公開日:2024-01-25
営業プロセスが異なる2つの部門で情報共有が可能に。大きなシナジーが生まれ強みを活かした営業へ
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株式会社フォレストホールディングス 統括本部 経営企画部長 平尾 和久 様
式会社アステム 医療営業本部 DX営業部 兼 CS担当 兼 営業企画部 課長 安東 龍也 様
営業企画部 ME企画課 課長 橋本 英貴 様
営業企画部 医薬企画課 係長 髙野 紘子 様
株式会社アステムは、医薬品、医療機器・設備、診断試薬、医療システム等を幅広く扱い、医療機関の開業支援や自社で物流センターも運営している、フォレストグループの中核企業です。
フォレストグループ全体を包括する経営理念として「人々の健康に関わる〈不〉の打開」を掲げ、「不安・不快・不足・不便」といった課題を解決し、社会に貢献する意識を全社員が持っています。
同社ではkintoneとgusuku Customine(以下、カスタマイン)を活用し、医薬品と医療機器それぞれの営業部門で情報共有ができたことで大きなシナジ―が生まれ、強みを活かした営業活動が可能になりました。
当初は2つの営業部門でのみでの活用でしたが、現在は同社の物流センターやフォレストグループ全体にも活用が広がっています。
その効果について、株式会社フォレストホールディングス 統括本部 経営企画部長 平尾和久氏、株式会社アステム 医療営業本部 DX営業部 兼 CS担当 兼 営業企画部 課長 安東龍也氏、営業企画部 ME企画課 課長 橋本英貴氏、営業企画部 医薬企画課 係長 髙野紘子氏の4名にお話を伺いました。
■情報がバラバラで、強みを活かせない営業活動
kintone導入前、同社は複数の課題を抱えていました。
「部署単位や支店単位、ものによっては個人で、Excelなどを使用してそれぞれのパソコンで情報を管理している状態でした。こうした情報がバラバラの状態から、日報や商談・案件管理の機能、医療機関の情報など全てをひとつにして共有できないか、と考えました」と、当時営業企画部の責任者だった平尾氏は話します。
部署単位で情報がバラバラなのは、営業部門も例外ではありません。医薬品と医療機器それぞれの営業部門が異なるシステムを使用し、情報共有ができていない状態でした。医薬品と医療機器の両方を扱っていることが強みの同社ですが、お互いの営業活動が見えないことで強みを活かしきれていませんでした。
「お互い他部門のシステムにログインすることもできませんでしたね。そのためそれぞれの営業が同じ日に同じ医療施設を訪れていても、それをお互いが知らない状態です。お客様から見た時に同じアステムの人なのに、誰が来ているか知らないのは大きな問題でした」(安東氏)
もう1つの課題として、医薬品の部門では法令への対応がありました。2018年に厚生労働省より、「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」が開示され、医薬品の部門ではこのガイドラインの要件を満たすための情報を、日報に記録することが求められました。当時医薬品の部門が使っていたシステムはスクラッチ開発したものであったため、日報を少し変更するだけでも高額なお金がかかりました。さらに、そのシステムの保守期限も迫っている状況です。
「せっかくシステムを変更するなら、営業の業務内容を知っている自分たちで作りたい。営業にとって関係が近い営業企画部でシステムを運営・管理できる方が、スピード感を持って対応できると考えたんです」と橋本氏は振り返ります。
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これらの課題を解決するため、①医薬品と医療機器の部門で情報共有ができる・②医薬品の部門の日報を変更できる・③自分たちで作れるといった条件を満たすシステムを、いくつか比較・検討しました。
その中で、以前から展示会で知っていたkintoneが一番適しているのではないかと考え、2019年に安東氏はkintone導入相談カフェに足を運びます。
kintone導入相談カフェでサイボウズ社に相談した結果、上記3つの条件を満たせそうだと感じました。まずは5ユーザーで契約し、自分たちでアプリを作成して使っていけるかどうかのテストも含めてはじめることにしました。
「kintoneなら自分たちでできそうだし、コストも抑えられると思ってやってみることにしたんです。医薬品の部門は自分(安東氏)が、医療機器の部門はこういうことが得意そうな橋本さんに声をかけたんです。いろいろやりたいことはあったけど、まずは日報を作るところからはじめました」(安東氏)
安東氏と橋本氏はそれぞれ以前は営業を担当していたため、日報に入力すべき項目は熟知しています。日報アプリを作成したら、それぞれユーザーにも意見をもらって改善していくことを半年ほど繰り返して、日報アプリを作り上げていきました。
