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ブラックボックス化したシステムから脱却。担当者が変わっても改善が止まらない組織へ


株式会社ブロードエンタープライズ
施工業務本部 業務改善係 杉山 良樹 様
株式会社ブロードエンタープライズは、「不動産オーナー様のキャッシュフローの最大化」を掲げ、マンション向け高速インターネット「B-CUBIC」やIoTインターフォンシステム「BRO-LOCK」のほか、宅内リノベーション、外壁塗装・大規模修繕など、建物の価値を高める幅広い事業を手がけています。
近年では民泊施設へのインターネット導入など、新たな需要にも対応し、「マンション管理をIoTでスマート化する会社」として、2000年の設立以来、全国で事業を拡大してきました。
契約、施工、メンテナンスといった複数の工程が並行する同社では、長年、情報の分散や属人化が課題となっていました。これらを解消するためにkintoneを導入し、開発会社の支援を受けながら業務に合わせてJavaScriptでカスタマイズを行ってきました。しかし、要件定義や改修を外部に依頼する体制では改善のスピードが上がらず、JavaScriptも次第にブラックボックス化し、業務の変化に柔軟に対応できない状態が生まれていました。
こうした背景から、2022年にgusuku Customine(以下、カスタマイン)を導入し、自社で改善を続けられる体制づくりが進められています。
今回は、施工業務本部 業務改善係の杉山氏に、導入の背景と現場での工夫について伺いました。
課題:外部依存のJavaScript運用が限界に。業務に追いつけなくなったシステム
kintone導入以前、工事日程の調整はホワイトボードで管理しており、担当者ごとに情報が分散していました。事業の拡大とともに業務量が増え、現場では全体の状況を把握しづらいという課題が顕在化していきました。
この状況を改善するため、同社は開発会社の支援を受けてkintoneを導入し、JavaScriptでカスタマイズして機能を整えていきました。しかし、要件定義を外部に依頼する体制では、改善のスピードが上がらず、業務の変化に柔軟に対応することが難しくなっていきました。
さらに、追加されたJavaScriptにはドキュメントがなく、どこで何が動いているか把握することすら難しい状態に陥っていました。杉山氏は当時をこう振り返ります。
「kintoneアプリを開いても、どこに何が仕込まれているのか分からない。触ること自体が怖く、改善したくても中身を読み解けない。JavaScriptが完全にブラックボックス化していました」
このように、改修を社内で進めることは困難で、外部依頼が前提となる仕組みでは業務の変化にスピードが追いつかず、改善は停滞していきました。「いっそ作り替えたほうがいいのでは」という声が上がるほどの状況でしたが、再構築には数百万円規模のコストがかかり、現実的な選択肢ではありませんでした。
カスタマイン導入:止まっていた改善を動かす、新しい選択肢
JavaScriptでカスタマイズされたアプリは、修正や機能追加のたびに開発会社へ依頼する必要があり、社内では対応できない状態が続いていました。業務の変更に合わせて柔軟に改修できず、改善が思うように進まないことが課題となっていました。
そんな中、2022年に当時の担当者が展示会でカスタマインを知り、「これなら自分たちで改修できるのではないか」と導入したことが転機となりました。
カスタマインは、画面上で日本語のパーツを組み合わせて動作を設定できるため、JavaScriptのようにコードを追わなくても内容を理解できます。これにより、業務の変更に合わせて社内で改修を進められる環境が整い、改善のスピードが大きく変わりました。
杉山氏の着任後は、改善を複数名で担当する体制へと発展。属人化しやすいJavaScriptから脱却し、自社で改善を続けられる仕組みが形づくられていきました。
「特別なプログラミング知識がなくても扱えるので、担当が代わっても運用が止まりません。これは大きな違いですね」
活用アプリ:現場が迷わず動ける仕組みを育てる、カスタマイズの工夫と広がり
カスタマイン導入により、同社では自社でアプリを改善できる体制が整いました。
特に変化が大きかったのが、入居者と工事日程を調整する「宅内調整業務」です。
電話中心の調整を一新した、宅内調整アプリ
これまで宅内調整は1物件につき1つのExcelで管理され、営業担当が電話で入居者と日程調整を行い、決まった内容を手入力する流れでした。
しかし、電話がつながらない、訪問しても不在が続く、施工業者の完了連絡も電話頼りと、負担の大きい運用が続いていました。
そこで、宅内調整の流れ全体をアプリで一元管理できる形へと再構築しました。申し込みから工事当日までをつなぐ一連の流れは、複数のアプリを連携させることで整理しています。
投函文の作成から申し込み、工事までをつなぐアプリ構成
最初の入口となるのが「工事枠・投函文アプリ」です。
部屋番号、工事枠、入居者へ投函する案内文、申し込みフォームのQRコードを登録し、物件ごとに必要な情報をすぐに作成できるようにしました。QRコードや案内文の帳票出力機能もカスタマインで実装し、作業のばらつきをなくしています。
工事枠の空き状況は「工事枠時間アプリ」「工事部屋アプリ」で管理し、入居者がQRコードからアクセスしたフォームには、空いている日時のみが表示されるよう制御しています。
そのうえで、選択された日時と申し込み内容は「宅内調整申込アプリ」に登録され、ダブルブッキングや聞き漏れが防止されるようになりました。

