リズム株式会社様 事例紹介

kintoneと「gusuku Customine」による内製と外部パートナーを利用した開発とのバランスを見出して効果を上げる

【課題】システム運用、セキュリティの両面から課題を解決するためkintoneを導入

 投資マンションの販売を行っているリズム株式会社、アルファベットでは「REISM」と表記します。RE・ISM=再生主義を社名に掲げ、取り組むのは古くなったものに新しい命を吹き込む事業です。具体的には、中古物件を現代風にリノベーションし、付加価値を与えた上で販売しています。「リノベーションすることで、住む人と持つ人の満足度を最大限に高めるのが当社のミッションです。リノベーションした物件の販売だけではなく、賃貸マンションとしての運営も請け負っています」と事業を説明してくれたのは、リズム株式会社賃貸管理事業部 リーシング事業部 情報システム部の部長を務める弘瀬達也氏です。

 賃貸マンションの運営にはマンションオーナー、入居者、入居者との仲介を行う不動産企業など、多くのステークホルダーが存在します。それらの情報をかつてはMicrosoftAccessで管理していました。しかしデータ量も利用者も多いMicrosoftAccessデータベースの管理は容易ではありません。さらに、セキュリティの問題も顕在化していました。「MicrosoftAccessならデータを書き出すのは簡単ですから、顧客の情報保護という観点からは好ましいとは言いがたい状況でした」と、弘瀬氏は語ります。

 運用上、セキュリティ上の課題を解決するため、リズムはクラウド化の道を探りました。一時期はサイボウズ社のサイボウズOfficeのカスタムアプリにもトライ。しかし結果的に落ち着いたのは同じサイボウズ社が提供するクラウドサービスkintoneでした。「2015年くらいには、kintoneを使い始めていました。クラウドサービスなので運用負担は軽いし、セキュリティ面でも安心して使える業務環境になりました」と、弘瀬氏はかつてMicrosoftAccessで組まれていたシステムとの違いを語ってくれました。

 ただし、いい面ばかりでもなかったようです。「MicrosoftAccessの強力で柔軟なリレーショナルデータベースになじんでいたので、kintoneではデータベース間、アプリ間のリレーションは弱いと感じました。それを補うために、kintone開発のパートナーを探して出会ったのがアールスリーインスティテュート(以下、アールスリー)でした」と弘瀬氏が語るように、最初は開発パートナーとして、アールスリーはリズムをサポートしていました。アールスリーを選んだ理由は「kintoneの開発を得意とする数社に声をかけましたが、一番積極的に対応してくれたのがアールスリーだったから」とのこと。

【選定のポイント】かゆいところに手が届く機能がひとつにまとまったgusuku Customine

 リズムが当初アールスリーに依頼したのは、内製だけでは解決できないkintoneのカスタマイズでした。ITは業務に必要不可欠ではありますが、リズムの本業はあくまでも投資マンションの販売とその後の運営です。ITに割ける人的リソースには限りがあり、すべてを内製化することはできません。自社だけでは足りない部分をアールスリーに依頼、内製する部分とプロフェッショナルに頼る部分をうまく切り分けて、アールスリーを活用してくれました。

 一方で弘瀬氏らは、自分たちでできる範囲のカスタマイズは内製を続けました。しかし1アプリ1データベースを基本とする、シンプルで使いやすい環境を実現するkintoneと、リレーショナルデータベースを中心に据えるMicrosoftAccessでは使い勝手に大きな違いがあります。「同じような使い勝手を求めてプラグインをかき集めましたが、どれも少しずつ足りませんでした」と、当時の努力を振り返る弘瀬氏。プラグインを多く導入すればするほどプラグイン管理が煩雑になり、プラグイン同士が競合して起きる誤作動にも気を遣わなければならなかったと言います。

 弘瀬氏をはじめとしてリズムの情報システム部がこうした課題を抱えているときに、β版として公開されたのがアールスリーの「gusuku Customine」でした。β版の段階から使い込み、それまでプラグインでは実現できなかったことを数多く解決できることを確認しました。中でも印象に残っているのは、kintoneでは難しいと思っていたアプリ間の連携機能でした。「契約データや入金、出金データを書き出して、集計して別アプリに新規レコードとして書き戻せたのは感動しました。外税、内税の計算を簡単に変更できるなど、それまで悩んでいた部分が解決される気持ちよさを感じました」と、弘瀬氏はgusuku Customineの印象を振り返ります。