■ユーザーの全ての要望に応えられるのはカスタマインしかなかった
ユーザーの要望に耳を傾けながら日報アプリを作成していく中で、基本機能では実現が難しいことが出てきます。そこで、安東氏と橋本氏は再びサイボウズ社に相談しました。
「悩んでサイボウズさんに相談したところ、カスタマインを紹介してもらいました。これならユーザーの全ての要望に応えられそうだ!ということが決め手になりました。他のプラグインも比べましたが、ユーザーの痒い所に手が届くのはカスタマインしかなかったですね」(橋本氏)
こうしてkintoneとカスタマインを活用すると決めた同社。医薬品の部門でそれまで使用していたシステムの保守期限が迫っていることから逆算して2020年12月を本番リリースと決めました。それに向けて、医薬品と医療機器の営業を中心とした1200ユーザーで活用するべく、日報アプリを仕上げていきました。
急にシステムが変わるとユーザーが困ってしまう懸念がありました。そこで、システムの開発と並行してユーザーへの説明会を何度も開催しました。ユーザーは事前にどんなシステムに変わるのか知ることができたので、抵抗なく運用がはじめられます。更にユーザーから意見をもらってそれをkintoneアプリに反映することで、ユーザーの求めるシステムに近づけていくことができました。
「システムが急に変わると嫌がられてしまうので、もうすぐシステムが変わるということを少しずつユーザーに伝えていきました。同時に意見をもらって改善するということを繰り返しましたね」(安東氏)
医薬品、医療機器の部門では営業プロセスが異なるので、それぞれの業務プロセスに合わせて別々の日報アプリを作成、活用しています。日報アプリは別々のものを使用しますが、お互いの活動の情報共有ができることはマストです。医療機関を登録する顧客マスタは基幹システムから持ってきている同じアプリを使用し、顧客マスタからお互いの活動が見えるようにしました。
■法令への対応と、数十件の入力でもカンタンな日報アプリ
医薬品の部門の営業はルート営業を中心としており、多い日には数十件もの医療機関を訪問することがあります。また、活動内容を分析したりメーカーに報告したりすることもあるため、訪問した全ての医療機関名と活動内容を紐づけて1件ずつ日報に登録しなくてはなりません。
これらを踏まえて医薬品の部門の日報は、営業担当者毎に1日1レコードで入力し、訪問した医療機関の数だけテーブルに行を追加する日報アプリにしました。
数十件分テーブル行に入力することは非常に手間がかかります。しかし、ガイドラインに対応するためには毎日必ず登録する必要があるため、テーブルの使い勝手に徹底的にこだわりました。
まず、カスタマインでテーブル行追加ボタンを左に移動するカスタマイズを入れています。
テーブルには活動内容を分析するための集計用フィールドも設置しているため、テーブルの幅が長くなります。数十件分も横スクロールして入力するのは面倒な作業です。また、同じ医療機関で複数種類の医薬品をPRしたときには、医薬品名以外はほぼ同じ情報を複数件登録する必要がありました。
これらを解決するために、カスタマイズによってユーザーに見える必要のないフィールドを非表示にしたり、テーブルの行コピーボタンを設置しています。
「横スクロールなど入力に手間がかかると、ユーザーは入力しなくなってしまいます。そこで、ユーザーに見える必要のない集計用のフィールドは、カスタマインで非表示にしています。ボタンの位置を工夫したりコピーボタンの設置、横スクロールの手間を徹底的に省くことで、ユーザーに入力してもらえる日報アプリになりました」(安東氏)
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医薬品の種類によっては、医薬品メーカーに顧客である医療関係者の反応やアステム社の活動報告を求められることがあります。日報とは別に活動報告を作成し共有することは手間のかかることですが、この情報共有にもkintoneとカスタマインが役に立ちます。
日報アプリの内容をメーカーが閲覧できる共有用アプリに転記して、そのアプリにのみアクセス可能なAPIトークンをメーカーに渡しています。メーカーはAPIトークンを使用して、アステム社の活動状況を把握できるようになっています。
日報から共有用アプリへの転記を効率的に行うため、カスタマインを活用しています。日報の保存ボタンを押すと、特定メーカーに関連する日報データを簡単に共有用アプリに転記できます。
「kintoneとカスタマインを使う前はExcelで情報を渡していました。Excelで集計する時間がもったいないし、送る頃には情報が古くなってしまうこともありました。日報から転記してタイムリーに情報を共有できることは、メーカーとの関係にもプラスになります」(髙野氏)
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■複数人による同一医療機関への活動を見える化できた!
