株式会社ブシロード様 事例紹介

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ミスを責めない、無理をさせない。現場の「うっかり」を仕組みで支える業務改善

株式会社ブシロード
システム部 システム管理チーム 渡邊 宗一郎 様

株式会社ブシロードは、トレーディングカードやキャラクターコンテンツを軸に、さまざまなエンターテイメント事業を展開する企業です。
同社では、アニメやゲーム、キャラクターなどのIP(知的財産)を扱いながら、社内外と連携して業務を進めています。ここでいうIPとは、作品やキャラクターそのものに加えて、それらを利用するための権利を指します。

数多くのIPを扱う同社では、申請や許諾、案件管理など、正確さとスピードの両立が求められる業務が日常的に発生しています。
その一方で、こうした業務の多くは、長年Excelを中心に運用されていました。社外から受け取ったフォーマットを確認し、別のファイルへ転記し、さらに別のExcelへと引き継いでいくような、「Excelのバトンリレー」が常態化していました。

業務量の増加とともに、管理の煩雑さや属人化が課題となってきたため、同社では業務を支える仕組みを見直す必要性が高まっていきました。こうした背景から導入されたのが、kintoneとgusuku Customine(以下、カスタマイン)です。
今回は、システム部 システム管理チームでkintoneとカスタマインの導入・運用を担当する渡邊 宗一郎氏に、導入の経緯から活用の工夫、導入後の効果についてお話を伺いました。

課題:「Excelのバトンリレー」による転記ミスと作業負荷が限界に。kintone導入に踏み切った理由

同社では、アニメやゲームのIPを利用した商品化やイベント展開が活発に行われています。この申請や許諾、案件管理の現場は、長年Excel中心の運用に頼ってきました。
社外から届いたExcelを確認し、社内の管理用ファイルへ転記し、さらに請求用ファイルへ反映していく。こうした「Excelのバトンリレー」が常態化しており、業務量の増加とともに転記ミスや確認作業の負荷が深刻な課題となっていました。

また、営業現場における受注・発注や予実の管理についても、Excelによる属人的な運用が続いており、情報の集約に手間がかかる場面が多々ありました。こうした状況を受け、現場から「業務を効率化できる仕組みがほしい」という相談が、システム部へ寄せられるようになりました。

こうした相談を受けた渡邊氏は、IP管理業務をはじめとする複数の業務を統合的に管理できるツールの導入を検討しました。
kintoneをはじめ、他のクラウドサービスや個別開発も視野に入れながら検討を進める中で、最終的に選んだのがkintoneでした。決め手となったのが、「コストバランス」と「柔軟性」です。業務に合わせてアプリを作成し、現場の反応を見ながら改善を重ねていける。そうしたkintoneの特性が、同社のニーズに合致していると判断し、2021年4月に導入を決定しました。

導入は、特に業務負荷の大きかったIPのライセンス管理業務から始まりました。まずは、事業部門で運用を開始し、そこで得た手応えを背景に、バックオフィス業務へと活用範囲を広げていきました。

導入:「これ以外ない」と確信した瞬間。片っ端からプラグインを試した末に出会ったカスタマイン

kintoneを導入しアプリの作成を進める中で、渡邊氏は次の課題に直面しました。それは、「kintoneの基本機能だけでは、業務ごとに求められる細かな動きや制御をすべて実現するのは難しい」という点でした。

そこで、機能拡張の手段として、さまざまなプラグインの検討を開始しました。無料のものから有料のものまで、業務に使えそうなプラグインは実際に導入し、どこまで対応できるのかを一つひとつ検証していったといいます。JavaScriptによる独自開発は行わず、あくまで既存の拡張手段を使いながら、実現方法を探っていきました。

そうした検証の過程で出会ったのが、カスタマインです。
kintone導入からほどなくして、2021年6月にはフリープランでの試用を開始。設定によって画面の挙動や入力制御、処理の流れまで細かく調整できる点に、これまで試してきたプラグインとは異なる手応えを感じました。
「片っ端からさまざまなプラグインを試すなかで、カスタマインは良い意味でおかしい、異質だと感じました。なんだこれは、すごいなと。ほかにはないサービスで、これ以外ないと確信しました!」(渡邊氏)

比較対象が見当たらない唯一無二のサービスゆえに、社内の稟議で他社比較を示すのに苦労しました。最終的には、自力でJavaScriptを書く工数や、将来的なメンテナンスコストと比較し、まずはスモールスタートの年額4プラン(4アプリにカスタマイズ可能)で導入を決定しました。

導入当初は、カスタマインを含め、複数のプラグインを併用しながら運用を進めていきました。
業務ごとに必要な機能を試し、実際の運用を通じて調整を重ねていく。そうした試行錯誤を続ける中で、kintoneとカスタマインを組み合わせた活用が、同社の業務に徐々になじんでいきました。