【運用と効果】市場変化への対応力を優先し、エンジニア雇用よりもgusuku Customineを選択

 本格サービス開始時、導入するかどうかを決断する際に社内から「新しいサービスを契約するよりも、エンジニアを雇って内製力を高める方がいいのではないか」という意見も出たそうです。弘瀬氏はそれまでの経歴から不動産業、ITに詳しかったものの、エンジニアとして研鑽してきた訳ではありませんでした。kintoneを使って内製化を進めるのであれば、ITの専門家であるエンジニアを社内に抱えるのはひとつの選択肢ではありました。しかしそうしなかったのは、変化に強い業務システムを求めたからだと弘瀬氏は言います。「リズムもリノベーションマンション市場も成長期にあり、将来の可能性は無数にあります。もしかしたら社内に人材を抱えていることがデメリットになる恐れもあります。それよりも今の人材でできる範囲で現場に寄り添ったアプリを作る方が理にかなっている」と考えたそうです。そのやり方にkintoneがどのように役立っているか、弘瀬氏の次の言葉が多くを物語っています。

 「kintoneアプリ同士は、MicrosoftAccessのように絡み合うことのない疎結合です。この、アプリ同士が疎結合であることをデメリットと考えるのではなく、逆手に取って活かしていけると思っています。アプリ同士の依存関係が深くないので、現場の要望に合わせてアプリを作っては捨てるという試行錯誤がしやすいのです」

 gusuku Customineを導入した効果は大きく、「Access、Excelを使って、私が半日かけてまとめていた月次集計が、数分で出力されるようになりました。同じような効果を感じている社員からは、もうgusuku Customine導入前には戻れない、これがなければ業務は進まないという声も聞かれます」と、弘瀬氏は自身や社内での評価を明かしてくれました。それまでは時間が足りず、業務効率化の名のもとに諦めてきた仕事も復活させ、サービス向上に繋がっているそうです。

【今後の展望】kintoneとgusuku Customineでさらなる業務効率化と変化への柔軟性を

 賃貸マンションの運営においては、仲介をしてくれる不動産業者から電話による問い合わせが間断なくかかってきます。その数、1ヵ月に約6千件。自動音声対応も使っているが、社員が個別に対応しなければならないものが1500件ほどあるといいます。「多くは、空室情報の照会です。この問い合わせをkintoneと連携させて、対応にかかる時間を短縮したいですね」と、kintoneの更なる活用について弘瀬氏は展望を広げます。

 「賃貸物件を借りる際に必要な無駄な転記も、kintoneとgusuku Customineを使ってなくしていきたい」と弘瀬氏は語りました。賃貸物件を借りたことのある人なら経験があると思いますが、借り手は不動産業者で色々な書類を記入します。この書類が不動産業者からFAXで送られてきて、それを管理システムに入力しなければなりません。リズムのように多くの物件を管理する企業ではこの転記の手間は大きな負担になるだけではなく、ヒューマンエラーの要因にもなり得るのです。「入居される方が直接kintoneに情報を入力してくだされば、転記の手間は省けます。クラウドで提供され、インターネット接続環境さえあればアクセスできるkintoneならできるはずです」と弘瀬氏は語ります。実現すれば、かなりの省力化になるだけではなく、転記ミスも激減すること間違いなしです。

 kintoneの活用範囲を広げれば、kintoneに集まる情報量も増えます。kintoneにはグラフ表示などデータに合わせた可視化の手段が用意されていますが、見たい数値はマネージャークラスと現場クラスではやはり異なります。「マネージャーにはマネージャー向け、現場担当者には現場向けと、ユーザーによって別のダッシュボードを作りたい」という弘瀬氏の希望が実現すれば、kintoneを見るだけで自分に必要な情報を一目で把握できるシステムに成長するはずです。そしてそのシステムは自分たちの手で組まれ、弘瀬氏が願う「ビジネスの変化に追随して企業の成長に寄り添うシステム」にもなることでしょう。

取材2019年4月