多くのアプリで採用しています」(佐々木氏)

各アプリは基本機能のアプリアクションで連携しており、前のステップで入力した顧客情報や商品情報が次のアプリへ自動で引き継がれます。見積アプリでは、商品マスタからキーワード検索で商品を選択するとテーブルに自動入力される仕組みを整備。帳票はカスタマインでExcel出力できるようにしています。社内回覧や後処理では、Excelで計算式を確認したりそのまま加工したりできる点が便利だと現場から好評です。

受注すると、発注アプリへとデータが引き継がれます。一覧画面でテーブルの行を表示し、発注内容を確認できるよう工夫しています。仕入れアプリが更新されると、営業担当者へ自動でコメント通知が届く仕組みもカスタマインで整備しています。事務担当者が仕入れを登録するだけで、営業は問い合わせをしなくても進捗を把握できます。入金アプリでは、売上データや売掛残データを関連レコードで表示し、入金消込の手間を削減する仕組みを整備しています。

発注アプリ:仕入れが完了するとコメントで営業へ通知

こうして商談から入金までの各アプリがデータでつながり、営業も事務も、関わる全員が手入力によるミスなく自分の役割を果たせる環境が整いました。売上・仕入れ・入金の情報は販売管理アプリへと自動で集約されていきます。
「各アプリのデータをカスタマインで連携しているからこそ、店舗ごと・チームごとの実績をリアルタイムに確認できるようになりました。さらにキャッシュレスに向けた取り組みも始まっており、売上アプリからコンビニ払込票出力ツールへ連携するデータの自動生成機能や、収納データから入金データの登録機能などを開発しました。ますますkintoneでの業務の幅が広がっています」(青木氏)

販売管理予実管理アプリ:各アプリのデータがカスタマインで自動集計される

活用2:毎日3名の入力業務がゼロに。イベントの世界観を変えた受付アプリ

販売管理システムの成功が、次の挑戦への自信を生みました。その勢いで取り組んだのが、イベント(ガス展)の受付管理アプリです。ガス展とは、一年で最も売上が集中するガス機器の販売促進会です。来場特典や抽選会、特別割引なども用意する、同社にとってとても力の入るイベントです。営業担当者、応援に入るメンバー、事務スタッフ、そしてお客さまと、多くの人が関わるこのイベントの運営を変えようとしていました。

以前は、営業担当者が受注を紙で受け付け、そのコピーをお客さまに渡し、受付用紙に記載された伝票を基幹システムへ入力するという流れが当たり前でした。この入力のためだけに、イベント期間中は毎日3名の事務スタッフが配置されていました。さらに、ガス展には普段の営業以外のメンバーも応援に入るため、キャンペーン価格や割引率、都市ガス・LPガスの区分など、把握しきれずにミスが起きやすい環境でもありました。加えて、お客さまへの受付控えは紙で渡していたため、プリンターのインクが固まってしまうトラブルもありました。

受付管理のkintone化の話が持ち上がったとき、松井氏は「受注内容を入力するだけのアプリならすぐできる、本番利用開始まで2週間もあればいい」と考えていました。しかし、担当メンバーはもっと先を見ていました。顧客情報や商品マスタ、キャンペーン情報などを手入力に頼らずシステムから参照し、受付後のデータも自動で基幹システムへ連携したい。ミスを防ぎ、効率化するためには、入力ツールに留まらず、業務全体をつなぐ仕組みにする必要があると考えていました。「1年かけさせてほしい、その分もっと作り込みたい」というメンバーの言葉を受けて、松井氏は任せることにしました。

1年後、できあがったのは単なる入力ツールをはるかに超える仕組みでした。顧客情報や機器の型式はカスタマインの部分検索機能でキーワード検索できるようになり、型番の最初の数文字はもちろん、途中の文字列でも候補が絞り込まれます。ガス展に携わるメンバーにこの部分検索機能を披露したとき、歓声があがりました。

普段お客さま対応を行わないメンバーが応援に入っても、ミスなく対応できる仕組みが整っています。割引率やキャンペーンは選択式になっており、特典の漏れや都市ガス・LPガスの区分を誤る心配もありません。入力データはその日のうちに自動的に基幹システムへ連携され、毎日3名が担当していた事務スタッフの入力業務はなくなりました。集計と販売作業指示が自動化され、販売状況はリアルタイムで把握できるようになりました。上長だけでなく、メンバーにも好評です。

