ビットリバー株式会社様 事例紹介

開発速度とメンテナンス性を重視!コードを書かずにカスタマインを活用する理由

ビットリバー株式会社
代表取締役 安藤 光昭 様
マネージャー アーキテクト 吉川 衆平 様
アーキテクト 平元 沙季 様

ビットリバー株式会社(所在地:広島県広島市)は、お客様のビジネスに役立つ価値を提供する会社として、代表取締役 安藤 光昭氏が2016年8月に設立した会社です。主に、kintone システム開発を行う「キントバ」、kintone の CRM 情報を Web と連携・活用できる「Kanal-WEB」、新規Webサービスの共同開発といった3つの事業を展開しています。

代表取締役 安藤 光昭氏、マネージャー アーキテクト 吉川 衆平氏、アーキテクト 平元 沙季氏の3名に、創業から現在の「キントバ」を中心とした kintone の開発と、gusuku Customine(以下、カスタマイン)の効果についてお話を伺いました。

創業時の決意と kintone との出会い

kintone と安藤氏の出会いはビットリバー社の設立前に遡ります。

前職では大手企業でエンジニアとして勤めており、地元である広島に拠点はあるものの全国各地への出張が多く、多忙を極めていました。また、お客様と向き合うより社内を向いている時間が多いことに疑問を抱えていたのです。

このような思いから、地元である広島でお客様と向き合える企業へ転職したいと考え、退職を決意します。そこから転職活動をしつつ、コミュニティや勉強会に参加する日々を送っていました。

こうした日々の中で、東京都中央区のサイボウズ株式会社(以下サイボウズ社)で開催されたコミュニティイベントに参加した際に、kintone と出会ったのです。グループワークで一緒のテーブルにいたサイボウズ社の方に「会社を辞めて新しい仕事をしようと思ってる」という話をしたところ、kintone というサービスがあると聞いたのです。さらに「kintone の開発で個人事業主として成功している人もいる」ということも聞き知ることとなりました。

コミュニティイベントに参加した夜、安藤氏はすぐにkintoneを試し、「すごいな…!」と感動したそうです。「こういうサービスが世の中にあるんだ。kintone でやってみよう!」と決意するに至ったのです。

こうして転職ではなく kintone の開発で起業しようと考えた安藤氏は、それから起業するまでの数か月間、全国各地の kintone 関連のイベントに足を運び、kintone の世界に入っていったのです。一人で黙々と開発するよりも、「エンジニアが働きやすい環境の会社を作りたい」という思いから、個人事業主としてではなくビットリバー株式会社を設立しました。

代表取締役 安藤 光昭氏

kintone 事業の成長とブランドの確立

同社では創業当初、kintone をひとつの事業の柱とは考えていたのですが、kintone の開発の案件数は多くありませんでした。知人の会社からの紹介による受託開発案件や Web アプリケーションの開発など、kintone 以外の案件の方が多かったのです。

しかし案件の有無に関わらず、安藤氏は kintone 関連のイベントに積極的に参加し、kintone を使っている人との接点をどんどん増やしていきました。「kintone を使ってなにかできないか」という思いを持ち続けてアクションを続けた結果、創業から年月を経るごとにkintone の開発案件は徐々に増えていったのです。

kintone の開発案件が増えてくると、kintone の開発事業としてのブランドイメージを確立させたいと考えました。そこで、顧客の悩みを解決するためのサービスとして誕生したのが「キントバ」だったのです。

キントバのサービス開始とともにブランドサイトを立ち上げ、ビットリバー社の kintone 開発の強みや特徴を発信するようになりました。

また、この時期には吉川氏が入社し、安藤氏とともに kintone ビジネスを進めていったのです。

カスタマインとの出会い

キントバの誕生とほぼ同時期に、安藤氏はカスタマインと出会っていました。2018年にプレビュー版の発表があってからすぐに、カスタマインを試していたのです。カスタマインで kintone のカスタマイズが色々できるとを知った際のことを、安藤氏は「kintone をカスタマイズするサービスを提供して、お客さん自身がノーコードで作れるという仕組みは、しっくり来た」と振り返ります。

当時、JavaScript でのプログラム開発に限界があることは感じていて、いずれ機会があったらカスタマインを使うことがあるかもしれないと思っていたそうです。しかし、「カスタマインでできることは JavaScript でできるはずなので、JavaScript を書ける人がわざわざカスタマインを使う必要はないだろう」と考えていたため、その後しばらくはカスタマインを使うことはありませんでした。

カスタマインへの挑戦で変化する社内体制

このようにキントバ誕生後、1〜2年は JavaScript で kintone の開発を行っていましたが、2020年2月のある案件でカスタマインを使用する機会が訪れました。

その案件では、JavaScript を書く開発メンバーはアサインせず、他のメンバーが中心となって進めることにしました。その際のことを吉川氏は「社内の体制を変えるキッカケにしたくて、カスタマインに挑戦することにした」と振り返ります。

従来のような JavaScript でのカスタマイズではなく、カスタマインでのカスタマイズを中心とした開発で案件を進めていったのです。

この案件での実績から、クライアントの要件によっては、カスタマインの使用が選択肢に入るようになりました。JavaScript で開発するものとカスタマインを使用してカスタマイズを行うものについて、社内でルールを決めていったそうです。

エンジニアではない吉川氏は JavaScript での開発に強いこだわりを持っていたわけでなく、顧客の要望をかなえることが最優先だと考えました。そのため「カスタマインでできることはカスタマインで、できない複雑なところは JavaScript でやったら良いのでは」と考え、社内の体制を徐々にシフトしていきました。

