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年間3,600時間の業務削減を実現!業務効率化の効果をさらに高めるkintoneとカスタマイン


焼津市役所
行政経営部 DX推進課 DX推進担当 係長 鈴木 寿彦 様
行政経営部 DX推進課 DX推進担当 主査 田宮 良浩 様
健康福祉部 健康づくり課 保健医療担当 主査 有賀 友彦 様
静岡県焼津市は、駿河湾に面した港町で、豊かな海の幸が魅力です。焼津港と小川港、大井川港の三つの港からは天然ミナミマグロやカツオ、サクラエビなど多彩な魚介類が水揚げされ、全国でも有名なグルメスポットとして知られています。港町の風情は「浜通り」に残り、歴史的な家並みや漁業文化を体感することができます。自然の魅力も豊富で、海岸線からは富士山を望む絶景ポイントが点在し、特に大崩海岸や小川港からの景色は訪れる人々に感動を与えています。
そんな自然と人情、そして美味に満ちた魅力あふれる街である焼津市ですが、同時に「ノーコード宣言シティ」として、積極的なDXを推進する自治体でもあります。
多くの自治体が直面するデジタル化の必要性と現場の業務負担というジレンマに対し、焼津市役所は「kintone」と「gusuku Customine(以下、カスタマイン)」の全庁導入という大きな一歩を踏み出しました。
今回は、導入から約1年で年間3,600時間もの業務削減という大きな成果を達成した経緯と、kintoneの可能性を最大限に引き出したカスタマインの役割について、焼津市行政経営部 DX推進課 係長 鈴木寿彦氏と健康福祉部 健康づくり課(元・DX推進課)主査 有賀友彦氏、そして有賀氏の後任であるDX推進課 DX推進担当 主査 田宮良浩氏の3名にお話を伺いました。