情報を一元化し、現場が迷わない画面設計へ
登録された情報はすべて「宅内調整情報まとめアプリ」に集約され、1物件につき1レコードで管理しています。工事予定はテーブルで一覧に整理されており、現場が状況をすぐに把握できるつくりです。
通常、テーブルは申し込み順(入力した順)に並びますが、カスタマインで工事日が近い順に並び替えるよう調整しています。
「工事日順のほうがひと目で状況がわかるので、現場でも使いやすいんです」

立ち合いが難しい入居者の行には背景色を付け、別途対応が必要な部屋がひと目でわかるようにしています。不要な項目や制御用フィールドは非表示タブにまとめ、画面上には必要な情報だけがすっきり並ぶよう整理しました。
さらに、電話での調整受付にも対応できるよう、専用ボタンを設置。ボタンを押すと必要な項目が表示されるダイアログが開き、入力が完了するとテーブルに自動で行が追加される仕組みを整備しました。
電話受付時もWeb申込と同じ品質で情報が登録されるため、記録漏れを防げるようになっています。
施工業者もこのアプリを参照し、担当部屋の工事状況を確認したり、工事完了の入力を行ったりします。従来のように電話でのやり取りに頼らなくなったことで、連絡漏れや確認ミスは大きく減少しました。現場と施工業者が同じ画面で状況を共有できるようになり、作業の抜け漏れを防ぐ体制が整っています。
また、宅内調整全体をつなぐデータ連携もカスタマインで実装しており、申し込みから工事完了までの流れをスムーズに処理できるようになっています。情報が一貫して扱えるようになり、以前よりも確実な運用が実現しました。
コールセンターの問い合わせ対応を効率化
宅内調整と並んで改善効果が大きかったのが、入居者からの問い合わせに対応するコールセンター業務です。「Wi-Fiがつながらない」「速度が遅い」といった問い合わせを受け付け、その内容を記録・共有します。
以前は受電のたびに内容を聞き取りながらExcelに入力する運用でした。
項目が多く、通話しながらの入力は追いつかないこともあり、過去の同じ建物の問い合わせ履歴を探すのにも時間がかかっていました。
「Excelで管理していた頃は、受電中に過去の問い合わせ内容を探しにいくのが大変でした。同じ建物で似た問い合わせが続いていても気づけないことがあって、もっと早く把握して回答したいという声が挙がっていました」
こうした課題を解決するため、同社では問い合わせ内容を電話しながらでも、簡単に入力や、問い合わせ履歴の検索ができる「コールセンターアプリ」を作成しました。
アプリでは、問い合わせ内容を選択式で入力できるよう整理し、よくある回答はボタンでワンクリックで登録できるようにしました。受電時間や担当者名もボタンを押すだけで自動入力され、話しながら多くの項目を手打ちする必要がなくなりました。

過去の問い合わせ履歴は関連レコードで即座に参照できるため、同じ建物で頻発している障害にもすぐに気づけるようになりました。必要以上に聞き返す場面が減り、対応速度と正確性が向上しています。
さらに、メールで届く問い合わせ内容も同じアプリに登録される仕組みを整備。電話・メールの両方を1か所で管理できるようになり、状況把握が格段に楽になっています。
こうした画面の操作性や自動入力の仕組みはすべてカスタマインで設定しており、問い合わせ対応に必要な情報がひと目で確認できる環境が整い、より落ち着いて対応できるようになっています。
日々の業務を支える、使いやすさの工夫
宅内調整やコールセンター以外のアプリでも、カスタマインを使った改善が広がっています。
入力ミスを防ぐためのダイアログ表示は、特に気に入っている機能です。
「必要な項目だけをダイアログで出せるので迷わず操作できますし、誤入力も減ります。現場からの評判もいいですね」
工事日程が迫った際の注意喚起や、書類に変更があった際に再確認を求めるなど、実際の業務シーンに合わせて活用の場面が広がっています。