(左から)平元氏・吉川氏・安藤氏

コードを書けるチームがカスタマインを使う理由

こうしてビットリバー社では、社内のルールに沿って JavaScript とカスタマインそれぞれの利点を活かして開発を進めるようになりました。当初の「JavaScript を書ける人がカスタマインを使う必要はない」という考えから、カスタマインを使用するに至った理由について詳しく伺いました。

最重要視するポイントとして、開発速度の速さとメンテナンスのしやすさを挙げられ、「僕は特に開発速度を重視していますね」と吉川氏は話します。kintoneのスピード開発と一緒にカスタマインのスピード開発も提供できる方が良いと考えたのです。

また、安藤氏は以前から、「エンジニアが作ったものを納品することと kintone を売っていくことが、微妙に合っていないのではないか」という考えがありました。エンジニアが開発した部分はブラックボックスとなってしまいますし、メンテナンスに手間がかかります。

カスタマインだと、日本語で設定されているためエンジニア以外でもカスタマイズ内容を把握することができ、また自社のエンジニアがメンテナンスし続ける必要がない点も、使用が広がった理由のひとつでした。

また、既に顧客など別の方が作ったアプリをカスタマイズする場合にも、カスタマインが活躍します。別の方が作ったアプリの場合、フィールドコードはエンジニア自身が決めたものではないので、 JavaScript でプログラムを書くのは大変な作業です。

一方カスタマインは、フィールドとフィールドコードが両方表示されている中から、選択するだけでカスタマイズできることがほとんどです。そのため別の方が作ったアプリにカスタマイズするケースでは、カスタマインの利用は非常に効果的です。

多くの経営者の悩みの種である人材確保、社内体制の維持にもカスタマインは一役買っています。kintone のカスタマイズが可能な JavaScript 開発者の確保が困難という面があり「なかなかしっくり来る人がいないんですよね」と、人材確保に苦労した経験のある安藤氏は話します。

しかし、カスタマインを使うようになってからは、協力しつつも分担して効率的に案件を進められるようになりました。多くのカスタマイズはカスタマインを使って実装することで、コードを書けるエンジニアはどうしても JavaScript を書かなければいけない部分のみに集中できるようになったのです。

キントバ以外の事業として、「Kanal-WEB(※)」にも力をいれていきたいと考えています。カスタマインを使って kintone の開発案件を効率的に進めていくことで、「Kanal-WEB」にも力を入れることができると、安藤氏は期待しています。

カスタマインの活用によって、限られた開発リソースの最適化に取り組んでいるのです。

(※)「Kanal-WEB」は、kintone の CRM(顧客情報)を活用して、会員サイトを作成できるサービスです。特徴として、既存の Web サイトと同じデザインで作成できて、ドメインを揃えることも可能です。そのため、よりブランドイメージとマッチした会員サイトを運営することができるのです。

「ユーザーに寄り添った kintone 開発がしたい」

kintone の開発事業について、今後の展望のお話を伺いました。

ビットリバー社には、kintone に挑戦したものの挫折したり諦めかけたりしている方々からの相談が多いそうです。安藤氏はそういった方々の力になるために、これからもユーザーに寄り添った kintone 開発を行っていきたいと考えています。

カスタマインの導入企業は1,200社を超え、ビットリバー社の顧客でもカスタマインのニーズが高まってきました。

「顧客のニーズに応えるために『カスタマインと作る kintone コース』として、キントバの改修時にメニューを追加しようと思っています」と安藤氏より嬉しいお話をいただきました。

(左から)平元氏・安藤氏・吉川氏

ビットリバー社における JavaScript・カスタマインの使い分け

ここまで kintone を活用した事業についてお話いただいた安藤氏と吉川氏に、JavaScript とカスタマインの使い分けについて、具体的にお話を伺いました。

JavaScript を使うカスタマイズ

まずは、開発メンバーが JavaScript を書いて行う場合が多いカスタマイズについてです。

代表的なものとして、テーブルの集計や複数のアプリ間で連携して集計を行う場合には、JavaScript を使用しているそうです。こうした複雑な集計はカスタマインでもできますが、たくさんの「やること」と「条件」を組み合わせて作る必要があることも多く、JavaScript が書ける人の場合は JavaScript で開発した方が早いのです。

また、こうした複雑な集計は顧客自身がメンテナンスを行うこともほぼないので、JavaScript で対応することが多いとお話がありました。

カスタマインを使うカスタマイズ

一方で、カスタマインをよく使用するカスタマイズについてもお話を伺いました。

特に画面のカスタマイズをよく使っていて、「テーブルの行増減ボタンを左側に移動」や「タブを作成し、条件によって表示するタブを変える」といったカスタマイズを具体的に挙げていただきました。「kintone の UI を使いやすくするには、絶対にカスタマインがいいですね」と安藤氏は話します。

さらに2021年7月にカスタマインに機能追加のあった、「Excel/PDF 出力」も大きなポイントでした。それまで帳票出力が必要な場合には、他の連携サービスやプラグインを一緒に使用する必要がありました。しかし、Excel/PDF 出力が可能となったことで、連携サービスはカスタマインのみで要件を満たせる案件が増えたのです。

このようにビットリバー社は、JavaScript とカスタマインそれぞれのメリットを活かして kintone のスピード開発を提供しているのです。

貴重なお話をありがとうございました。

取材日:2023年5月