奄美市役所様 事例紹介

鹿児島県奄美市役所 商工観光情報部
デジタル戦略課 課長 押川 裕也 様
主査 森田 侑子 様
主査 川元 加菜恵 様

鹿児島県奄美市は、鹿児島市と沖縄市のほぼ中間地点にある奄美群島の大島本島にあります。奄美大島の面積は沖縄本島の8割ほどの大きさで、日本の離島の中では佐渡島に次ぐ大きさです。奄美市は奄美大島の北部にある拠点都市で、人口は約4万1000人、大島紡や黒糖焼酎が特産品です。令和3年7月には「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」が世界自然遺産に登録され、話題を集めました。

奄美市役所がkintoneを導入したのは2017年でした。奄美市では、大きな台風の直撃を受けた人たちが避難する避難所を開設することがあります。その際、避難した人たちの人数や属性などの情報がシームレスに共有できないという課題がありました。そこで、市民の皆様の安全を確保するためにも、クラウドでリアルタイムに情報を得られるようにkintoneを活用しました。

その後、市役所内で選挙情報を共有するなどkintoneの活用が進みましたが、2020年になって、市民向け宿泊・体験プログラム事業の申し込みを受け付ける仕組みをkintone化するにあたり、kintoneの基本機能だけでは対応できない課題が発生しました。その解決のため、gusuku Customineを導入していただきました。

今回は、「市役所スタッフの負担を軽くするだけではなく、市民の皆様の目線に立ったシステムを作ることができる」と、kintone x gusuku Customineで、様々な業務で利用するアプリをカスタマイズし業務効率を改善したしている鹿児島県奄美市役所 商工観光情報部デジタル戦略課 押川裕也課長とデジタル戦略課の森田侑子主査、川元加菜恵主査に改善の経緯や導入効果についてお話を伺いました。

左)森田氏 中央)押川氏 右)川元氏

■避難所の開設状況や選挙時の投票状況を把握するためにkintoneを導入した

2017年、奄美市役所では、台風の被害が出そうなときに開設する避難所の管理を行うためにデータベースサービスを探しました。奄美市全体で避難所は約140箇所ありますが、何人避難しているのかを把握する必要があります。災害対策本部ができた時には、マスコミからの問い合わせも頻繁にあるそうです。そこで、kintoneの無料試用を行いました。

従来は、避難所を開設したら電話で福祉部に連絡が届き、福祉部がとりまとめて本部に情報を上げていました。そのため、どうしても報告に時間差が出てしまうのが課題でした。ここをkintone化することで、避難所を開設した担当者が入力すると、関係者全員が避難所の状況を把握できるようになりました。リアルタイムの情報共有ができたことで、kintoneを正式に導入することになったのです。

「kintoneが使えることがわかったので、選挙の投票速報でも使ってみました。選挙の際は、一定時間ごとに投票所から選挙管理委員会事務局へ投票した人数を報告しなければなりません。以前は電話で報告しており、オペレーターが話を聞きながら紙にメモし、その後Excelに打ち込んでいました。ここをkintone化し、投票所で入力してもらえば、本部でもすぐ集計情報を見られるようになります。これは便利だと、kintoneの活用が広がっていきました」(押川氏)

初期の避難所状況管理(避難状況入力蓄積)

市役所の観光課が行っている市民向け宿泊・体験プログラムの事業でも、kintoneとgusuku Customineを活用しました。市民が奄美大島の魅力を再発見するための事業で、ホテルや体験プログラム事業者に直接申し込みを行います。以前は、ホテルや事業者側は1週間に1度、申し込み状況をとりまとめて事務局に報告していました。

しかし、このとりまとめのタイムラグが原因で、予算を大幅に超えて申し込みを受け付けてしまい、後から予算を追加しなければならない事態が生じることがありました。そこで押川氏のところに、電話での申し込みではなくWebウェブから申し込めるようにして、リアルタイムに申し込み総額を把握したいという相談が入りました。

市民からの申し込みをkintoneで受け付ければ、解決できそうです。当然、市民はkintoneアカウントを持っていないので、この部分は外部のkintone連携サービスを使ってWebフォームから入力してもらうことにしました。しかし、これで情報の登録はできるものの、入力時に申し込み済み金額の合計を表示する点は、まだ解決できていません。

「そんな時、大阪で開催されていたkintoneのイベントに参加しました。gusuku Customineのブースで資料をもらって検討したところ、色々なことができることを知り、導入することになりました」(押川氏)

■やりたいことをgusuku Customineで次々と実現した

体験プログラムへの参加者の情報が登録されたアプリをgusuku Customineでカスタマイズし、申し込みの累計金額を表示できるようにしました。さらに、予算の限度に近づいたらその欄に色がつくようにして、受付をストップできるようにしました。これで、現在どのくらい申し込みが来ているかをリアルタイムに確認できるようになり、予算を超過して受け付けてしまうというトラブルを回避できるようになりました。

市民向け体験プログラム申込管理アプリ

押川氏はさらに他のアプリでも様々なカスタマイズを行いました。最も利用しているのが、「一覧画面にキーワードで検索する検索フォームを設置する」という機能です。

「最初は本当に簡単なことから始めました。検索フォームを追加したり、当時は私一人で使っていたので、コメントを非表示にしたりしました。そのうち、少しずつ勉強して、色々できることがわかってきました。次にチャレンジしたのが自動採番です」(押川氏)