医療機器の部門の営業では診療科ごとの専門性が求められ、診療科ごとに担当が決まっていることがほとんどです。同じ日に複数の担当者が、同じ医療機関の別の診療科を訪れていることも多々あります。また、医療機器の営業活動は1年以上かかることも多く、長期間同じ医療機関への営業活動を行うという特徴があります。
そのため、同じ医療機関に対する活動を複数の営業担当者間で共有できて、長期の活動が見える日報アプリを作成する必要がありました。
これらを満たすために医療機器の部門の日報は、1医療機関1レコードで作成し、複数人の担当者が活動内容をテーブルに入力する日報アプリにしました。
医療機関を訪問するのは、医療機器の提案だけでなく導入済みの機器のメンテナンス等、様々な活動区分があります。たくさん登録された活動内容から必要な情報を見やすくするよう、活動区分ごとにテーブル行を絞り込んで表示できるカスタマイズを入れています。
「他の診療科に最近だれが訪問したのか、すぐに知ることができます。こうした情報を持っていくことで、ドクター達とのコミュニケーションがスムーズになりますね」(橋本氏)
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営業をはじめとした複数人の担当者がテーブルで活動を登録していくと、2つの問題が発生しました。
1つめは、テーブル行が増えていくとkintoneが重くなり操作性が悪くなってしまうことです。1年以上、複数人で活動を入力し続けるためテーブルの行数はどんどん増えていきます。
「最初は1000~2000行は入れられると思っていたのですが、50行くらいで重くなってきたとユーザーから相談がありました。まずいと思ったのですが、既に運用が始まっていたので、テーブルに入力する方法は変えたくありません。そこで、テーブルに入力する運用を変えずに、カスタマインを使って解決する方法を考えました。テーブル行を別アプリのレコードに書き出し、保存するように変更しました。日報アプリはテーブル行数が増えて重くなったらレコードごと削除して、新規レコードを作成するようにしています」(橋本氏)
テーブルに入力するというユーザーの使い勝手は損なわず、重くなったらレコードを削除して新しくするという運用でカバーしています。テーブル行は別アプリにレコードで保存し、日報アプリに関連レコードとして表示しています。そのため、重くて動きが悪くなった元のレコードを削除しても、関連レコードで過去の活動を見ることが可能になっています。
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2つめの問題は、複数人が同じレコードに同時に入力してしまうことでした。
kintoneは同時編集ができないため、後から入力した人は保存できずエラーになってしまいます。
「複数の営業が同じ日に同じ医療機関を訪れることもあるため、同時に日報を入力することがあります。『隣で入力している人は保存できたのに、自分は保存できなかった』と苦情を受けたことがありました。これもカスタマインで同時編集ロックをかけることで、すぐに解決できましたね」(橋本氏)
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■痒いところに手が届く、カスタマインがあるからユーザーが活用してくれた
このように医薬品、医療機器の部門それぞれユーザーの要望に合わせてたくさんのカスタマイズを入れて活用しています。ユーザーに寄り添いながら開発を進めてきた安東氏、髙野氏、橋本氏にカスタマインを導入した効果を伺いました。
「カスタマインはユーザーにとっての痒いところ、不便なところを解消してくれると思っています。ユーザーの要望に合わせてカスタマインを使うことで、ほとんどの要望に応えることができています」(安東氏)
「ユーザーに言われた時は無理難題かと思ったけど、カスタマインがあればできてしまった、ということが多々あります」(髙野氏)
「機能もどんどん増えて、ほとんどのことが解決できるのではないかと思っています。カスタマインがあることで、ユーザーがkintoneを活用してくれています」(橋本氏)
最後に今後の展望を伺いました。
「現在、私自身の所属する部署が変わったので、医薬品の部門は髙野さんに引き継いで任せています。異動した先でも、kintoneとカスタマインを活用して部署専用のマスタアプリを作成しています。今の部署には私以外にもう一人kintoneとカスタマインを触れる人もいるので、ますます活用を進めていきたいですね」(安東氏)
kintoneとカスタマインでの業務改善を開始してもうすぐ3年になる同社では、活用する部門が拡大していっています。
「今は物流部門で活用がはじまっています。医療機器の貸出用デモ機があって、その管理をkintoneで行っています。今どこで誰が使っていて、いつから次の人が使えるのか、という情報がわかりやすくなりました。こうした活用の広がりで、現在kintoneアプリは常時500個くらいあって、カスタマインも200~250くらいのアプリで使っていますね」(橋本氏)
「物流部門だけでなく、フォレストホールディングスの経理部門でも活用しています。このようにkintoneとカスタマインでの業務改善を他の部門にも展開していこうと思っています。橋本さんの本来のミッションではないのですが、3年で培ったノウハウを活かして、中心になってグループ全体の業務改善を進めていってほしいですね」と平尾氏に締めていただきました。
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取材日2023年12月