発注書などの帳票を確認しやすいよう、添付ファイルフィールドに虫眼鏡ボタンを設置しています。ボタンを押すとPDFがプレビュー表示され、複数ページの帳票もギャラリー形式で確認できるようになっています。出力前のチェックがスムーズになり、作業の精度が高まっています。
「この虫眼鏡ボタンも、ユーザーからすると当たり前の機能として受け止められていると思います(笑) でも、それくらい自然に使ってもらえるのは良いことだと思っていて、便利な仕組みは他のアプリにも展開するようにしています」

社内ではマニュアルも整備しているものの、画面上に説明の吹き出しや必要な操作を示すダイアログを加えることで、マニュアルを開かなくても迷わず使える状態が実現できています。
効果:属人化を乗り越えて。調整・対応の負担から解き放たれた現場
宅内調整や問い合わせ対応の業務をアプリで一元化したことで、現場の負担は大きく軽減されました。
まず定量的な効果です。
宅内調整では、入居者がQRコードから空き日時を選ぶだけで申し込みが完了するようになり、営業担当が1件ずつ電話で調整していた頃と比べて工数は4分の1に削減されました。これまでに累計1,100物件・約2万戸近い部屋の調整を安定して処理できるようになっています。
現場の実感としても、大きな変化が生まれました。
工事完了の連絡もアプリに記録されるようになり、電話時代に起きていた伝達漏れや記入ミスも大幅に減少し、作業の抜けが起きにくい環境が整いました。
問い合わせ対応でも同様に変化が現れています。受電内容をボタンで入力できるようになったことで記録作業が軽くなり、過去の履歴から障害の傾向をすぐに把握できるようになりました。
電話・メールの問い合わせを一元管理できるようになったことで、状況把握と判断が以前よりも確実かつ迅速になっています。
そして何より大きな変化が、属人化の解消です。
従来のJavaScriptカスタマイズは内部の構造が見えず、社内で保守することが難しい状態でした。
「JavaScriptが残っているアプリは、そのJavaScriptが何をしているかわからないので触るのが怖いこともあります。でもカスタマインは設定を見れば意図がつかめるので、引き継いだ立場でも改善し続けられるのが大きいですね」
カスタマインにより動作が日本語で可視化され、後任でも迷わず改修を続けられる環境が整いました。
現在は、杉山氏が中心となり、担当が代わっても運用が止まらない体制が築かれています。
「業務は変わるのが前提なので、担当が代わっても改善が止まらないことが何より大事です。カスタマインはその土台になっています」
展望:属人化しない運用を軸に、育て続けられるシステムへ
同社では現在も、一部のアプリに残るJavaScriptの置き換えを進めています。内容の把握が難しい部分は慎重に扱いながら、対応可能なところからカスタマインへ移行する取り組みを続けています。
改善の中心となっているのが、日常的にkintoneに触れ、社内から寄せられる相談や要望に応えている杉山氏です。現場の声を拾いながら、「使いにくい」をひとつずつ解消していく役割を担っています。
「担当が代わっても迷わず使えて、必要なときに自分たちで直していける環境をつくりたいんです。現場の声が反映されていくほど、さらに良くできると思っています」

同社は、kintoneやカスタマインの新機能にも積極的に目を向けています。
最近ではカスタマインのOpenAI連携機能も試し、メールテンプレートの生成など、業務に応用できる場面を探りながら検証を進めています。
属人化しない運用は、同社が一貫して大切にしてきた考え方です。
使う人が変わっても改善が止まらず、誰でも育てていける環境。それこそが、これからの業務を支える基盤になると捉えています。
kintoneが業務の土台となり、カスタマインが改善を後押しする。
この二つを軸に、同社はこれからも変化に合わせてしなやかに進化し、より高い生産性とサービス品質を目指して歩み続けます。
取材2025年10月
株式会社ブロードエンタープライズ:https://broad-e.co.jp/