■ノーコード宣言から始まるkintone活用とアナログ業務の解消
kintoneとの出会いは2020年、デジタル部門に在籍していた有賀氏(現・健康づくり課)が参加した近隣市主催の勉強会でした。「前職がシステム関係だったこともあり、プログラミング言語なしで簡単に画面が作れることに衝撃を受け、『これはすごい時代が来る』と感じました」と有賀氏は振り返ります。
この体験に加え、電子手続き関係のノーコードツールを導入し、職員が利便性を実感したことから、「職員自らツールを使って業務改善を行おう」という機運が庁内で高まっていました。この流れが、2023年5月の「ノーコード宣言シティ」への参加表明へとつながりました。
ノーコード宣言シティは、ノーコード推進協会(NCPA)が運営するプログラムで、自治体職員や地域の企業・団体がノーコード技術を使い、効率的な業務改善や地域活性化を目指すための取り組みです。
「ノーコードツールを活用した業務改善」という方針が定まり、使用するサービスを検討し始めました。他社のツールも候補に挙がりましたが、操作感の良さ、そしてコロナ禍対応などで他自治体の活用事例が豊富に存在していたことが決め手となり、kintoneが第一候補になりました。
費用対効果など、予算化に向けた検討がなかなか進まない中、取引のあったITベンダーから、全職員分のkintoneライセンスと各種プラグインを1年間無償で利用できる「自治体まるごとDXボックス」の提案があり、焼津市は本格的なkintone導入へと舵を切りました。
庁内には、属人化されたマクロが組み込まれたExcelファイルも多く、作成した人が異動するとメンテナンスがされにくいなどといった課題もありました。
また、紙によるアナログ手続きやアンケート結果などの転記作業も多く残っていました。
kintoneによるデータベース化は、こうした手入力、転記といった非効率な業務を解消する大きな一歩でした。ただ、単にkintoneの導入だけでは複雑なExcelマクロで行っていた処理や、現場が求める細かな画面制御を完全に再現するのが難しい場面もありました。
■基本機能の壁を打ち破る。焼津市がカスタマインを選んだ理由
現場の要求に応える突破口となったのがカスタマインでした。当初、無償のプラグインも検討していましたが、無償プラグインではサポートや万が一の際の責任の面で課題があったことからカスタマインを選択しました。
「kintoneを全庁に対し導入している大規模先行自治体が、カスタマインを使っていたことも決め手になりました」(有賀氏)
実際にカスタマインを試用し始めて有賀氏が驚いたのは、kintoneアプリの検索機能が劇的に使いやすくなったことでした。カスタマインを使うと、検索フォームを簡単に作れるので、すべてのアプリに効果があるとすぐに思いました。
さらに、帳票出力の自由度の高さも魅力的でした。当初は他の帳票プラグインも検討しましたが、カスタマインは出力回数の制限がなく、明細行の制御など、現場が求める複雑なレイアウトにも柔軟に対応できることが分かりました。
導入の決め手は機能だけではありませんでした。アールスリーインスティテュートの手厚いサポート体制も、焼津市役所の背中を押しました。
「アールスリーさんは『定期打ち合わせをしましょう』と提案してくれました。また、その場で疑問を解消できるだけでなく『こんなこともできますよ』と新しい活用法を教えてもらえたため、打ち合わせのたびに新たな発見がありました」(有賀氏)
当初、カスタマイズできるアプリ数が10個までのプランと、上限のない「年額1000プラン」との間で迷いもありました。しかし、必須機能である検索フォームを多くのアプリに採用したい、という明確なニーズがあったため、10個の制限はすぐに超えることが目に見えていました。そこで、年額1000プランを契約しました。
■「カスタマインなしでは不可能だった」高度な業務アプリ開発
カスタマインの導入により、焼津市役所のアプリ開発は飛躍的に進化しました。現在利用しているアプリは約130個に上り、その多くでカスタマインを活用しています。中でも「カスタマインがなければ絶対に不可能だった」と有賀氏が断言するのが、学校給食の収納管理などを行う「給食費管理アプリ」です。この業務は従来、複雑な関数とマクロが組み込まれた巨大なExcelファイルで管理していました。そのため、管理が属人化していました。
この業務をkintoneに移行するにあたり、カスタマインが活躍しました。例えば、月次処理でデータが確定した後は、担当者が誤って数値を変更してしまわないよう、関連するフィールドを「無効化」する制御を加えました。
カスタマインをアプリ間のデータ連携にも活用しています。「給食費月別管理」アプリの画面上に配置した「徴収台帳アプリへ」のボタンを押すと、別アプリの「徴収台帳アプリ」がその学校と年度を絞った状態で表示されます。さらに、「給食費月別管理アプリ」で未納者の納付情報を登録すると、そのデータが帳票出力用の別アプリに自動で転記される仕組みを構築しました。
「ルックアップではなく、データを丸ごとコピーする必要があったのですが、カスタマインで簡単に実装できました」と有賀氏。

ほかにも、テーブル内の行数を自動でカウントして別フィールドに集計するなど、Excelマクロで実現していた細かな処理を、カスタマインによって次々とkintone上で再現していきました。
また、カスタマインはkintoneアプリの操作性を大きく向上させることができることも職員から好評を集めています。
「私が作成するアプリのほとんどに『一覧画面のフィールド名を折り返し表示にする』『一覧画面の1行文字列を折り返し表示にする』『一覧画面の複数行文字列を折り返し表示にする』を適用し、全文表示させています。また、複雑だった画面もタブ表示で整理するなど、誰にとっても直感的で使いやすいアプリを作成しています」(田宮氏)

細画面を開かずに確認できる一覧画面

カスタマインは庁内の業務を効率化するだけではなく、外部システムとの連携や市民サービスの向上にも役立っています。その代表例が「設計書公開システム」です。従来、市が発注する建設工事の設計図書は、事業者からの公文書公開請求に基づき、職員が手間と時間をかけて対応していました。このプロセスをデジタル化し、市民(事業者)と職員双方の負担を軽減するために構築しました。
事業者が直接kintoneにアクセスすることはできないため、データ閲覧用の仕組みをkintoneとカスタマイン、外部のWebフォーム・情報公開サービスを組み合わせて構築しました。
事業者がWebフォームで閲覧申請を行うと、申請情報がkintoneに登録されます。その際、kintoneのWebhook通知によってカスタマイン側にデータが送信され、kintone内の情報と紐付けが行われます。これにより、申請した事業者はWeb上のデータ閲覧用の画面で必要な情報を閲覧できるようになります。
さらに、セキュリティ面を考慮し、閲覧期間を「申請当日限り」とする仕組みも設けています。カスタマインのJob Runner(ジョブランナー)の定期実行カスタマイズを活用し、毎日深夜0時になると登録済みのメールアドレスを論理削除し、翌日にはデータ閲覧用の画面にログインできないようにしています。