活用:「迷わせない」「困らせない」を徹底した3つのアプリ

申請の迷いと手戻りを防ぐ「名刺作成アプリ」

kintone導入初期から現在に至るまで活躍しているアプリのひとつが、「名刺作成アプリ」です。
同社には複数のグループ会社があり、海外展開も進んでいることから、名刺一つとっても英語表記の有無や兼務による複数枚の作成など、申請内容が多岐にわたります。
そのため、このアプリにはkintoneの基本機能だけではカバーしきれない、細かな工夫が随所に盛り込まれています。

たとえば、kintoneのレコード追加ボタン(+)は、慣れていないユーザーにとって分かりづらい場合があります。
ユーザーの「どこから申請すればいいのか分からない」という声が上がったことを受け、画面上に「申請画面を開く」ボタンを設置。申請をスムーズに進める導線を整えました。

また、会社名や部署名など、選択肢があらかじめ決まっている項目については、カスタマインを活用して入力方法を工夫しています。ルックアップをプルダウン形式に変更することで、入力の手間を軽減しました。
さらに、関連レコードを用いて名刺のデザイン画像を画面上に表示。申請時に完成イメージを確認できるようにすることで、申請内容の認識のズレや確認の手戻りを防いでいます。

申請時に完成イメージを確認できる

このように、kintoneの基本機能とカスタマインによるカスタマイズを組み合わせながら、使う人の視点で画面や操作を整えてきました。単に申請をデジタル化するだけでなく、ユーザーが迷わず、安心して使える状態を目指しています。

確認漏れを人のミスにしない「打刻時間エラー集計アプリ」

勤怠管理に関する確認業務を支えているのが、「打刻時間エラー集計アプリ」です。
勤怠管理システムの打刻データと入退室管理システムのデータを照合し、乖離がないかをチェックしています。

それぞれのシステムから出力したCSVデータをkintoneに取り込み、カスタマインで入退室時刻と打刻時刻の差を算出しています。一定時間以上の差があるデータのみを抽出し、確認が必要なケースを一覧で把握できるようにしています。
一覧画面では、確認が必要なレコードのフィールド背景色を変更することで、ひと目で気づけるよう工夫しました。

一定以上の差異があったユーザーは、理由を選択または記載した上で、「この内容で報告する」という意思表示として入力完了のチェックを入れて報告する運用としています。そのため、入力完了のチェックが入っていない状態で保存しようとすると、「チェックマークを入れて保存しますか?」とダイアログで確認してくれる機能を実装。ユーザーの「うっかり」をシステム側でカバーすることで、差し戻しや確認の手間を未然に防いでいます。

さらに、カスタマインのJob Runner(定期実行タスク)を活用し、確認が必要なデータを抽出して、社員へSlack通知を行う仕組みも整えています。確認作業を後回しにせず、確実に対応できるよう、日々の運用を支えています。
単にデータを集計するだけでなく、「気づける」「分かる」「忘れない」という一連の流れを、カスタマインの設定で実現しています。

迷わず進めて、申請時に必要な情報がそろう「請求書発行依頼アプリ」

事業部門から経理部門へ請求書の発行を依頼するために活用されているのが、「請求書発行依頼アプリ」です。
請求書発行業務は、取引先情報や請求内容・金額など、扱う情報の幅が広く、入力項目が多くなりがちな業務でもあります。

そこでこのアプリでは、カスタマインを活用して画面構成や入力の進め方そのものを見直しました。
入力項目を内容ごとに整理し、タブグループとして表示することで、必要な情報へ迷わずたどり着けるよう工夫しています。項目数が多い業務でも、確認しながら落ち着いて入力できる画面設計としました。

さらに、入力ルールを徹底できるよう、条件付きの必須チェックや正規表現によるエラーチェックを細かく設定しています。これにより、入力項目が多く抜け漏れが発生しやすい業務でも、正確なデータ入力を担保できる仕組みを実現しました。

必須チェックやエラーチェックを設定して正確な入力を担保している

条件付きの必須チェックや正規表現によるエラーチェックのカスタマイズの一部

工夫のひとつとして、請求先の選択方法があります。
同社の社内ルールにより、ルックアップは、一意の値をキーとして設定することになっています。
請求先マスタの場合、一意となるフィールドは会社コードですが、請求先を検索・選択する際には、会社コードではなく会社名や名称を用いたいという要件がありました。
そこで、ルックアップは使わずカスタマインのダイアログを活用してレコードを選択できるようにしています。名称やコードなどをもとに柔軟に検索できるため、法人・個人を問わず適切な請求先を選択・入力できる仕組みを整えました。