型番の途中の文字列でも候補が絞り込まれる部分検索機能

さらに半年後には、お客さまへの受付控えもデジタル化しました。受付後、受付内容をカスタマインの帳票出力機能でPDF出力。QRコードを発行し、お客さまがスマートフォンで読み取るだけでPDFの受付控えを保存できる仕組みを構築しました。個人情報を扱うため、ランダムなURLの発行や時間経過でリンク切れになるなど、セキュリティに配慮した設計になっています。2026年春のガス展でデビューした機能です。

お客さま控えの出力もQRコードの生成も、ボタンをクリックするだけで完了

「入力ツールなら2週間でできるからと終わらせていたら、こんなに変わらなかった。kintoneを信じて、高いところを目指したメンバーの力があって、イベントの世界観が変わりました」(松井氏)
入力のためだけに毎日3名が配置されていたあの日々は、もうありません。

効果:人が育ち、成功体験が広がる。グループ全体を動かす挑戦の連鎖

kintoneとカスタマインの導入によって変わったのは、業務の効率だけではありませんでした。「自分たちにもできる」という自信が生まれ、グループ全体の意識が変わっていきました。「もっとこんなことができないか」という声が次々と上がるようになり、DX推進部以外でもkintoneとカスタマインを扱えるメンバーが増加。現在は20名以上がアプリ開発に携わっています。

こうした広がりは、誰かに押しつけられたものではありません。DX推進部が各部署からの相談を受け、課題を聞き、一緒に解決策を作り上げていく。その関わりの中で、改善の輪が自然と広がっています。

その広がりは、新たな挑戦も生み出しました。これまで、経費精算システムの導入を検討し、いくつかのパッケージを試したものの、勘定科目の仕分けなど経理のメンバーが納得できるシステムはありませんでした。そこで「だったら自分たちで作ろう」と立ち上がったメンバーがいました。レシートを撮影してkintoneに添付すると、インボイスや消費税率をAIが自動で読み取りテーブルに入力する仕組みを構築しました。この仕組みは、カスタマインの生成AI連携機能を活用しています。

「アールスリーが出している冊子『できることカタログ 生成AI編』を参考にして作成しました。生成AIでしっかり読み取れるんだろうか?と開発・テストを繰り返し、やっと完成したところです」(佐々木氏)

この経費精算システムは株式会社モット日本海ガス社内で正式に採用され、まもなく運用が開始されます。kintoneとカスタマインで成功体験を積んだメンバーだからこそ、生まれた挑戦です。

やがて、変化はグループ会社にも伝わっていきました。株式会社モット日本海ガスでの販売管理システムやガス展の取り組みを間近で見ていたグループ各社が、「自分たちにもできるんじゃないか」と動き始めました。建築設備や空調機器の販売・施工・メンテナンスを行う株式会社サプラでは、本格導入に向けて複数のシステムに分散していた空調設備の工事台帳や日報のkintone化が進んでいます。新築からリフォームまで住まいづくりをワンストップで手掛ける株式会社TOSUMO建築設計では、既存の施工管理システムとkintone・カスタマインを組み合わせた住宅リフォーム・新築の見積や案件管理のデジタル化に取り組みました。その結果、これまで3週間かかっていたリフォームの見積作成が数日に短縮されました。このスピード感が、競合他社との差別化につながっています。

現在グループ14社のうち約半数にkintoneが展開され、約300ライセンス、500アプリ以上が運用されています。kintoneとカスタマインは、グループ内でのデジタル化の標準ツールとして定着しつつあります。残り半数への展開はまだ続いています。

「もっとやれるんだから、高いところを目指さなきゃって奮い立つメンバーになってくれたのが嬉しかった。他のグループ会社の成果を見て、やれるんじゃないかと、目の色が変わった会社もあります」(松井氏)

あの日の覚悟が起点となり、挑戦する人が育ち、グループ全体を動かす連鎖は今も続いています。

取材日2026年4月