有賀氏は2025年4月に健康づくり課へ異動しましたが、新しい異動部署でも現場の最前線でkintoneとカスタマインを活用しています。
「まちなか涼みどころ管理アプリ」は、熱中症対策として市民が一時避難できる施設(クーリングシェルター)を管理するアプリです。カスタマインは、関係機関への報告用やオープンデータ用など、用途ごとに異なる形式のCSVファイルをボタン一つで出力する機能を実現しています。
「カスタマインならファイル名も固定化できるため、担当者が変わっても迷わず操作できます」と有賀氏。
さらに、オープンデータの定義に合わせ、レコード番号に「0埋め」したIDを自動採番する機能もカスタマインで実装。こうして整備されたデータは、焼津市が市民向けに提供している地図サービス「スマートマップ焼津」に連携され、市民がスマートフォンから最寄りの涼みどころを検索できるサービスとして提供されています。


地図サービス「スマートマップ焼津」画面
■誰でも使える身近さで実現―カスタマイン×kintoneの業務改善とその先へ
kintoneとカスタマインの導入は、焼津市役所に大きな変化をもたらしました。
「kintoneだけで構築していると、どうしても基本機能の壁にぶつかってしまうことがあります。その結果、『なんだ、できないんだ』と感じてしまう職員も出てきます。そこでカスタマインを見せると、『こんなことまでできるんだ!』と驚かれることが多く、興味を持ち続けてもらえるようになります」(有賀氏)
「kintoneだけでも業務改善は進みますが、カスタマインを活用すると、その改善をさらに一段高めることができます。直感的で使いやすい入力画面のkintoneアプリを作れるので、ITを得意としない担当課の職員でもアプリを有効に使いこなせるようになります」と田宮氏も効果を実感しています。
こうした現場の「あと一歩」に応え続けた積み重ねが、年間3,600時間という業務削減効果を生み出しました。
カスタマインを活用している庁内職員からも、よい反応が集まっていると田宮氏は語ります。
「カスタマインを利用している職員からは、『プログラミングの知識なしで組み立てられるのがありがたい』、『kintoneでできることが格段に広がった』などの声が寄せられています。また、アールスリーインスティテュート様が提供している分かりやすいヘルプページやチャットサポートなど、フォロー体制がしっかり整っているのも心強いです」(田宮氏)
これらの前向きなフィードバックが、現場でのカスタマイン活用を一段と後押ししています。
上司の鈴木氏は 「導入当初、全庁調査のアプリ化などを通じて、全職員が業務の中でkintoneを操作する環境をあえて作り、利活用を広げていこうと考えていました。その全庁向けアプリでカスタマインを活用し、検索しやすくしたり、タブ表示で見やすくしたことが、職員が手軽にkintoneを使うきっかけになったと思います。カスタマインがなければ、ここまでkintoneは広がらなかったかもしれません」と分析します。
焼津市役所の挑戦はまだまだ続いています。有賀氏は異動先の健康づくり課で、乳幼児検診の受付業務をQRコードで効率化する新たな仕組みを構想しています。DX推進課では、田宮氏を中心に全庁の業務やデータフローの設計再編や人材育成に力を入れています。
最後に、現在DX推進を担当されている田宮氏に今後の展望を伺いました。
「カスタマインは kintone の業務改善効果をさらに数段高めることができるツールだと感じます。職員にはこうしたツールを積極的に利用してもらい、さまざまなデータを活かしてDXを推進し、今後も業務効率化の先にある『より質の高い市民サービス』を提供していけたらと考えています」(田宮氏)
2025年9月