市役所では職員検診でレントゲン検診を行っているのですが、従来はExcelで管理していました。そこにフィルムの番号を入力するのですが、ある時番号を間違えて入力してしまい、違う人の結果を渡してしまったことがあるそうです。どうにかならないか、と押川氏に相談があり、だったら自動採番で対応できるのではないか、と考えました。

職員検診時、職員が受付に来たらアプリ上に追加した検索フォームで名前を検索し、受付済みのボタンを押すと、gusuku Customineが自動採番してくれるようにしたのです。人が番号を入力する必要がないため、ミスもなくなりました。

自動採番カスタマイズ(上)を実装した検診受付アプリの一覧画面

「最近使って便利だったのは、gusuku CustomineでExcel出力する機能です。市役所では約120台の公用車を管理していますが、今年の4月に法改正があり、酒気帯び確認台帳や運行管理台帳で、誰がどこまで運転したのか、酒気帯びをしていないか、などを確認するようになりました。従来は、その2つを別々のExcelで管理していましたが、中身はほぼ同じです。それぞれの担当課がそれぞれExcelを作るのは効率が悪すぎるので、kintone化しました」(押川氏)

外部のWebフォームサービスを利用してkintoneに運行記録を入力するようにしました。従来は、紙に記録し、電卓を叩いて運行距離を出し、それをExcelに打っていました。翌月初めには、すべての公用車に置いているその用紙を回収し当月分に差し替えるために職員が回るなど、作業負担も大きかったそうです。

そこでkintoneでペーパーレス化を実現しました。とはいえ、Excelの帳票は出力して保存しておく必要もあります。そこで、押川氏は、gusuku CustomineのJob Runner(※)を使い、翌月に前月分の記録を自動でExcelファイルに出力するようにしました。

※ Job Runner とは:gusuku Customine の機能の1つで、定期的に処理を実行することができる仕組み

「はじめは公用車1台ごとに出力用のカスタマイズを設定したため、台数分だけ同じカスタマイズを繰り返し登録することになってしまいました。これはもっと賢い設定方法があるかもしれないと考えてチャットサポートに質問してみると、すぐに繰り返し処理の設定を教えてもらって解決できました。本当に親切で適切で、そこからはよく相談させてもらっています」(押川氏)

実際の公用車運行管理アプリと、自動出力された車体の運行履歴Excelファイル

■自分が手を動かさなくなるくらい部下がアプリを作れるようになった

押川氏は2019年まで一人でkintoneの運用を担当していたのですが、その活躍もあって2年前にデジタル戦略課が作られました。そして、2021年の4月に森田氏、2022年4月に川元氏が異動してきました。

川元氏はシステムの内製化のために、RPAを活用したりLINEの配信などを担っているそうです。今年、職員検診のデータ受付をする際、以前に押川氏が作ったアプリを参考にgusuku Customineでの自動採番にチャレンジしました。

「サポートサイトの記事などは見ない状態でしたが、今年用に書き換えただけなので、感覚的に操作できました。まだ難しいカスタマイズは行ったことがないので、今後は勉強しながら活用していきたいと思います」(川元氏)

森田氏は2021年にgusuku Customineを触った当初、ちょっと難しそうだと感じたそうです。しばらくはkintoneのみで業務を行っていましたが、kintone導入のきっかけになった「避難状況入力」アプリが現場に対応しきれなくなってきたためアプリの改善に取り組むことになりました。

従来のシステムでは、避難所の管理者が避難してきた人の情報を1件1件聞き取りながら入力していました。しかし、2020年の台風の際には、1か所に1000名以上の避難者が集まり、入力が間に合わなくなってしまいました。そこで森田氏は、可能な人には自分で情報を入力してもらえるように、アプリを作り直すことにしました。

避難者がWebフォームに入力すると、kintoneに情報が入ります。自分で入力できない人のみ、これまでどおり管理者が入力します。そして、その避難所に何人いるのか、収容可能人数と比較して何%の人がいるのかを、gusuku Customineでリアルタイムに集計できるようにしました。そして、その結果をkintone連携サービスで外部に公開し、マスコミがいつでも確認できるようにしたのです。

「サポートサイト上にgusuku Customineのカスタマイズ例がたくさんあるので、参考にしました。説明どおりに設定したらできるんだ、すごく便利だな、という印象を持ちました。最初は難しそうだなと思ったのですが、チャレンジしたら2日間くらいで簡単にできました。これから本格運用に向けて確認・修正を進めていきます」(森田氏)

新しい避難所状況管理の仕組み

最後に、今後の展望を伺いました。

「最近、gusuku Customineの使い方がわかり始めました。今までkintoneの基本機能だけを使っていた時に諦めていたことがgusuku Customineで実現できそうなので、過去に作ったアプリの改修をしていきたいと思っています」(森田氏)

「私がgusuku Customineでどこまでどうできるのか、まだ把握できてない状況ですので、まずはそこから勉強して活用していきたいと思います」(川元氏)

「現在、kintoneは奄美市役所の中でみんなが知っているくらい広まりました。今はデジタル戦略課にアプリの制作依頼が来ていますが、やはり現場でkintoneアプリを作れるようになった方がいいと思うので、引き続き活用を進めていきます。そして、kintoneをより便利に使うためにはgusuku Customineが必要です。こちらも森田や川元を中心に使える人が増えています。最近、私が手を動かすことがすくなくなって、ちょっと寂しいです(笑)」と押川氏は締めてくれました。

取材2022年9月