さらに、事業部門がExcelで管理していることも多い明細データについては、CSVファイルをそのまま取り込める仕組みを用意しました。
ドラッグ&ドロップでkintoneのテーブルへ一括取り込みができるため、Excelからの転記作業をなくし、入力ミスの防止と作業時間の削減につなげています。

この仕組みによって入力ミスや記入漏れによる差し戻しを防ぐことで、事業部門と経理部門のやり取りを最小限に抑え、スムーズに業務を進められる仕組みを実現しました。

効果:「気づいたらすぐ直せる」から、改善が止まらない。カスタマインが支えた運用の変化

kintoneとカスタマインの活用によって、同社の業務は「改善を前提に回し続ける」進め方へと変化していきました。

名刺作成をはじめとする各種業務アプリは、Excel中心だった業務の進め方を見直す中で生まれました。
転記や確認に追われていた状況から脱し、業務の土台が整ったことで、改善は特定の業務にとどまらず、他の業務へと広がっていきました。
その背景には、「ここが分かりにくい」「この操作は迷いやすい」といった現場の声に一つひとつ向き合い、業務の流れに合わせて画面や入力、処理を細かく整えてきた取り組みがあります。

こうした改善が各業務へ広がる中で、次に重視するようになったのが、改善を一度きりで終わらせず、日常的に回し続けられる運用でした。

その土台になったのが、当初導入していたプラグインの機能をカスタマインへ集約していく取り組みです。
導入初期は、業務に必要な動きや制御を実現するため、複数のプラグインを試しながら運用を進めていましたが、改善の積み重ねが増えるほど、「どのプラグインが何を実現しているのか」を常に把握する必要が出てきました。
「プラグインをたくさん入れると管理が大変ですし、機能面だけでなく支払いの事務作業も煩雑になります。ペーパーレスを進めているのに、ツールごとの請求書が紙で増えていくのは、本末転倒だと感じました」(渡邊氏)

そこで同社では、これまでプラグインで担っていた機能を整理し、順次カスタマインの設定へと置き換えていきました。
集約にあたっては、カスタマインのカスタマイズ書き出し・読み込み機能を活用し、機能ごとにページ単位で設定を書き出して整理。よく使う機能を再利用できる形で蓄積することで、既存の設定を活かしながら段階的に集約を進めていきました。

その結果、既存の複数のプラグインに頼るのではなく、自社の業務に合った機能を必要な形で使い回せる状態が整いました。挙動や意図を一箇所で把握できるようになったことで、改善の見通しが立ち、新たな要望にも向き合いやすくなっています。
こうした運用を続ける中で活用範囲が広がり、導入から1年後には年額1000プランへと移行しました。スモールスタートから始め、改善を積み重ねた結果としての判断でした。

こうした改善をし続けられる状態を支えているのが、調整のしやすさです。
「仮にこうしたカスタマイズをJavaScriptで対応するとすれば、簡単な修正でも最低15分ほどはかかると思います。それがカスタマインなら、1分程度で終わることもあります」(渡邊氏)

新たなプラグインを探したり、個別にコードを書いたりする必要がなくなったことで、改善にかかる時間や運用・サポートにかかるコストも最低限に抑えられています。
その分、現場から寄せられる細かな要望にも無理なく向き合えるようになり、「気づいたらすぐ直す」という改善のサイクルが、日常の運用として定着しました。

当初の課題を解決しただけでなく、改善が別の業務へと自然に広がり、kintoneとカスタマインを軸としたデジタル化が着実に進んでいく。プラグインをカスタマインに集約し、改善を前提とした運用へと切り替えていったことで、業務改善を止めずに回し続けられる環境が整っています。

今後の展望:ブシロードのエンターテイメントを、足元から支えていく

現在、ブシロードでは管理部門を中心にkintoneとカスタマインの活用が進んでいますが、今後は事業部門への展開も視野に入れ、検討を進めています。申請や管理といったバックオフィス業務にとどまらず、現場の業務そのものを支える仕組みとして、活用の幅を広げていく考えです。

渡邊氏はkintoneやカスタマインを、単に業務を早くするためのものではないと考えています。現場の困りごとに向き合い、業務の進め方そのものを整えるための仕組みとして捉えています。日々の業務の中で感じた小さな違和感を見逃さず、必要に応じて手を入れていく。その積み重ねが、業務全体の改善につながると考えています。
「自分たちの役割は、現場の業務をシステムでラクにすることです。それが結果として、ブシロードが大切にしているエンターテインメントを支えることにつながればうれしいですね」(渡邊氏)

現場に寄り添いながら、無理のない形で改善を続けていく。
kintoneとカスタマインを軸にした同社の取り組みは、これからも進化を続けていきます。

取材2025年12月